[選手権]「公式戦で初めて蹴りました」渡辺FK弾と和泉決勝ゴール!市立船橋が9年ぶり日本一へ王手!!
[1.7 全国高校選手権準決勝 大分1-2市立船橋 国立]
市立船橋が9年ぶりVに王手! 第90回全国高校サッカー選手権は7日、国立競技場で準決勝を行い、全国優勝4回の市立船橋がMF渡辺健斗(2年)の先制FKとFW和泉竜司主将(3年)のゴールによって初の決勝進出を目指した大分(大分)に2-1で勝利。7年ぶりとなる決勝進出を決めた。市立船橋は9日の決勝(国立)で02年度以来5度目となる日本一を懸けて四日市中央工(三重)と戦う。
2点目のゴールを演出したFW池辺征史(3年)が「1年前は考えられなかったくらいチームとして結果、ひとつのことへ向かうことができるようになった」と語り、主将の和泉が「球際、気持ちの部分、そして人間性はこのチームの強さだと思っている」と胸を張る。過去選手権を制覇した時のチームのようにJへ行くスター選手はいない。ただ一丸となって戦う名門・市立船橋が日本一へ王手をかけた。
市立船橋は最後までブレなかった。守備面の負担を考慮して攻撃のキーマンであるMF菅野将輝とMF杉山丈一郎(ともに3年)の両アタッカーを先発から外して松丸龍(3年)、渡辺、磐瀬剛(1年)の3ボランチで国立決戦に臨んだ市立船橋に対し、大分も本来の3トップではなく、1トップで中盤に人数をかけてコンパクトにする守備的な布陣を取る。「もっと前から奪いに来る、プレッシャーをかけにくると思っていた」と市立船橋の朝岡隆蔵監督が振り返っていたが、やや戸惑ったチームはロングボール中心の攻撃となり、大分の朴英雄監督が「いいパンチを出させないようにしたのは思い通り」という展開に持ち込まれてしまう。
ただ今大会でゴールを量産しているセットプレーが市立船橋に先制点をもたらした。前半24分、市立船橋はペナルティーアークで和泉がFKを獲得すると、キッカーは「公式戦で初めて蹴りました」という背番号23の渡辺。ゴール右上隅を狙って右足で振りぬかれたボールはクロスバーにわずかに触れてゴールへと吸い込まれた。
2年生MFの値千金の一撃でアドバンテージを得た市立船橋に対し、大分は31分にFW小松立青(3年)が自ら蹴った直接FKのこぼれ球に鋭く反応して右足シュート。これが枠を捉えたものの市立船橋のU-18日本代表候補GK積田景介(3年)の好守に阻まれ、2戦連発中のMF梶谷充斗(3年)の右足FKも大きく外れてしまう。4戦17発の大分だが、攻撃のスイッチを入れることのないまま前半を終えた。。
大分が前へ出てくる瞬間を警戒してリスクを避けていた市立船橋だが、後半にカウンターからリードを広げる。後半11分、市立船橋は前半からキレのあるドリブルで相手の脅威となっていた池辺が、自陣から相手のスライディングタックルをかわして一気に相手PAへ。一度スピードを緩めながらも再び加速してPAのFW岩渕諒(3年)へとつなぐと、右サイドへはたかれたボールを受けた和泉がDFとの1対1を制して右足シュートをねじ込んだ。
この後、大分はロングボールからパワーをかけてゴールへ押し寄せようとしたものの、市立船橋はディフェンス陣がしっかりとクリア。セカンドボールも弾き出して大分を勢いづかせない。それでも大分は36分、敵陣PA付近で相手のミスからインターセプトすると小松が決定的な左足シュート。これは積田の好守に阻まれたものの、続くMF佐保昂兵衛(3年)の右CKをCB清家俊(3年)が頭で押し込んで1-2と1点差へ詰めた。
ロスタイムを含めると10分以上を残していたが、市立船橋はここから敵陣コーナー付近でボールキープ。セットプレーを獲得しても4バックと3ボランチは守備に専念して時間を削る作業を選択する。追撃ゴールでスタンドを沸かせた大分だったが、ボールをキープしてこぼれ球も巧みに拾う相手の前に時間を使われて試合終了。勝利への最善の策を貫いた市立船橋が決勝進出の権利を得た。
