beacon

「10回以上見た」“悲劇”の舞台で決勝点演出、今野「自画自賛です」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[10.12 国際親善試合 日本1-0フランス サンドニ]

 思わず笑みが広がった。「自画自賛ですね」。後半43分に生まれた決勝点の起点となったDF今野泰幸(G大阪)が、歴史的なゴールの瞬間を振り返った。相手CKからセカンドボールを拾った今野は自陣からドリブルで独走。「最初、持ち上がったとき、あまりにもフリーで。後ろに相手がいるのは分かったけど、あきらめ気味でドフリーになった」。

 FW香川真司がゴール前に走り込み、DF長友佑都が右に開く。「(香川)真司が中に入ってDFが食いついて、右を見たら長友がいた」。最初は長友の姿は見えていなかったという。「真司には長友が見えていたんだと思う。上手くDFを引き付けてくれた」。今野から正確なパスが長友に通り、長友の折り返しを香川が押し込んだ。

 ゴールが決まった瞬間、得点した香川以上にド派手なガッツポーズを見せた。「試合をやるからには勝ちたい気持ちだった。小さいころから見ていたフランスと、このスタジアムでやれるということで試合前から興奮していたし、そこで勝ちたいと思っていた。引き分けで終わるのではなく、勝ち切れたのは大きい」。

 今野にとってフランスは特別な相手だった。その“原点”は、トルシエ元監督時代の01年3月に対戦し、日本が0-5で惨敗した「サンドニの悲劇」だという。当時18歳だった今野は「0-5の試合が大好きで、10回以上見た。フランスに魅了されて」と照れ笑いを浮かべる。98年のフランスW杯、00年のEUROを制したフランスの黄金期。日本中にショックを与えた一戦も、今野には別の意味があった。「フランスの選手は滑らないのに、日本の選手だけが滑っていた。そういうのも含めて、あのフランスとできるのが楽しみだった」と言う。

 フランスに押し込まれる時間帯もあったが、守備陣が体を張り、粘り強く跳ね返した。「もう少しああいう展開にはしたくなかった。自分たち主体でゲームをコントロールしたかった」。そう悔やみながらも「攻め込まれてはいたけど、ラインも上げながらコンパクトにできていた。だから失点もゼロに抑えられたと思う」と力を込める。「ボールも何度も奪えたし、やれるなとは思った。ただ、ビルドアップのところで、個人としても、チームとしても、もっとやれたのかなと。ちょっとミスが多かった」。課題も収穫も手にしたサンドニでの歴史的勝利が持つ意味は果てしなく大きい。

(取材・文 西山紘平)

TOP