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「これが選手権だ」。後半ラストプレーで追いついた相洋が延長戦で勝ち越し!選手権初出場へあと1勝!:神奈川

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延長前半4分、相洋高MF松澤好輝が右足ループシュートを決めて決勝点

[11.6 選手権神奈川県予選準決勝 三浦学苑高 2-3(延長)相洋高 ニッパ球]

 対戦相手から学んだ諦めない気持ち。それを土壇場で発揮した相洋が、劇的勝利を飾った。第100回全国高校サッカー選手権神奈川県予選準決勝が6日に行われ、延長戦の末、相洋高三浦学苑高を3-2で撃破。5年ぶりの決勝進出を決めた相洋は、初優勝を懸けて決勝(13日)で桐光学園高と戦う。

 今年、神奈川2位でインターハイに初出場している相洋は、選手権予選初戦で横浜創学館高に苦しみながらも1-0で勝利。日大藤沢高との準々決勝では逆転しながらも後半アディショナルタイムに追いつかれ、PK戦の末に準決勝へ駒を進めていた。

 迎えた準決勝の前半、相洋はFW進藤翼(2年)へのロングボールなどで起点を作り、セットプレーからチャンス。決定的なシュートがクロスバーに阻まれる不運もあったが、前半37分、MF杉本颯太(3年)の左ロングスローのクリアボールをMF工藤瑠太(3年)が右足ダイレクトで撃ち抜く。このミドルシュートがゴール右隅へ決まり、先制した。

 一方、3年ぶりの決勝進出を狙う三浦学苑は、MF明石梓希(3年)がセカンドボールを拾い、FW福田大我(3年)とFW武田大夢(2年)のコンビネーションなどからゴールを目指す。前半は0-1で折り返したが、ハーフタイムに枝村隼人監督から「(今季3度戦い)後半のところでウチが運動量で優位に立てると。前半失点したセットプレーの対応であったり、前線の選手とパサーの呼吸を合わせれば逆転できると声がけしました」と送り出された三浦学苑は逆転に成功する。

 立ち上がりからMF比嘉虎頼(3年)や福田がドリブルで仕掛けてシュート。高い位置での奪い返しにも成功していた三浦学苑は、技術力高い選手たちが正確にボールを繋ぐなど主導権を握って試合を進める。そして15分、右SB甲斐健太郎(3年)が右サイド後方から入れたFKをファーサイドの武田が1タッチでゴールへ押し込み、同点に追いついた。

 攻勢を維持する三浦学苑に対し、相洋は185cmCB山口聡三(3年)やCB岩野拳士(3年)を中心に凌いでいたが、三浦学苑は27分、中盤中央でボールを持ったMF中村空羅(3年)が左前方の比嘉へパス。絶妙なファーストタッチから中へ切れ込んだ比嘉が右足シュートを決めて試合を引っくり返した。

 三浦学苑は比嘉が喜びの最中に足を攣らせて交代するなど、この後は我慢の戦いに。それでも、CB佐藤匠真(3年)のシュートブロックやCB鈴木海夏人(3年)の跳ね返しなど1点リードを守り続ける。一方の相洋は追い詰められたが、杉本のロングスローなどから連続攻撃。そして40+4分、右ロングスロー後の混戦から相手の小さなクリアに反応した交代出場MF佐藤天真(2年)が振り向きざまに右足を振り抜く。ゴールへ向かったボールを三浦学苑DFが必死にクリアしようとするが、同点ゴールとなった。

 後半ラストプレーでの執念の同点劇。相洋の左SB後藤康介主将(3年)は、延長戦前に綱島陽介監督から掛けられた言葉を明かす。「『これが選手権だ』、と言われました。(そして)『劇的な展開を楽しめるチームになれ』と」。選手たちはその言葉通りに熱戦を楽しみ、逆転してみせた。

 延長前半4分、相洋はGKのキックを進藤とFW杉田雄斗(3年)が頭で繋ぐ。三浦学苑CBの頭上を越えたボールはPAへ落下。これに鋭く反応したMF松澤好輝(2年)が右足ループシュートでゴールネットを揺らした。逆転弾に大興奮の相洋イレブン。殊勲の松澤は逆サイドにあるベンチまで駆け寄って仲間たちと喜びを分かち合っていた。

 この後、三浦学苑も福田の左足ミドルなどで反撃したが、相洋は後藤が左サイドで1対1を1度2度とストップ。また、相手の攻撃を止めるたびに各選手が吼えるなど、気持ちの部分で負けず、リードしたまま試合終了を迎えた。

 相洋はインターハイに続く全国王手。綱島監督は後半終了間際に追いつかれてPK戦へ持ち込まれた日大藤沢戦も「これが選手権だ」と選手たちに言葉がけしていたという。選手たちはこれまで対戦した横浜創成館や日大藤沢の執念を感じ取り、この日は自分たちが土壇場での勝負強さを発揮した。

 指揮官はその選手たちへ向けて「気持ちの部分は良かったと思います」。そして、今年の世代の粘り強さについて、「元々今年の3年生は、キャプテン(後藤)はオール5とか(他にも)4.9とか勉強生活も頑張ってくる子たちなので我慢できる。前向きにできるので、粘り強さに繋がっていると思います」と説明した。
 
 堅い守りやセットプレー、粘り強さ、そして「全員が勝ちたいという気持ちで絶対に出している」(後藤)という部分も強みに選手権初出場まであと1勝。後藤はインターハイ予選準々決勝で勝利している桐光学園との決勝へ向けて、「ここで負けたら本当に意味がない。絶対に優勝したいです」と力を込めた。インターハイ初出場で同校の歴史を塗り替えた世代が再び激戦区・神奈川を突破し、新たな歴史を築く。

(取材・文 吉田太郎)
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