beacon

まだまだ伸びる“これからの静学”。主力不在で苦しむも、成長続けた静岡学園が2年ぶりの静岡制覇

このエントリーをはてなブックマークに追加

静岡学園高が2年ぶりV

[11.11 選手権静岡県予選決勝 静岡学園高 2-1 藤枝東高 エコパ]

 静岡学園が2年ぶりに選手権へ――。第102回全国サッカー選手権静岡県予選決勝が11日に袋井市のエコパスタジアムで開催され、静岡学園高が2-1で藤枝東高に勝利。2年ぶり14回目の全国大会出場を決めた。なお、最高殊勲選手には静岡学園のU-18日本代表GK中村圭佑主将(3年、東京V内定)が選出されている。

 名門・藤枝東との頂上決戦には、12,611人の観衆が来場した。立ち上がりは静岡学園が猛プッシュ。攻守の切り替えが非常に速く、1ボランチのMF森崎澄晴(3年)やMF岩本耀太(3年)が高い位置でボールを奪い返す。そして、徳島内定の10番MF高田優(3年)、岩本、MF田嶋旦陽(3年)、MF庄大空(3年)の2列目がドリブル、コンビネーションでゴールをこじ開けようとする。

 藤枝東の鷲巣延圭監督は「入りのところでもっと行かなければいけなかった」と首を振る。藤枝東は際のところで足が出てボールをカットするなど何とか凌いでいた。だが、出足の速い守備から攻撃に結びつける静岡学園は15分、敵陣での奪い返しからFW宮嵜隆之介(3年)がボールを繋ぐ。これを中央で受けた庄が、1フェイントでDFのマークを外してからコントロールした右足シュート。ゴール右隅へ沈め、先制した。

 藤枝東はすぐに反撃。19分、この日鋭いドリブルで相手を苦しめていた左SH江口立樹(3年)が突破からクロスを上げる。これは静岡学園GK中村がパンチ。こぼれをMF湯山大輔(2年)が狙うが、静岡学園左SB吉村美海(3年)がクリアする。だが、藤枝東は24分にも右SB中東晴哉(3年)の突破からチャンス。サイドからのクロスや、189cmFW植野悠斗(3年)のポストワークを活用した攻撃が利いていた、また、アプローチの鋭い守備によって、一方的に押し込まれていた序盤から立て直して見せる。

 そして29分、静岡学園の右CKから、ミスを逃さずに高速カウンター。一度は潰されかけながらも粘ってボールを繋ぐと、最後は江口の柔らかい左クロスをファーの植野が頭で決めて同点に追いついた。

 静岡学園は川口修監督が「1点取ってからもうちょっと落ち着いてやって欲しかった。前に急ぎ過ぎなんですよ」と評したように、縦に速い攻撃が増え、簡単にボールロストするシーンが増加。一方の藤枝東はCB宮崎将吾(3年)が高さを発揮し、セカンドボールをU-17日本高校選抜MF野田隼太郎主将(3年)らが落ち着いて繋ぐ。相手を押し返し、左サイドからの崩しで勝ち越し点のチャンスも。静岡学園GK中村の好守に阻まれたものの、十分に巻き返して前半を終えた。

 後半、静岡学園はボールを引き出す回数の増えた高田や田嶋、右SB野田裕人(2年)のドリブルでゴール前のシーンを作り出す。藤枝東DFは寄せ切れないシーンもあったが、GK藤崎蒼葉(3年)のファインセーブやゴール前での粘り強い守備で相手の連続攻撃を凌ぐ。そして、速攻を狙うと18分、湯山の右クロスから江口が決定的なヘッド。だが、ボールはクロスバーを叩いた。

 静岡学園は相手の大型FW植野に対し、CB水野朔(3年)が健闘。CB井口晴斗(3年)のカバーリング、森崎のセカンドボール回収など勝負どころで崩れない。中村は試合前から「ここまで来たら気持ちだから」とチームメートに強調していたのだという。3日前、プレミアリーグWESTの延期試合(アウェー)でサブ組が横浜FCユース相手に気持ちの込もった好勝負。中村は「横浜FCの試合を見て(刺激を受けて)、今日出た選手も熱量を持ってやっていた」。テクニックと勝利への執念が次の1点をもたらした。

 後半26分、静岡学園は敵陣で高田から中央の庄へパス。庄がドリブルからPAへスルーパスを通すと、宮嵜が切り返しでマークを外し、右足シュートを右隅へ流し込んだ。後半、互いにチャンスがあった中で、決め切った静岡学園。藤枝東の鷲巣監督も「ああいう1本をしたたかに決めてくるチームだと全国に行くんだろうなと。したたかさがウチには(まだ)足りないというところです」と認めていた。

 この後、大村を中盤に投入して高さを加えた静岡学園に対し、藤枝東は中盤の攻防で負けず、サイドからゴールへ迫る。だが、プレスバック、両SBのクロスへの的確な対応など相手の堅い守備をこじ開けることができないまま試合終了。静岡学園が紙一重の差の勝負を制し、全国切符を獲得した。

「手応えはまだ。でも、だいぶレベルアップしてきた。まだまだこのチームは伸びるし、けが人が帰ってくればまだパワーアップしていく。これからですね、この静学は」。激戦区・静岡を制した静岡学園の川口監督は、今年のチームのこれからに期待を寄せた。

 今大会は川崎F内定のU-18日本代表FW神田奏真(3年)と静岡県選抜の大型MF福地瑠伊(3年)がいずれも長期離脱中のために不在。同じく2か月間離脱していた守りの要、CB大村も決勝戦で6分間出場しただけに留まった。今大会開幕前は結果が出ずに苦しい時期が続いたが、出場機会を得た選手たちが経験を重ねながら成長。この日はいずれもBチームから這い上がってきた庄と宮嵜がゴールを決め、チームを静岡制覇へ導いた。神田は全国大会に間に合う予定。下級生や復帰組を含めた競争を経て、チームはより強くなって全国大会を迎えそうだ。

 プレミアリーグWEST前期を8勝2分1敗で終えていたこともあり、インターハイは優勝候補の一角に挙げられていた。だが、初戦で優勝校・明秀日立高(茨城)に1-2で敗戦。先を見すぎたことが敗因と考えたチームは、「一戦一戦、その瞬間に100パーセント出すこと」(中村)にこだわってきた。そして、今大会は一戦集中でライバルたちを上回って夏冬連覇。ただし、この日は静学らしさを出せなかった部分もあっただけに、森崎は「(全国大会では)自分たちで学園らしく主導権を握って、それに最後結果がついてきて、最後良い形で終われたらいい」と力を込める。より静学らしいサッカーができるように、貪欲にレベルアップして、全国で勝つ。 

(取材・文 吉田太郎)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP