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「四中工を復活させよう」と挑むも初戦で涙…MF片岡空良主将「星稜の方が気持ちが強かった」

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四日市中央工高を牽引した片岡空良主将(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権2回戦 星稜高 1-1(PK3-0) 四日市中央工高 オリプリ]

 4年ぶりに冬の舞台に帰ってきた四日市中央工高(三重)。前半は星稜高(石川)をシュート1本におさえて迎えた後半、今大会の応援リーダーを務める日本代表FW浅野拓磨が高校時代につけていた16番を受け継いだMF山口叶夢(3年)が、相手オウンゴールを誘発する。

 四日市中央工は幸先よく先制したものの、DFラインの背後をつかれて星稜の後半唯一のシュートで同点に追いつかれしまう。PK戦では“PK職人”として試合終了間際に星稜が投入したGK佐藤竣基(3年)を前にPKを成功させることができず、0-3で涙をのんだ。

「最後の引退がかかった試合で、どっちも伝統校で、プライドがある中での戦いだったんですけど、やっぱり星稜高校の方が気持ちが強かったんだなっていうのはあります」と主将のMF片岡空良(3年)は肩を落とす。

 10月には両チームによる練習試合も組まれており、互いに特徴も把握していた中で、中盤でプレーした片岡は、「相手も自分たちも研究し合って、中盤のプレッシングもあって、いつもより自由がなかったんですけど、何本かチャンスもできてっていうのは自分の特徴でもあるので、それができてよかったです」と持ち味を発揮した。

 80分では雌雄がつかず、突入したPK戦。1番手を務めるのは、片岡だった。「いつもは最初に決めてチームの流れを守っていくのが自分の仕事で。ちゃんといつもの方向に打ったんですけど、やっぱり緊張もあって思ったところに飛ばなくて」。星稜のGK佐藤にストップされたシュートを悔やんだ。

「自分たちの代で選手権でもう1回四中工を復活させようっていうのはあったんですけど、勝つことできなかったので……。来年からもう1回自分たちより強度を高くして、自分たちを超えてくれっていうのは伝えました」と主将は後輩たちへ託す。

 四日市中央工にとって最後の選手権出場となった2019年は、伊室陽介監督の就任初年度とリンクする。同校のOBであり、1991年度の選手権を制したメンバーとして、樋口士郎前監督の後任に。第98回大会で“新人監督”として選手権に挑むと、1回戦・日大明誠戦で監督として初勝利、同校としては6年部りの勝利に導くと、それを皮切りに8強まで進出していた。

 選手権を知らない現在の世代を思う指揮官は「彼らが勝てなかった時代……よく我慢して、つらいトレーニングもついてきてくれましたので。勝ちたかったですね、彼らと一緒に」と声を震わせた。

「しっかりトレーニングをして、彼らの功績を後輩に伝えながらまたやっていきたいと思います」。伊室監督は、前を向いて大会を後にした。

(取材・文 奥山典幸)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
奥山典幸
Text by 奥山典幸

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