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10-0で準決勝突破も「OKじゃない」。明桜はプレー、気持ちでも相手を圧倒して全国へ:秋田

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前半5分、明桜高FW藤山成弥が右足で先制点

[10.19 選手権秋田県予選準決勝 明桜高 10-0 秋田南高 ソユスタ]

 今夏、89年度以来となるインターハイ出場を果たした明桜が、秋田3冠、2年ぶりの選手権出場へ王手をかけた。19日、第101回全国高校サッカー選手権秋田県予選準決勝が行われ、明桜高が10-0で秋田南高に快勝。明桜は22日の決勝で秋田商高と対戦する。

 明桜は前半5分、縦パスに反応したFW臼田成那(2年)が強引に右サイドを突破。その折り返しをFW藤山成弥(3年)が右足ダイレクトで合わせて先制点を奪う。8分にも臼田がPAへ抜け出し、そこから臼田とMF大町璃音(3年)が連続で決定的なシュート。16分には、ゴール前のこぼれ球に反応した臼田のヘッドが左ポストを叩く。

 登録全選手が1、2年生の秋田南は集中した守りで対抗。だが、ボールを保持する明桜は、GK川村晃生(2年)がセンターサークルまで上がってビルドアップに参加するなど押し込み続け、連動した崩しも交えた攻撃で得点を重ねた。

 20分、MF小笠原義斗(3年)の右足ミドルのこぼれを臼田が決めると、23分には右中間でボールを持った藤山が斜めのパスを入れる。ニアの臼田がスルーし、中央へ抜け出した大町が右足で3点目。明桜はスピーディーなパスワークで素早くサイドを変える一方、CB吉崎塁(3年)や小笠原が外側を向きながら足をクロスさせるように縦パスを通す。また、司令塔のMF小野亮輔(3年)は、左右両足からのミドルパスで幾度も秋田南DFの急所を突いた。

 そして前半38分、小野がミドルレンジから左足で浮き球パス。これに走り込んだ藤山が頭で合わせて4-0で前半を折り返した。ハーフタイムに明桜の原美彦監督は「彼ら(秋田南)は最後まで頑張るチーム。ハーフタイムに『リスペクトしろ、オマエらは足りない』」と伝えたという。

 秋田南はFW照内夏樹(1年)がボールを収め、DFライン背後へパス。また、点差が開きく中でもMF佐藤大空主将(2年)が2度3度とインターセプトするなど、全員が身体を張ったプレーを続ける。後半6分には照内が左へ抜け出し、折り返しを受けたFW齊藤聖和(1年)が左足でチームのファーストシュートを放った。

 だが、「圧倒して勝たないといけないという気持ちがあった」(小野)という明桜は後半も攻め続ける。17分、小笠原のサイドチェンジから右サイドへ飛び出した吉崎がクロス。これを交代出場MF吉田秀(2年)が右足で押し込むと、19分には小笠原が鮮やかな右足コントロールショットを決める。その後も大町、いずれも交代出場のFW福島温大(3年)とMF武田大和 (2年)が加点。40+2分には、怪我を考慮してベンチスタートのFW佐藤拓海主将(3年)がPKを決め、2桁得点に乗せた。

 明桜は今夏のインターハイ初戦で履正社高(大阪)に1-3で敗戦。プレミアリーグWESTで上位争いをする強豪相手にチャンスの数を増やして前半は1-1、試合終盤まで1点差で食い下がった。
 
 原監督は「(今年は)全国でベスト8へ行く力を持っていると思う。インターハイで履正社とああいうゲームをして、もう一回あそこに行きたい」と語る。だからこそ、この日の10-0にも苦言を呈していた。シュート32本で10得点。ゴール前の精度を欠き、交代出場の選手が増えた後半は裏へ抜け出す動きが減り、難しいパスをカットされるなど攻撃がチグハグなものになってしまっていた。

「現状、『これで満足なの』?と。これでいいかというと、『ダメでしょう』と。違いを見せないと。自分たち上手くいくからOKじゃないでしょう。圧倒しろよと。威風堂々じゃないけれど圧を掛けていかないといけない」(原監督)。守備に隙があり、技術的なミスも。相手の剥がし方にも不満が残った。

 明桜は今年参入したプリンスリーグ東北で現在3勝4分9敗で最下位だ。8戦連続未勝利中で、うち4試合が後半アディショナルタイムの失点によって敗れている。前への推進力など今年のチームだからこその強みがある一方、決定力の部分を含めて課題が多いことも確かだ。

 昨年も前評判の高いチームだったが、秋田商との決勝でPK戦に持ち込まれて敗退。原監督は「去年の悔しさがある。今年は絶対に行くんだ、勝つんだという意志を持ってやらないといけないと思います」。昨年の悔しさを知る佐藤も「(秋田県内のチームが)ボクたちと戦う時の目の色、プレーの質はリーグ戦の時や今までの新人戦、総体の時とは比べ物にならないくらいのパワーが出ていると思うので、そこは自分たち負けないように早めに先制点を獲ることが鍵かなと思います」と力を込めた。

 そして、小野は「(昨年は)甘さがあったので。去年もお互いにその(絶対に勝つという)思いだったと思うけれど、相手の方が強くて負けたと思う。今年こそはプレーの質も、気持ちの面でも上回って複数得点で圧勝したいです」。全国上位を狙う明桜がプレーでも、気持ちでも名門・秋田商を上回り、圧倒して秋田制覇を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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