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[MOM3674]関東一DF池田健人(3年)_様々な感情が交差した涙。不動のキャプテンが先制弾で東京制覇を手繰り寄せる!

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関東一高を牽引するキャプテンのDF池田健人は優勝に涙がこみ上げる

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.13 選手権東京都予選Bブロック決勝 関東一高 2-0 大成高 駒沢陸上競技場]

 拭っても、拭っても、あふれ出してくる。苦しくて、辛くて、悩んできた日々のことを思い出すと、涙が止まらなかった。

「今日の大成高校はインターハイで負けている相手でしたし、チームとしても夏前まではあまり良い状況が続かなくて、ここまで本当に全員で協力してやってきたので、感情が爆発してしまいました」。

 2021年の関東一高を牽引してきた不動のキャプテン。DF池田健人(3年=大豆戸FC出身)が積み上げてきた努力は、優勝に花を添える自らのゴールという最高の形で、報われた。

 大成高と対峙した東京ファイナル。昨年度の同じ舞台でも、スタメンフル出場で勝利を経験しているキャプテンは、チームの守備に手応えを感じていた。「3バックにしている分、守備は厚くなりますし、そこで安定感をもたらすというのはリーグ戦からやってきて、結果としてもリーグ戦も最少失点でやれているので、そこは一番良いところかなと思います」。

 ゲームによって、3バックも4バックも試してきた今年のチームの中で、常に赤い腕章を巻き、中央で相手の攻撃を跳ね返し続けてきたのが池田。なかなか結果が出ず、チーム自体が自信を失い掛けていた時も、必死に前を向き続けてきた。

 この日も前半は押し込まれる展開が続いたものの、慌てずに1つ1つのピンチを潰していく。32分にはペナルティエリア内で決定機を作られるも、身体を投げ出した池田が間一髪でブロック。失点を許さない。

 すると、デイフェンスリーダーが攻撃面で主役の座をさらっていく。後半14分。右サイドで獲得した関東一のコーナーキック。腹は決まった。2度はできないとっておきの秘策。呼吸を合わせ、その幕を上げる。

 MF肥田野蓮治(3年)がグラウンダーでマイナス気味に蹴ったボール。走り込んだMF若松歩(3年)がスルーしたボールを、一番大外から駆け寄った池田は肥田野へ戻す。10番を背負うレフティが左足を振るうと、再び中央へ飛び込んだ4番が宙を舞う。

「まさか自分がこの決勝でゴールを決めるとは思っていなかったんですけど、やっぱり今までの積み重ねがこのゴールに繋がったのかなと思います」。池田がバックヘッドで当てたボールは、町田内定の大成GKバーンズ・アントン(3年)の牙城を破り、ゴールネットへ吸い込まれる。完璧にデザインされたセットプレーから、完璧に奪った先制点。黄色の歓喜が爆発した。

 34分にはFW本間凛(2年)が追加点を決め、リードは2点に広がる。昨年も味わった景色が、この1年間追い求めてきた景色が、少しずつ近付いてくる。「やっぱり結果も付いてこない状況で、苦しい時間が多かったですし、自分自身進路のところで悩んだりして、その状況で監督にも結構言われたりして、チームとしても個人としても本当に苦しい時間が長かったなと思います」。様々な感情が、自分の中で交差する。

 タイムアップのホイッスルが耳に届く。自分たちの代での東京制覇。苦しくて、辛くて、悩んできた日々も一瞬で吹き飛ぶような歓喜の輪の中で、キャプテンはあふれる涙が止まらなかった。

 2年前。池田について「サッカー観はある子なので、来年からは絶対にアイツがリーダーなんですよ。1年だけどべらぼうに喋りますし、そういう気質を丸めないようにしようと思っています」と小野貴裕監督が話していたことを思い出す。当時から高く評価してきたからこそ、絶対的なリーダーを託した今シーズンはより厳しい言葉を掛けてきた。

 その指揮官の言葉が、優しく響く。「キャプテンの池田が涙も流していましたけれども、彼の涙が一番印象的だったというか、彼自身本当に自分の不甲斐なさと向き合った中で、1年間チームをまとめてきてくれて、結果を残せたので、今年は池田が頑張ってくれたなと思っています」。

 選手権には大きな“貸し”がある。1年前。予選ではセンターバックのレギュラーとして東京制覇に貢献したものの、全国ではスタメンを外れ、初戦の山辺高(奈良)は終盤に途中出場。2回戦の神戸弘陵高(兵庫)戦は、ベンチからその敗退を見つめることしかできなかった。

 再び晴れ舞台へと帰ってきた。今度はキャプテンとして、そのステージに堂々と上がる。関東一が新たな歴史を創り上げるために、池田のリーダーシップと“嬉し涙”は間違いなく必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)

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