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[選手権]最後はキャプテン碇が決めた!約1か月の活動自粛、監督交代…激動の大津「感謝の気持ちを持って」:熊本

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全国行きを決めた大津高

[11.11 選手権熊本県予選決勝 大津2-1熊本商 水前寺]

 PKを獲得した瞬間、大津高の選手たちは勝利を確信したかのようにガッツポーズを繰り返した。MF中村健之介(2年)の放ったシュートから獲得したPKだったが、ボールは迷うことなく主将MF碇明日麻(3年/水戸内定)がセット。相手GKのコースを読まれながらもしっかりと決め切って、3年連続20回目の全国選手権出場を手繰り寄せた。

 すでに勝利が決まったかのような雰囲気の中でPKを蹴った碇だが、「とくに緊張はしなかった」という。そこにあったのは絶対的な自信と信頼。「仲間の思いをしっかりと背負って決めた蹴れたと思います」と充実の表情で振り返った。

 不安の中で今大会を迎えていた。高校年代最高峰のプレミアリーグでも全国の強豪を相手に好成績を残していた今季の大津だが、10月初旬に昨年サッカー部でいじめによる問題があったことが発覚。当面の活動自粛に迫られ、プレミアリーグでは不戦敗が続いたことで順位を大きく落とした。

 ただ月末に迫った高校選手権予選に向けて活動再開の許可が下りると、初戦となった10月29日の予選準々決勝の東海大星翔高戦に5-0で大勝。続く準決勝で秀岳館高に3-1で勝利すると、決勝を勝ち切って全国大会への出場権を獲得した。

 活動再開にあたって、山城朋大前監督が退任。今大会より31歳の宮崎祐介監督が指揮を執ることになった。宮崎監督によると、選手らのコンディションについては、再開から3週間ほどが経ったこともあって、それほど問題はないようだが、精神面に関しては監督交代の影響が少なからず出ているという。

 ただそんな中で、碇を中心とした3年生が、今まで以上にチームをまとめようと動いてくれたと話す。「碇だけでなく3年生の主軸が全体をコントロールする声かけであったり、山城前監督がされていたころ以上に全体を引っ張ろうという姿勢をみせてくれた」。新監督の目にも頼もしく映ったようだ。

「僕たちが出させて頂くことで、色んなお言葉を頂くと思いますが、応援して下さっている方もたくさんいる。皆さんに受け入れてもらえるばかりではないとも思っていますが、それでも感謝して、やらせていただけるということ、熊本の代表としてやらせていただけることをしっかりと持って、全国大会に臨みたいと思います」

 当然、全国大会では優勝候補の一角であることに間違いはない。プレミアリーグの試合もあと3試合が残っており、正月の舞台へ向け、有意義な調整に使っていきたいところだ。また碇は18得点で、2位に5点差をつけて現在ランキングトップ。プレミア得点王の看板を引っ提げて全国の舞台に進むことが濃厚となっており、注目度はより増すことになりそうだ。

 3年連続で全国選手権に出場する大津だが、一昨年は準優勝、昨年は4強と、いずれも国立競技場で行う準決勝以降に進んでいる。ただ初優勝には届いていない。碇も「去年はあと一歩のところでとにかく悔しい大会になった。全国制覇するという目標で1年間取り組んできた」と話すと、「しっかりと成長した姿を全国大会で見せられるように頑張りたい」と気合を十分にした。

(取材・文 児玉幸洋)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
児玉幸洋
Text by 児玉幸洋

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