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前大分西高の首藤監督率いる中津東高が王者・大分高をPK戦で撃破!7年ぶりの選手権出場に一歩前進!

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中津東高が全国出場に王手

[11.6 選手権大分県予選準決勝 大分高 1-1(PK1-3)中津東高 大分スポーツ公園サッカー場]

 最後に選手権に出場したのは今から7年前。以降は県予選敗退が続き、夏冬通じて全国大会に出場したのは2016年度のインターハイまで遡る。しかし、今シーズンはインターハイ予選で準決勝に進出。今予選も粘り強く戦い、ついに決勝の舞台に辿り着いた。

 11月6日、第100回全国高校サッカー選手権大分県予選の準決勝が行われ、中津東高大分高に勝利。11月14日の決勝で大分工高と対戦することが決まった。

「最近は全国大会に出場していないチームという印象を持たれていた。なので、選手権に出場して、中津の人たちにも”東”はまだ強いというのを見せたい」(GK石川由覇/3年)。

 2014年度以来となる選手権出場を目指すべく、序盤から選手たちは今夏の大分王者に臆することなく立ち向かう。

 4-3-3の布陣でポゼッションスタイルを志向する大分に対抗すべく、組織的な守備で相手のパスワークに楔を打ち込む。ビルドアップの起点になるCBの岡松泰亮(3年)、大石吾乃(2年)とアンカーに入るMF板井成磨(3年)に対し、2トップの吉岡流星(3年)、今池宙斗(3年)に加えてボランチの南周哉(2年)を1列前に上げて対応。高い位置からプレスを掛け、パスワークの寸断を図った。

 立ち上がりはこの策が上手くハマったものの、徐々にアタッキングサードまでボールを運ばれる場面が散見。9分にはゴール前へ侵入され、大分のFW佐藤翼(2年)にシュートを放たれた。

 その後も相手に押し込まれたため、プレッシャーの掛け方を見直す。CBへのアプローチを最小限に留め、FWの1人がアンカーにプレスを掛ける形に変更した。すると、この決断が功を奏し、中盤でボールを奪う場面が増加。攻撃にもスムーズに移行できるようになり、最終ラインの裏に吉岡と今池を走らせてフィニッシュに持ち込むシーンが生まれた。

 その戦術変更が実を結んだのは、後半開始早々の3分。MF国広雄陽(3年)が左サイドを突破し、ゴール前にクロスを入れる。吉岡が上手くマークを外し、ヘディングでネットを揺らした。

 これでリズムを掴んだかに見えたが、大分に反撃を許す。12分にクロス対応からオウンゴールを献上し、試合を振り出しに戻された。

 以降は足が止まり、相手に崩される場面が増える。しかし、守備陣が奮起。身体を張った守備で得点を与えない。80分で決着が付かず、試合は延長戦に突入する。自陣で耐える展開が続いたが、中津東はGK石川の好セーブもあって無失点で凌いで100分の戦いを終えた。

 迎えたPK戦。ここでヒーローになったのが、石川だった。相手の3本目を見事にストップ。「あまり得意ではなく、練習でも止められていなかった」と振り返った守護神の活躍で激闘を制し、ファイナルへの挑戦権を手に入れた。

 中津東は6度の選手権出場を誇る中津工高と中津商高が統合されて2009年に開校。2012年から14年度に掛けて選手権に連続出場を果たした。しかし、近年は結果を残せず、苦戦を強いられていた。その中で迎えた今季。チームは大きな転換点を迎える。チームを4度の選手権出場に導いた松田雄一元監督からバトンを受け、2016年から指揮を執っていた軸丸耕平監督が転任。2017年度に大分西高を選手権出場に導いた首藤啓文監督の下で、復活を期すことになった。

「前任者が頑張ってくれた結果。私は微調整を少ししただけ」と笑顔で話した指揮官は、軸丸前監督が作ったテクニカルなサッカーのベースを生かしながら、選手たちの感性を合わせる作業に注力。インターハイ予選ではベスト4に入るなど、チームの成長に手応えを得て最後の冬に向かった。

 今予選に入っても選手たちは一戦ごとに成長。情報科学高との3回戦では終了2分前に先制点を許したが、アディショナルタイムを含む残り5分で逆転に成功した。逆境を跳ね返したことで技術面だけではなく、精神的に逞しさが増したのは間違いない。

 インターハイ王者を撃破し、久しぶりの全国舞台まであと1勝。「自分たちは県リーグの2部で戦っているチーム。私たちはチャレンジ精神あるのみ」と言い切った指揮官の下、中津東が新たな歴史を作る戦いに挑む。

(取材・文 松尾祐希)
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