今大会の市立船橋はフォア・ザ・チームの姿勢が際立つ。今年度日本一の有力候補だった流通経済大柏と戦った千葉県大会決勝直前のロッカールームでは、同準決勝の危険なプレーによって睾丸欠損という全治1か月半の重傷を負った池辺が「決勝出れないのはつらいけど、全国で恩返しするから全国に連れていってください!」と涙ながらの訴え。積田が「やるしかないと思いました」と振り返ったように、仲間のために一丸となって延長戦の末にライバルを撃破した。この日「恩返し」の好プレーを連発した池辺の他にも県総体で万全ではなかった和泉や、膝の痛みを抱えながら今大会を戦う岩渕という得点王候補たちが我を捨てて、チームメートに感謝しながら全国舞台を戦っている。現3年生のチームは新チーム結成当初「まとめきることができなかった」(和泉)とバラバラで全国総体で初戦敗退するなど、必ずしも結果を残すことができなかったが最後の冬に一丸となり、大きな成果をあげようとしている。
2年生の時に全国高校総体優勝を経験している積田は「このチームは上下関係がないから下級生も思い切ってやれると思う。こんな舞台はないから『楽しもう』と言っている」。05年度に野洲が初優勝して以来、盛岡商、流通経済大柏、広島皆実、山梨学院、滝川二と6年連続で初優勝校が続いていた。ともに元王者の市立船橋と四日市中央工のどちらが勝っても初優勝ではないが、和泉は「(初優勝校が続いた歴史を)止めるのは自分たちしかない」ときっぱり。選手、スタッフが一丸となって戦う名門が9日、国立で頂点に立つ。
[写真]後半11分、市立船橋FW和泉が決勝点となるゴールを喜ぶ
(取材・文 吉田太郎)
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【特設】高校選手権2011
市立船橋が9年ぶりVに王手! 第90回全国高校サッカー選手権は7日、国立競技場で準決勝を行い、全国優勝4回の市立船橋がMF渡辺健斗(2年)の先制FKとFW和泉竜司主将(3年)のゴールによって初の決勝進出を目指した大分(大分)に2-1で勝利。7年ぶりとなる決勝進出を決めた。市立船橋は9日の決勝(国立)で02年度以来5度目となる日本一を懸けて四日市中央工(三重)と戦う。
2点目のゴールを演出したFW池辺征史(3年)が「1年前は考えられなかったくらいチームとして結果、ひとつのことへ向かうことができるようになった」と語り、主将の和泉が「球際、気持ちの部分、そして人間性はこのチームの強さだと思っている」と胸を張る。過去選手権を制覇した時のチームのようにJへ行くスター選手はいない。ただ一丸となって戦う名門・市立船橋が日本一へ王手をかけた。
市立船橋は最後までブレなかった。守備面の負担を考慮して攻撃のキーマンであるMF菅野将輝とMF杉山丈一郎(ともに3年)の両アタッカーを先発から外して松丸龍(3年)、渡辺、磐瀬剛(1年)の3ボランチで国立決戦に臨んだ市立船橋に対し、大分も本来の3トップではなく、1トップで中盤に人数をかけてコンパクトにする守備的な布陣を取る。「もっと前から奪いに来る、プレッシャーをかけにくると思っていた」と市立船橋の朝岡隆蔵監督が振り返っていたが、やや戸惑ったチームはロングボール中心の攻撃となり、大分の朴英雄監督が「いいパンチを出させないようにしたのは思い通り」という展開に持ち込まれてしまう。
ただ今大会でゴールを量産しているセットプレーが市立船橋に先制点をもたらした。前半24分、市立船橋はペナルティーアークで和泉がFKを獲得すると、キッカーは「公式戦で初めて蹴りました」という背番号23の渡辺。ゴール右上隅を狙って右足で振りぬかれたボールはクロスバーにわずかに触れてゴールへと吸い込まれた。
