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[選手権]帝京三が8年ぶり選手権へ!「失点は2まではいい」覚悟の上で攻撃力発揮、日本航空の“空中戦”2発浴びるも延長戦を制す:山梨

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帝京三が8年ぶりの選手権へ

[11.11 選手権山梨県予選決勝 日本航空高 2-3(延長)帝京三高 JITス]

 昨年の選手権県予選も、今年の総体県予選も準優勝だった帝京三高が8大会ぶりの県制覇を果たした。第102回全国高校サッカー選手権・山梨県予選は11日に決勝を開催。帝京三が日本航空高と対戦し、延長戦の末に3-2で勝利する。8年ぶり11回目の選手権切符を掴んだ。

 5大会ぶり3回目の選手権を目指す日本航空は4-4-2の布陣を敷く。準決勝でDF柳沢啓人が2度の警告による退場処分となり、決勝は出場停止。代わりにDF加藤諒丈(2年)が起用された。GKは川崎歩(3年)、4バックは左からDF畔柳瑛太(3年)、加藤諒、DF羽田凌太朗(3年)、DF加藤凌真(3年)。ボランチ2人はMF立部陽翔(3年)とMF柴田竜杜(3年)。左サイドハーフはMF町田佑馬(3年)、右サイドハーフはMF鳥居理一(3年)で、2トップはMF小町真也(3年)とFW四ツ井雅(3年)となった。

 昨年の決勝では山梨学院に延長戦で敗れた帝京三が、再び山梨県の頂点を狙う。こちらも4-4-2の布陣。GKは倉田琢夢(3年)で、4バックは左からDF原田飛鳥(3年)、DF押田良翼(3年)、DF大野羽琉(3年)、DF福司楓馬(3年)。ボランチ2人はMF加々美遥斗(2年)とMF辻友翔(3年)。左サイドハーフはMF秋間翔太(3年)、右サイドハーフはMF朝比奈漱(2年)で、2トップはFW櫻井元舟(3年)とFW遊佐凜太朗(3年)が起用された。

 試合序盤は帝京三が押し込み、日本航空が守備を張る。徐々に日本航空も攻勢を強めると、得意のセットプレーでチャンスを作る。しかし前半はスコアレスのまま後半に折り返した。

 後半12分、帝京三がFKを得る。リスタート前に日本航空は交代カードを1枚切り、鳥居を下げてFW長谷川航大(3年)を投入。そして帝京三は中盤右から福司がFKを蹴る。ニアサイド浅い位置の遊佐が相手選手と競りながらジャンピングヘッドで合わせると、ボールはふんわり浮きながらゴールマウスに吸い込まれる。帝京三が先制ゴールで均衡を破った。

 先制した帝京三は後半21分に交代枠を使用。秋間に代えてMF嶋野創太(3年)を出場させる。同27分には遊佐を下げ、FW小澤波季(3年)を入れた。すると直後に追加点を奪う。中盤右のFKを福司が右サイド深い位置に蹴り込むと、朝比奈がPA右ライン上からクロス。ファーサイドに詰めた櫻井がヘディングシュートを叩き込んだ。

 1点を返したい日本航空は、後半34分に得意の形からゴールを奪う。畔柳が右CKを蹴ると、混戦から一度マイナス方向に戻す。小町がダイレクトで再び敵陣PA内に入れると、またしても混戦。PA右から畔柳が中央に折り返し、ボールを収めた加藤諒がトラップから右足シュートをゴールに突き刺した。

 勢いを取り戻した日本航空のセットプレー攻撃は再び帝京三を襲う。後半38分、畔柳が右CKを蹴ると、PA中央の長谷川が豪快なヘディングシュートを叩き込む。2点ビハインドから2-2と試合を振り出しに戻した。

 2-2のまま試合は延長戦に突入する。延長前半はスコアが動かず。後半に折り返すと、延長後半2分に決勝ゴールが決まる。帝京三は自陣でボールを奪い、すばやくカウンターへ。中盤で受けた嶋野がPA左に入ると、カットインから右足を振り抜く。ゴールニアサイドを打ち抜き、勝ち越しゴールを挙げた。

 再びリードした帝京三は今度こそ点差を守り抜く。3-2で試合を締め切り、8大会ぶりの県制覇を成し遂げた。

 帝京三の相良和弘監督は試合後、心の中では2失点を覚悟していたことを明かす。「年間を見ていて失点が多かったので、それをゼロにするのは厳しいかなと」。だが、代わりに今年の帝京三は強力な攻撃力を誇る。「失点は2まではいいと。それで、彼らの今年の特徴の攻撃力で3は取る」と点の取り合いは想定内だったという。

 とはいえ、追いつかれたら勢いは相手に傾く。「まあ嫌な雰囲気ですよ」と相良監督も苦笑しながら振り返る。相手の得意パターンからの2失点は気にせず、「その後で沈まないように」と選手たちを奮い立たせた。「継続してもうやるしかないので。延長まで行ったので、それはもう勇気を持ってやれと」。昨年の選手権県予選決勝、今年の総体県予選決勝の2度味わった準優勝の悔しさを糧に、最後の意地を貫き通した。

 日本航空は3大会ぶりの決勝進出で、5大会ぶりの選手権出場は逃した。今年2月に安部一雄監督が就任。2018年に山梨学院高を率いて総体を制覇した指揮官は一年での復権を目指したが、「あれがうちのチームの精一杯。よく最後までがんばってくれたけれども、相手のほうがすべてにおいて上だった」と負けを認める。その上で選手たちの奮闘を称賛。「最後まであきらめずに、あそこで同点に追いついたことは彼らの成長」と語った。

 就任当初、安部監督が感じたのはチームの迷いだった。「そんなに悪い印象はなかったけど、やっていることが目的から外れていた。そこを改善した」。ハードワークで堅い守備と早い攻撃を安定させ、相手のサイドを割って得たCKやFK、ロングスローといったセットプレーで持ち前の高さを生かす。ひとつのスタイルを築いて決勝に駒を進めたことには「よくここまで来たという感じ」と手応えを語った。

 日本航空は3年生が主体のため、来シーズンから再びチームを作り直す。それでも「3年生ががんばってくれたので」(安部監督)。指揮官は、先輩の悔しい背中を目の当たりにした下級生たちに期待を寄せる。「なんとか上に行けるようにがんばります」と来年の奮起を誓っていた。

(取材・文 石川祐介)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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