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[MOM3726]長崎総合科学大附DF原口玖星(3年)_「相当ゴールは決めていなかった」長崎出身のCBが自分でも驚く殊勲の決勝弾!

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DF原口玖星(4番)の決勝弾で長崎総合科学大附高が初戦突破!(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.29 選手権1回戦 北海高 1-2 長崎総合科学大附高 駒沢]

 空中に“転がってきた”ボールを無我夢中で押し込む。ゴールネットが揺れた瞬間も、喜び方がわからないかのようにガッツポーズも繰り出さず、すぐさまチームメイトが作った歓喜の輪の中に飲み込まれていく。

「相当ゴールは決めていなかったので、嬉しい気持ちはあります」。苦しむ長崎総合科学大附高(長崎)をゴールで救ったのは、本人ですら驚く伏兵のDF原口玖星(3年=長崎南山中出身)だった。

 決して楽な試合だったわけではない。小嶺忠敏監督が体調不良で不在という緊急事態の中、立ち上がりから北海高(北海道)のアグレッシブなアタックに手を焼く。「前半は自分たちの思うようにできませんでした」と原口も認めるように、前半15分以降は少しずつペースを引き寄せたものの、先に失点を許す展開に。終了間際にCKからMF別府史雅(3年)のゴールで何とか追い付いたものの、最初の40分間はなかなか思うようなゲーム運びができなかった。

 それでもハーフタイムを挟むと、長崎総科大附は本来の勢いを取り戻す。「小嶺先生が来ていなかったので、やっぱり『自分たちでやっていかないといけないな』と思って頑張りました」と原口。攻勢を強め、決定機も数多く作り出したものの、シュートはクロスバーや相手GKのファインセーブに阻まれる。

 その瞬間は最終盤にやってきた。1-1の同点で迎えた後半37分。CKのチャンスに前線まで上がっていたセンターバックに、千載一遇の決定機が訪れる。「味方が上手く競ってくれて、自分の目の前にボールが転がってきたので、それを決めるだけでした」。MF高良陸斗(3年)のキックは跳ね返されるも、再び高良がクロスを入れると、GKのパンチングがこぼれた先に原口が待っていた。

「コースが見えて、『あそこが空いているな』と思ったので、そこを狙って打ったらたまたま入った感じです」。ヘディングで流し込んだボールは、まるでスローモーションのようにフワリとした軌道を描いて、左スミのゴールネットへ吸い込まれる。「時折は点を決めたりしますけれども、そんなにたくさん点に絡むということは私もあまり見たことがないです」と定方敏和コーチも素直に驚く原口の決勝ゴールが、チームに大きな勝利をもたらした。

「ゴールを決めた時は、正直今まで自分のプレーが悪かったので、点を決められて良かったなと思っています」と語った殊勲のスコアラーは、当然テレビ中継でも試合後のヒーローインタビューに指名される。だが、慣れないシチュエーションでの受け答えに悪戦苦闘。「嬉しかったんですけど、あの場面に立ったらとても緊張しました」と本人は苦笑するも、その初々しさも含めて原口の高校生らしさを垣間見たスタンドの観衆にも、笑顔がこぼれていた。

 実はこの日のスタメン11人の中で、長崎県出身は原口1人だけ。そんな自分がこのチームで活躍する意味も十分に理解しながら、晴れ舞台のピッチに立っている“地元育ち”のセンターバックが、この記念すべき100回大会の選手権を彩る主役へと、謙虚に名乗りを上げている。

(取材・文 土屋雅史)

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