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[プレミアリーグ参入戦]「選手権の前哨戦」北海道王者・旭川実が聖和学園との実力派対決制す!

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高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグ参入戦
[12.4 高円宮杯プレミアリーグ参入戦1回戦 旭川実高4-2聖和学園高 西が丘]

 高校年代の全国リーグ、高円宮杯U-18サッカーリーグプレミアリーグの参入を懸けたプレミアリーグ参入戦1回戦が4日に東京・西が丘サッカー場で開催され、プリンスリーグ北海道優勝の旭川実高とプリンスリーグ東北1部優勝の聖和学園高(宮城)が激突。ともに12月30日に開幕する全国高校サッカー選手権に出場する両校の注目対決は旭川実が4-2で制し、12月17日に行われる2回戦へ進出した。旭川実はプリンスリーグ東海1部優勝のジュビロ磐田U-18(静岡)との2回戦で勝てば、来季のプレミアリーグ参入が決まる。

 選手権の“前哨戦”を制したのは気温マイナス20度の北海道旭川市からやってきた旭川実だった。すでに雪がグラウンドが覆う地元を早く離れ、茨城合宿を経てこの試合に臨んだ北海道王者。「雪中なら全国優勝できますよ」と苦笑いしていた富居徹雄監督だったが、攻守に連動した好内容のサッカーで、東北の技巧派軍団・聖和学園を上回った。

 MF石山卓哉主将(3年)は「ビデオを見たら聖和の相手はみんな(ドリブルを警戒して)リトリートしていた。でも自分たちは前からはめていこうと決めていた。1人目が身体を当てて、2枚目で取りにいった」。聖和学園はキーマンのMF藤原光(3年)が負傷欠場していたが、ボールが足に吸い付くようなコントロールと、一度押し返されても再び仕掛けてくる150cmの強力ドリブラー、MF高橋奏太(3年)が抜群の存在感。またMF藤原元輝(3年)やFW高橋孝冴(3年)といった攻撃の中心からSB石原熙季、CB斉藤健主将(ともに3年)のDF陣までもがボールを持つとまずドリブルで相手を振り切り、前進していく。そしてヒールパスでのスイッチ、スルーパスと多彩な攻撃を繰り出した。

 ただ前線から相手を追い込んで、複数で奪う旭川実はPAまでボールを運ばれる場面こそあったが、石山の絶妙なカバーリングやMF阿羅功也(3年)の気の利いた動き、またCB大友一就(3年)の粘り強い守りなど決定機を作らせない。またダイレクトパスを交えながらサイドへテンポよく散らし、密集戦へ持ち込もうとする聖和学園のプレッシャーを外して攻撃を繰り出した。そして前半6分にはMF奈良創平(2年)がクロスバー直撃の右足ミドル。また左SB浅野健人(3年)のオーバーラップなどでゴールへ迫る。

 スコアを動かしたのは驚愕の一撃だった。前半23分、旭川実は奈良が敵陣中央でFKを獲得。キッカーのMF秋林裕也(3年)が右足を押し出すように振りぬくと、揺れながら舞い上がったボールはそのままゴール左上へと突き刺さった。観衆もどよめく圧巻の無回転FK。静かに喜ぶ背番号5をエンジのユニフォームが笑顔で祝福した。

 ただこの後、試合のリズムは聖和学園へと移っていく。旭川実は相手のプレッシャーの速さの前にまるで呼吸ができないような状況に。サイドへ散らすことができなくなり、ボールを奪ってもすぐに奪い返される展開となった。相手を押し込んだ聖和学園は36分、MF越後裕貴(3年)の中央突破を起点に右サイドから切れ込んだ高橋孝が右足シュート。こぼれ球に反応した高橋奏の左足シュートもDFに阻まれたが、最後はMF及川知哉(3年)が右足ダイレクトで押し込み、同点に追いついた。

 ただGKから徹底してつなぐ聖和学園はミスから勝ち越し点を献上してしまう。42分、GK舘内魁(3年)にプレッシャーをかけた旭川実FW山本真司(2年)がGKのキックをチャージ。PAへ転がったこぼれ球にいち早く反応した山本が難なく右足で勝ち越しゴールを流し込んだ。

 聖和学園の加見成司監督は「ボールを失わなければ失点はしないですから。取られた事よりも(反省点は)ボールを失って押し込まれたこと。失点はチームで招いた結果でした。(選手権へ向けて)技術レベルを確認しなければいけない」。らしさを出した一方で、旭川実にボールをつつかれて奪われた回数が多かったことを課題に挙げていた。後半も右SB土田洸人(3年)らが再三PAまでドリブルで迫り、またスルーパスなどDFの背後を狙う回数が増えた聖和学園だったが、最後の局面で相手を振り切ることができず、また崩すことへこだわり過ぎたかシュートを放つことができない。

 逆に旭川実は後半30分、DFと競り合いながらPAへ侵入した山本がやや幸運な形でPKを獲得。これをFW下田速人(3年)が右足で中央に決めて3-1へと突き放した。旭川実はさらに39分にも左サイドの山本がPAへ入れたパスに下田が反応。コントロールから左足でダメ押しゴールを流し込む。前半やや流れを止めていた印象だった背番号10が決定力の高さを示して試合の行方を決定付けた。聖和学園は後半ロスタイム、交代出場のMF平野圭介(3年)の中央突破から同じく交代出場のFW佐藤颯(3年)が右足でゴールを破ったが追撃もここまで。ともに前評判の高い実力派対決は旭川実が制した。

 この試合のために長距離移動を強いられた旭川実だが、選手権も控えるチームはプラスに捉えていた。富居監督は「この時期は2ヵ月間(雪で)体育館の練習になる。高校生と(本気で)試合ができるのは本当に大きいです」。現在、週末は雪のない地域を目指して苫小牧など南部へ移動してトレーニング。ただ、北海道では他の高校3年生はすでに引退してしまっているために、厳しい実戦を経験することができない。また平日はPAほどのスペースしかないビニールハウスで感覚を維持する毎日。それだけに石山も「(関東で試合ができるのは)うれしい。しかもこんなに暖かいですし」。“ふつうに”サッカーをできることを喜び、それをプレーで表現して見せた。

 旭川実は全国高校総体初戦で8強進出した大阪桐蔭と対戦し、PK戦の末に敗退。悔しい思いをしてきた。石山は「インターハイは自分では勝った試合だと思っている。その悔しさがあって選手権ではここまで勝てて来れている」。総体の悔しさを胸に選手権での躍進を誓う北海道代表。この日の勝利でプレミアリーグ参戦へ王手をかけた。大一番は東海王者・磐田U-18との戦いとなるが、食らいついて北海道から2チーム目となるプレミア参入を決める。

[写真]個人技の・聖和学園を粘り強く封じた旭川実・大友(右)

(取材・文 吉田太郎)

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