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「世界で舞う」目標に、「98JAPAN」U-15代表候補が始動

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 2015年のU-17W杯を目指す98年生まれ以降の世代、「98JAPAN」ことU-15日本代表候補が東京都内で始動した。7日に集合し、初練習となった8日午前はU-17日本代表監督と兼任する吉武博文監督の下で2時間強のトレーニング。ボールの受け方や立ち方、わずかなスピードの変化や一歩が出るか出ないかで勝負が変わってくることなど、より高い意識、判断力を刷り込まれながらパス&トラップ、対人での身体の入れ方、シュート練習、5対5などのメニューを行った。

 吉武監督が「(4日間の合宿の狙いは)自分を知る、環境的には世界、アジアのレベルを知る。ビデオを使ったり、話したり、トレーニングの中で、ピッチの中で24時間体制でアジアのレベル、世界のレベルを知ってもらう。そして自分自身を知る、仲間を知る、コーチを知ることを早く慣れて欲しい」と説明した今回の始動合宿は、招集した45名を2つに分けて、東日本(東京)合宿を7日から10日まで、西日本(広島)合宿を14日から17日まで行う。今回は45名だが、核となる選手たち中心に今後も多くの素材に経験を積ませながら、日本中の98年生まれ以降の選手全員で「世界で舞う」チームを築きあげていく。吉武監督は「『世界で舞う』ということが3年間の目標。最長で、最多で、最良の活動にしたい。負けたら終わりなので、(U-17W杯の決勝まで)できるだけ長く、そしてできるだけ多くの経験値を積んで欲しい。そして『いい活動だった』と最良になるようにできたらな、と選手に伝えてあります」と語った。

 年々、この年代の選手たちのレベルが上がってきていることは間違いない。それは吉武監督も認めているところだ。ただ今回、大宮ジュニアユースのエースとしてJFAプレミアカップと全日本ユース選手権(U-15)大会で決勝進出、すでに昨年U-16日本代表候補にも招集されているMF黒川淳史や左SB野崎玲央、全国中学校大会優勝の青森山田中のMF三上孝太、MF高橋壱晟ら中学世代の大会で結果を残している選手たちも招集されているが、練習初日は要求されるレベルの高さに面食らっているような選手も見られた。吉武監督は「自分としてはもっと(選手たちを刺激して頭の中が)パニックするような内容を伝えたかったけれど……。レベルが上がっているのは確かですけど、もっと世界基準であって欲しいなと思う」。世界を意識する上ではまだまだ足りない部分が多いのが現状。「世界を獲る」という高い意識を持った上で、より成熟した選手になっていかなければならない。

 MF石毛秀樹(現清水)やFW南野拓実(現C大阪)ら94年生まれ以降の世代、94JAPANは11年U-17W杯でブラジルに競り負けて準々決勝敗退。96年生まれ以降の世代、96JAPANは12年AFC U-16選手権で準優勝して4大会連続となるU-17W杯杯への出場権を獲得している。ともにインパクトを残す戦いを見せているが、キャッチフレーズにもなっている「アジアを横綱相撲で突破する」「世界でファイナリストになる」という目標を達成するまでにはまだ至っていない。将来の日本サッカーを支える選手になることと同時に、これからの3年間では明確な目標へ向けて、過去の反省も98JAPANの強化に活かしていくつもりだ。

 指揮官は「(96JAPANのときは)3年間の流れが分かるからこそ、急ぎすぎる、慌てて形を整えようとする失敗をしたなというのが自分の中であった。98(JAPAN)では当たり前のことだけれども、基本的なことをもっと大事にしていかなければいけない。細かなディテールのところ、ボールを受ける前の立ち方だとか、どこに視線を持っていくのか、どう止めるだとか、どこにボールを置いてどっちに蹴るのか、どこに立ち足を踏み込んだらいい……。そういうところが結局、当たり前ですけど、最後の最後に響いてくる。鉄は熱いうちにという感じで、15歳の時に3年間掛けてまだ変わる要素があると思う」。吉武監督は3大会連続となる指揮。厳しい戦いを制すポイントを知る指揮官はこだわってトレーニングしていく考えを示した。

 先輩たちがアジアを連続して突破しているだけに選手たちの目線も高い。野崎は「まずは自分が選ばれないといけない。選ばれた中でチームのレベルを上げて行きたい」と語り、三上は「(吉武監督の下で)2大会出場しているのは凄いけれど、まだ上で勝てていない。自分たちは(アジアで)勝って、上でも勝てるようにしたいです」と力を込めた。将来、先輩たち以上に羽ばたくために、この3年間でより多くの経験を積み、結果を残す。

(取材・文 吉田太郎)

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