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創部38年目で辿り着いた頂点…山形明正がエースFW仲村渠のゴールで羽黒下し、初の全国の舞台へ!!

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山形明正高が初の全国へ!!

[10.21 選手権山形県予選決勝 山形明正高 1-0 羽黒高 NDスタ]

 第102回全国高校サッカー選手権の山形県予選は21日、山形県天童市のNDソフトスタジアム山形にて決勝を行い、山形明正高羽黒高が対戦。1-0で勝利した山形明正が初優勝を果たし、初めて全国への切符を勝ち取った。

 羽黒は今年県予選決勝で山形明正に2-1で勝利してインターハイ出場を果たし、山形県リーグ1部では山形明正相手には4-3、5-2と点の取り合いで2試合とも勝利し、優勝も決めている。そんな羽黒に対し、「私たちはチャレンジャー」と石原和実監督が語る山形明正は、立ち上がりから攻撃的な姿勢を見せて立ち向かっていった。激しいプレスでボールを奪うと、エースFW仲村渠健(2年)のボールの収まりの良さを生かしながら周囲が絡んで決定機をつくり出す。

 それが前半13分にいきなり実る。左サイドでボールを持ったMF吉田楓翔(2年)は右サイドまでドリブル。吉田からのパスを受けた右サイドハーフのMF丸山来寿(2年)がゴール前へクロスを上げる。そこに待っていたのが仲村渠。「クロスを上げた丸山は同じクラスで、日頃から仲が良いので、絶対俺に出してくると思いました」と語った通り仲村渠は信じてゴール前に走り、空中戦で競り勝ってヘディングシュートを決めて、先制に成功した。

 追う立場となった羽黒は15分、MF小田太航(3年)のフリーキックからキャプテンMF小西謙吾(3年)がヘディングシュートを放つが、山形明正GK酒井淳平(3年)は「得点直後に失点して1-1にされたらもったいない。1回締めて大きいセーブができれば流れが来ると思いました」と小西のシュートをゴール外にかき出す。その後も羽黒がポゼッションしながら攻めるが、山形明正は集中して守りつつ、隙あらば仲村渠へとボールを預け、カウンターに持ち込んで応戦。前半は1-0と山形明正リードで終えた。

 後半も羽黒はボールは持てているものの、最後のところで山形明正にはね返される展開だったが、徐々に攻撃の圧を強めていき、MF遠藤大雅(3年)のドリブル突破などから決定機をつくっていく。FW三國谷斗羽(3年)も後半だけで3本シュートを放つが決めきれない。終盤はセンターバックに入っていた小西が前線に上がり、何度もセットプレーのチャンスを迎えたが、山形明正GK酒井のファインセーブもあってゴールを奪えなかった。山形明正の石原監督は「アディショナルタイムが4分か…長いなと思いました」と語ったが、その時間帯も全員で粘り強く守り切り試合終了。1-0で山形明正が勝利し、県予選初優勝、初の全国大会出場を決めた。

 創部38年目でついに山形県の頂点に立った山形明正の石原監督は「羽黒さんは格上の相手だと分かっていたので、1週間準備させてもらいました。攻守とも準備した、その通りに選手たちがやってくれました。相手のはめ方は徹底して準備しました」と語った通り、前からのプレスで相手をはめて、ボールを奪ったら一気にゴールに向かってシュートで終わることを選手たちは80分間貫いた。ハーフタイムには引いて守ることも頭をよぎったと言うが、「スタッフとも話してこのスタイルをやるしかない」と攻撃的な姿勢を貫いた。

 リーグ戦2試合で9失点している相手だったが、「センターバック2枚とGK、前線の守備も良かったですね」と石原監督は無失点で抑えた選手たちを褒め称えた。ファインセーブ連発のGK酒井は「このチームはGKコーチがいないので、最高学年のGKである自分が練習メニューを考えます。GKの練習の動画を見ながらいろいろ落とし込んできました。北海道コンサドーレ札幌の菅野孝憲選手や、元横浜F・マリノスの高丘陽平選手(現バンクーバー・ホワイトキャップス)など、身長が180cm近くの選手の動きを見て真似をしていました」と自分で練習を工夫しながらやった成果も出たという。

 全国大会出場をつかむまでの強化については「ここまでのスタッフや選手たちの積み重ねのおかげです。特別な強化はしていなくて、ちょっとずつ選手が集まってきて成長してきました。コンセプトは個を大事にする指導で、選手の判断を吸い取ることはしていません。今日も自立した良い判断をしてくれました」と石原監督は語る。少しずつ関東の街クラブから選手が集まったことが良い刺激となった他、山形県内の高校では唯一、2012年に人工芝グラウンドを整備するなど、環境面を整えたことも大きかった。初めての全国大会は「どんな相手でもチャレンジャーになるので、初戦をしっかり戦うことを目標にやっていきたいです。16年間(山形県勢は)勝っていないので」と17年ぶりの山形県勢初戦勝利にも意欲を燃やしていた。

 一方、3年連続の選手権全国大会出場を逃した羽黒の本街直樹監督は「終盤ゴール前で慌てるシーンがあり、余裕がありませんでした。いつもだったらシュートを打てる場面でボールを持ってしまったのもありましたし、明正の守備も堅かったです。完敗と言えば完敗です」とリーグ戦の時から守備を修正してきた相手を崩せなかったことを悔やんだ。キャプテン小西も「全員焦っていて気持ちの部分が足りなかったです」と悔しさをにじませた。今後は12月に行われるプリンスリーグ東北プレーオフの突破を目指す。「選手権に出るのと同じくらいプリンスリーグにも上がりたいです」と本街監督もプリンスリーグ東北昇格への意欲を語り、小西も「最後の置き土産に、今の1、2年生そして来年入ってくる選手たちのためにカテゴリーを上げて来年につなげたいです」と意気込みを語った。この日の大きな悔しさをバネにして、プリンスリーグ東北昇格を目指す。

(取材・文 小林健志)
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小林健志
Text by 小林健志

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