2年生MFの値千金の一撃でアドバンテージを得た市立船橋に対し、大分は31分にFW小松立青(3年)が自ら蹴った直接FKのこぼれ球に鋭く反応して右足シュート。これが枠を捉えたものの市立船橋のU-18日本代表候補GK積田景介(3年)の好守に阻まれ、2戦連発中のMF梶谷充斗(3年)の右足FKも大きく外れてしまう。4戦17発の大分だが、攻撃のスイッチを入れることのないまま前半を終えた。。
大分が前へ出てくる瞬間を警戒してリスクを避けていた市立船橋だが、後半にカウンターからリードを広げる。後半11分、市立船橋は前半からキレのあるドリブルで相手の脅威となっていた池辺が、自陣から相手のスライディングタックルをかわして一気に相手PAへ。一度スピードを緩めながらも再び加速してPAのFW岩渕諒(3年)へとつなぐと、右サイドへはたかれたボールを受けた和泉がDFとの1対1を制して右足シュートをねじ込んだ。
この後、大分はロングボールからパワーをかけてゴールへ押し寄せようとしたものの、市立船橋はディフェンス陣がしっかりとクリア。セカンドボールも弾き出して大分を勢いづかせない。それでも大分は36分、敵陣PA付近で相手のミスからインターセプトすると小松が決定的な左足シュート。これは積田の好守に阻まれたものの、続くMF佐保昂兵衛(3年)の右CKをCB清家俊(3年)が頭で押し込んで1-2と1点差へ詰めた。
ロスタイムを含めると10分以上を残していたが、市立船橋はここから敵陣コーナー付近でボールキープ。セットプレーを獲得しても4バックと3ボランチは守備に専念して時間を削る作業を選択する。追撃ゴールでスタンドを沸かせた大分だったが、ボールをキープしてこぼれ球も巧みに拾う相手の前に時間を使われて試合終了。勝利への最善の策を貫いた市立船橋が決勝進出の権利を得た。
今大会の市立船橋はフォア・ザ・チームの姿勢が際立つ。今年度日本一の有力候補だった流通経済大柏と戦った千葉県大会決勝直前のロッカールームでは、同準決勝の危険なプレーによって睾丸欠損という全治1か月半の重傷を負った池辺が「決勝出れないのはつらいけど、全国で恩返しするから全国に連れていってください!」と涙ながらの訴え。積田が「やるしかないと思いました」と振り返ったように、仲間のために一丸となって延長戦の末にライバルを撃破した。この日「恩返し」の好プレーを連発した池辺の他にも県総体で万全ではなかった和泉や、膝の痛みを抱えながら今大会を戦う岩渕という得点王候補たちが我を捨てて、チームメートに感謝しながら全国舞台を戦っている。現3年生のチームは新チーム結成当初「まとめきることができなかった」(和泉)とバラバラで全国総体で初戦敗退するなど、必ずしも結果を残すことができなかったが最後の冬に一丸となり、大きな成果をあげようとしている。
2年生の時に全国高校総体優勝を経験している積田は「このチームは上下関係がないから下級生も思い切ってやれると思う。こんな舞台はないから『楽しもう』と言っている」。05年度に野洲が初優勝して以来、盛岡商、流通経済大柏、広島皆実、山梨学院、滝川二と6年連続で初優勝校が続いていた。ともに元王者の市立船橋と四日市中央工のどちらが勝っても初優勝ではないが、和泉は「(初優勝校が続いた歴史を)止めるのは自分たちしかない」ときっぱり。選手、スタッフが一丸となって戦う名門が9日、国立で頂点に立つ。
[写真]後半11分、市立船橋FW和泉が決勝点となるゴールを喜ぶ
(取材・文 吉田太郎)
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