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[選手権予選]総体全国4強の流通経済大柏、初戦は課題残す逆転勝ち:千葉

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[10.29 第90回全国高校選手権千葉県大会決勝T1回戦 千葉国際1-2流通経済大柏 鴨川]

 第90回全国高校サッカー選手権千葉県大会は29日から16チームによる決勝トーナメントへ突入。昨年度の全国大会、そして今夏の全国高校総体でいずれも4強入りしている流通経済大柏は今大会初戦となる一戦で千葉国際と対戦し、U-18日本代表候補MF古波津辰希(3年)の2ゴールによって2-1で逆転勝ちした。流経大柏は11月6日の準々決勝で八千代と戦う。

「ご覧の通り、動けませんでした。初戦は怖い。初戦に関してはどこも五分五分です。準備してきたつもりだったけどそれでできなかったことが残念。(想像を)上回ることができないレベルです」。名将・本田裕一郎監督は歯がゆい思いを口にしていたが、全国大会に出場すれば間違いなく優勝候補になるであろう流経大柏の選手権初戦は、本来の実力には程遠い内容だった。

 油断もあったか。強烈な先制パンチを見舞ったのは千葉国際の方だった。前半4分、左サイドでボールを持ったMF中村飛鳥(2年)が前方のスペースへスルーパス。これに走りこんだFW根本紀(3年)がマークの緩い相手DFをあざ笑うかのように、さらにPAへスルーパスを通す。見事な連係で反応していたFW菊島卓(3年)が左サイドの角度のない位置から左足を振りぬくと、飛び出してきたGKの脇を破った一撃は鮮やかな先制ゴールとなった。

 大喜びする千葉国際の姿を苦い表情で見つめていた流経大柏はすぐに反撃に出る。7分には右CKから10番・古波津が決定的な左足シュート。13分には全国総体得点王のFW田上大地(3年)が強引にPAへ切れ込み、ディフェンスラインに穴を開けるとそのまま左足シュートに持ち込む。また「ファーストタッチで中に行くことを考えたら行けた」と前半圧巻のパフォーマンスを見せていたMF中村優仁(3年)が右サイドを独力で突破して折り返し、古波津と田上が何度も決定機を迎えた。
 
 だが中村優ら数人を除くと動きの悪かった流経大柏は、全体的にボールコントロールが安定せず、3mほどのショートパスをミスする場面も。また局面で競り負けてボランチがセカンドボールを拾えなかったことから後手を踏んでしまうなど、リズムに乗ることができない。中村優はこの日、そして日本一を目の前にしておきながら全国総体準決勝で敗退したチームの課題として「心に余裕ができてしまって『勝つでしょう』と思ってしまっているところがある。もっとみんなが『負けない』と思って戦うことが大切」と指摘していたが、一方PAでディフェンス陣が必死に身体を張る千葉国際は14分にMF橋本凌(2年)の出したスルーパスから中村が右足シュートへ持ち込むなどV候補を脅かしていた。

 トライアングルをつくってのパスで局面を崩す練習を徹底していたという流経大柏だが、攻撃は明らかに個人頼み。連動性を欠いて単発になっていた。それでもタレント軍団は強烈な個で次々と千葉国際の守備網を破ってくる。25分に左中間からMF小松剣士(2年)が放った右足FKはGK伊藤駿(3年)がビッグセーブ。29分に絶妙な切り返しから古波津が放った右足シュートもクロスバーを叩いてしまうが前半終了直前の40分、ついに同点ゴールを奪った。カウンターから左サイドでボールを持ったMF菅谷大樹(3年)を起点に、長い距離を走って攻撃参加したMF飯島樹生(2年)が左クロスを入れると、中央へ飛び込んだ古波津が頭で合わせて同点ゴールを突き刺した。

 ズルズルといってしまいそうな悪い流れを前半のうちに食い止めた流経大柏はさらに後半7分、相手DFを引きずるようにPAへ侵入した田上がPKを獲得。自ら決めたシュートは蹴り直しとなってゴールを認められなかったが、代わりにキッカーを務めた古波津が右足でゴール左へと沈めて逆転した。

 この後、流経大柏は一方的に攻め続けた。U-18日本代表CB宮本拓弥(3年)が正確なキックでボールを左右に散し、そこから交代出場のFW中村慶太(3年)が足技でディフェンスラインを切り裂くなどビッグチャンスをつくる。だが14分に田上の放った左足シュートがクロスバーを叩き、他のシュートも精度を欠くなど追加点を奪うことができない。

 突き放すことができなかったチームは試合終盤、古波津をボランチへ下げて守りに入ったものの、ロスタイムには千葉国際の波状攻撃を食らってしまう。PAへ押し込まれた流経大柏は跳ね返すのがやっと。42分には左サイドを抜け出したSB豊田司(2年)が左足を振り抜き、こぼれ球に反応した中村がGK不在のゴールへ左足シュート。流経大柏は交代出場のMF湯澤聖人(3年)のスーパークリアに救われたものの、土壇場で同点に持ち込まれる大ピンチだった。

 田上は1点差で終えた初戦について「リズムもよくなかったし一人でプレーしている感じだった。千葉はどの試合も難しい。まず相手を気持ちで上回るようにしなければいけない」。伝統の堅守にやや不安を抱えるものの、タレント揃う攻撃力は間違いなく脅威。実力が全国上位にあるのは間違いない。4年ぶりの日本一を目指すV候補は、自ら苦しくしてしまった初戦の反省をこれからの戦いに活かす。

[写真]後半7分、流通経済大柏MF古波津が決勝PKを決める

(取材・文 吉田太郎)
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