beacon

「絶対に行ける」「このチームは行ける」。勝利への確信と執念を持っていた岡山学芸館が岡山県勢16年ぶりのファイナルへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

岡山学芸館高の10番MF山田蒼は後半17分に同点アシスト。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.7 選手権準決勝 神村学園高 3-3(PK1-4)岡山学芸館高 国立]

「正直、そこまで注目されていない中で決勝まで行って、そういう力があることを証明できたと思います。(自分たちは)全然、正直行けるとは思っていて、周りからの評価はそこまで行かないんじゃない?という感じなのは知っていたんですけれども、僕らは『絶対に行ける』、『このチームは行ける』というのは思っていました」

 岡山学芸館高(岡山)の10番MF山田蒼(3年)は壮絶な撃ち合い、PK戦の末に決勝進出を決めた後、自分たちの実力を証明できたことを喜んでいた。同校史上初、岡山県勢16年ぶりの決勝進出。22年度のインターハイで2年連続の8強、プリンスリーグ中国で2位に入っているものの、岡山の新興勢力は今大会で初の選手権8強、4強進出を果たしたばかりだ。それでも、FW福田師王(3年、ボルシアMG内定)、MF大迫塁(3年、C大阪内定)らタレント揃う神村学園高(鹿児島)との準決勝も彼らは自信を持って臨み、「勝つのみ」に集中した。

「結構夏場から練習試合で強豪と戦ってきて、色々なチームとやって対等にやってきました。神村は2回やってどっちも勝っていましたし、無理な相手はいないと思っていました」と山田。前半立ち上がりに幸先よく先制し、追いつかれ、2度勝ち越されてもそのたびに追いついた。
 
 高原良明監督は「逆転されましたけれども、ウチの時間帯も必ず来ると思っていました。シンドい時間になりましたけれども、止まらずに最後まで走りきれているのがあったので、チャンスは必ず来るなというのがあった」。今年のチームについて山田は「元から根性がある」「僕ら粘り強さならば日本でもトップ」と説明する。チームが目指すスピーディーなボールポゼッション、また粘り強さという強みも発揮して粘り勝った。

 山田は1-2の後半17分、PAのニアゾーンへ飛び出して同点ゴールをアシスト。10番は攻撃力を発揮したが、この日は普段以上に走力を求められるゲームだった。守備でゴール前まで戻るシーンが増加。「きょうの相手はずっと怖いというか、直感で『これはヤバいからマジで戻らないといけない』というシーンが特に多かった。『決められそう』という危機感があった」と振り返る。

 目の前には、大会屈指のレフティー・大迫、背中には最強FW福田。特に怖いと感じたのは福田だったという。危険人物をケアするため、自陣ゴール前で数的優位を作るため、山田とMF木村匡吾(3年)のダブルボランチは普段以上のハードワークが求められた。

 その中で2人は、高原監督が「福田君にはかなり警戒していましたし、どれだけ数的優位を作れるかだと思っていた。(2人は)ウチの生命線。ハードワークできますし、攻撃のときに駆け上がっていけるし、守備のところで戻ることができるところでこの2人のハードワークが勝てた要因じゃないかと思っています」と評価するプレー。チームは、今年4月の元東海大福岡監督・総監督の平清孝ゼネラルアドバイザー就任から培ってきた勝利への執念でもわずかに神村学園を上回った。

 CB井上斗嵩主将(3年)は「平先生の言葉は励みになったりするので。自信を持って(PKを)蹴れたりするのは、そのお陰かなと思います。『勝つのみ』というのは試合前に言われるので、そこでみんな勝ちへの執着心は持っています。1試合ごとにチームが良くなっている感じはしますし、それと同時にメンタル面もみんな成長してるなと思います。チーム力がデカくなってきていると感じます」と胸を張る。自分たちに良い意味での自信を持ち、一戦一戦成長してきた軍団は日本一まであと1勝。山田は「最後出し切って優勝したい」。9日の決勝で岡山学芸館、岡山県サッカーの歴史を変える。 

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2022

TOP