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延長の死闘制した初芝橋本が頂点に!! 3年ぶりの全国に向け、視線は高く「国立に立ちたい」:和歌山

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3年ぶりの全国に挑む初芝橋本高

[11.11 高校選手権和歌山県予選決勝 初芝橋本高 2-1 和歌山北高 紀三井寺公園陸上競技場]

 第102回全国高校サッカー選手権大会和歌山大会の決勝戦が11日、紀三井寺公園陸上競技場で行われた。決勝の舞台に上がったのは、初芝橋本高和歌山北高。初芝橋本が延長までもつれた死闘を2-1で制し、3年ぶり17回目の選手権出場を決めた。

 準決勝では、初芝橋本は、前回大会まで3年連続で決勝の相手となっていた近大和歌山高を3-0で下し、和歌山北高は、初の決勝進出を目指していた近大新宮高を2-0で退けてきた。初芝橋本と和歌山北が決勝戦で相まみえるのは、5大会ぶり。両校の監督が試合後に「応援してくれたみんなと保護者の方たちのおかげで」と話したとおり、選手たちの背中を押す大声援がある素晴らしい雰囲気の中、決勝戦の幕が上がった。

 主導権を握ったのは、初芝橋本。厚みのある攻撃で、アグレッシブに相手ゴール前に迫る。序盤から今年の強みの一つであるセットプレーの場面も多く作るが、和歌山北の連携の取れた守備に阻まれ、ゴールは奪えない。一方、和歌山北もボールを奪うと、速さのあるFW大内飛翔(2年)やDF近藤暖人(3年)のロングパスなどを使ってカウンターを仕掛けるが、初芝橋本の帰陣も速く、シュートを打つまで至らない。0-0のまま、試合を折り返した。

 スコアボードが動いたのは、後半20分。相手ゴール前に再三迫っていた初芝橋本が、MF池田真優(3年)の蹴ったCKをMF大丸龍之介(3年)が頭で合わせ、先制点を奪った。

 しかし、この先制点が初芝橋本の隙を生む。攻め込みながらも、なかなか得点できなかった流れがあっただけに、「少し安心してしまった部分があったと思う。勝ち急いでしまう気持ちが出てしまった」(DF石丸晴大(3年))。このまま守って逃げ切りたいという気持ちが生じ、少しずつ重心を下げてしまう。

 和歌山北は、そのわずかな隙を逃さなかった。190cmの長身FW入江直愛(3年)を投入し、ロングスローも武器の一つとしているCBの近藤を前線に上げ、相手ゴールにじわじわと迫り始める。そして80分+1分、近藤がロングスローでゴール前に入れたボールを交代出場していた矢高怜寿(2年)が落とし、入江が右足を振り抜いて同点に追いついた。7分間の長いアディショナルタイム中には、MF川口永遠(3年)の前線へのパスなどから勝ち越し点を奪おうとしたが、スコアは動かない。1-1のまま、勝負は延長戦で決することになった。

 10分ハーフの延長戦では、前半はスコアレス。決勝点は、延長後半5分に生まれる。初芝橋本のMF河崎慶二(2年)が前線にふわりと出したパスに、FW朝野夏輝(3年)が抜け出す。相手DFはクリアしたものの、右サイドからフリーの状態で走ってきたFW大薗一柊(3年)がそのボールに左足をダイレクトで合わせ、振り抜いた。この日、相手の猛攻から何度もゴールを守ってきていた和歌山北のGK味村優希(2年)もシュートに反応し、左手で触ってはいたが、大薗の蹴った強いシュートの勢いを止めることができず。ボールは、ゴールの内側にこぼれ落ちた。その後、初芝橋本は引いて守ろうとした後半の失敗を繰り返さずに、さらに追加点を目指すことで相手を自陣に入れず。延長戦の末に2-1で勝利した初芝橋本が、3大会ぶりに冬の全国への切符を勝ち取った。

 惜しくも準優勝となった和歌山北は、夏には連覇を果たせず、準決勝で無念の敗退。悔しさを味わっていた。そこから5か月余り、全国行きを懸けた大一番で和歌山北らしい連携の取れた守備と、それを連続して行える集中力の高さを見せ付けた。昨年から主軸として戦い、今年はキャプテンを務めてきた近藤を中心に選手たちが成長するための努力をどれほど重ねてきたかが、存分に伝わるゲーム内容だった。試合後、中村大吾監督は、「選手たちには、あれ以上求めることはない」と清々しく話し、「本当によくやってくれた。だからこそ、もう1点ほしかった。でも、選手たち、応援してくれた選手や保護者の方々、そしてチームスタッフみんなで、うちの新しい歴史を作ることができた」と胸を張った。

 勝利した初芝橋本の阪中義博監督もまた、試合後にはスタンドの生徒・保護者に「応援のおかげで」勝利できたと挨拶。過去2大会の決勝戦で悔しさを味わった元キャプテンの2人も、自分たちが果たせなかった優勝の瞬間を見届けようと応援に駆けつけていた。

 初芝橋本キャプテンの石丸は、「前回大会の決勝では、自分のミスで失点した。今年の夏には、インターハイの初戦だった国見高校との試合で、自分がPKを献上した。自分は大事な場面でやらかしてしまう、しょうもない選手だということを痛感していた」という。向上心があるからこそ厳しい現実も受け入れ、「これを返せるのは、もう選手権の全国の舞台しかないと思っていた」。そして、チーム全員で戦い抜き、その機会を得た。

 阪中監督は、全国の舞台に向けて、今回は「まずは初戦を突破することを目標にして」とは言わず、こう話した。

「国立に立ちたい。この選手たちは、それを成し遂げてくれると思っている」

 阪中監督は今年の夏以降、選手たちの能力を生かし、これまで何度も全国大会に臨んで扱い慣れていた4バックのシステムを手放した。インターハイに臨む際にはオプションとして持っていたシステムが、今は軸になっている。大きな変化を加えることができたのは、選手たちに対してそれだけの信頼を寄せているからだと言えるだろう。

 和歌山県勢が全国準決勝まで勝ち進んだのは、阪中監督が1年生だった頃に初芝橋本が臨んだ第74回大会以降、まだ一度もない。新生・初芝橋本が、その壁に挑む。

(取材・文 前田カオリ)
●第102回全国高校サッカー選手権特集
ゲキサカ編集部
Text by ゲキサカ編集部

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