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日本代表メンバー発表、ザッケローニ監督会見要旨

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 日本サッカー協会は23日、キリンチャレンジ杯・ブルガリア戦(30日、豊田ス)、W杯アジア最終予選・オーストラリア戦(6月4日、埼玉)に臨む日本代表メンバー26人を発表し、FW工藤壮人(柏)、FW東慶悟(F東京)がA代表に初選出された。

以下、ザッケローニ監督の会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「大切な時が迫っている。W杯出場まで、あと一歩のところまで来ている。このような状況で集中しているし、目標達成のために何としてもという気持ちでいる。オーストラリア戦、イラク戦とあるが、変に計算せず、この2試合で最高の結果を求めていきたい。招集したメンバーは、段階的にチームに合流してくる。どういうコンディションで合流してくるか興味がある。海外組はシーズンが終わって帰国したばかりで、国内組はシーズンの真っ最中という難しい状況でもある。

 ここまで来たら自分たちで(W杯出場を)決めたい。技術力を出して、バランスを持って、気迫を持って相手に迫る。そういう戦いを見せたい。現時点でチームに対する期待、雰囲気として、すでにW杯が決まっている雰囲気があるかもしれないが、実際はそんなことはない。選手が集まった時点で、テンション、集中力を高めたい。

 チームの回転数が高いときにチームのいいところが出る。バイエルンやドルトムント、ユベントス、マンチェスター・ユナイテッドを見ても、『インテンシティ』(直訳すると「厳しさ」「激しさ」の意)をチームの中に持っている。その『インテンシティ』を出すためには集中力、気迫が必要だ。欧州のサッカーを見ても、いくら個の力が強くても、『インテンシティ』が低いチームは結果を出せない。日本の技術力はアジアで一番だと自負しているが、『インテンシティ』が欠けると、いい方向には進まない」

―工藤、東が初招集となったが? 東はチームではトップ下でプレーしているが、どこに期待しているか?
「これまでも何度も言ってきているが、若くて成長を見せてくれている選手には個人的にも注目している。ただ、一度呼ばれたからと言って、代表の常連になったわけではない。さらに成長してほしいと思っているし、この2人も例外ではない。こうした選手はこれまでもいたが、全員が成長を見せてくれているわけではない。私が就任した3年前と比べると、成長を見せてくれている2人だが、さらなる成長をこの2人には期待している。

 2人ともユーティリティーなプレイヤーで、複数のポジションでプレーできる。かつ成長を見せてくれている。2人に共通するのは、ゴールに向かっていくときに良さがあり、迫力を見せるところ。東もユーティリティーなプレイヤーで、セカンドトップ、トップ下、サイドでプレーできると思う。大宮ではセカンドトップでプレーしているのを見ていたが、現在のトップ下が彼のポジションなのかなと思っている。今の年齢と能力を見ると、いいレベルにいると思うが、代表の常連になる実力はまだない」

―ヨルダン戦ではセットプレーで失点した。オーストラリアも高さがあるが、セットプレーの対策は?
「オーストラリアが特長である空中戦の強さ、フィジカルの強さで押してくるだろうなとは思っている。ただ、相手のいいところを消す対策だけでなく、自分たちの特長をいかに出していけるかにもこだわっていきたい」

―先ほど『インテンシティ』という言葉を使ったが、具体的にはどういうものを求めているのか?
「オンでもオフでも活動的になるという意味。ボールを持っていないときは、相手のボールホルダーに対してアプローチし、後ろの選手がそれに連動する。活動的な準備をするということ。ボールを持っているときも、足元、足元ではなく、スペースにボールを運び、スピードに乗ってパスをつなぐ。そういう意味で活動的になることを『インテンシティ』と言った」

―本田、岡崎、酒井高徳の3選手はオーストラリア戦の前日に合流する。特にケガを抱えている本田の状態についてはどう把握しているか?
「本田の状態については、順調に回復し、完治に向かっていると聞いているが、まだ完治していないとも聞いている。先ほどどういう状態で戻ってくるか興味があると言ったが、まだ国内でも試合があるし、海外でもカップ戦がある。どういう状態で戻ってくるか、現時点では把握できない」

―海外組の多くはシーズンが終わっているが、合宿が始まるまでに求めているものはあるか?
「2、3日はゆっくり体を休めてほしいが、その後は元いたクラブの練習に参加させてもらうか、代表チームとしてもうちのスタッフが対応できる状態になっているので、元いたクラブの練習に参加できない選手はそのようにして対応したい」

―故障から復帰した長友の状態については?
「直近の2試合にフル出場している。これはいいニュースだ。一方で、その2試合以前は、1か月近く実戦から離れていた。どういうコンディションにあるかは把握できていないし、実際に手元に置いて見てみないと分からないが、痛みがないというのはいいニュースだ」

―ブルガリアに対する印象は? ブルガリア戦で『インテンシティ』を出すには?
「94年のW杯で準決勝まで駒を進めるなど、当時はいい選手がそろっていた。今もチーム状況は立て直してきていると思う。W杯欧州予選でもイタリアに次ぐ2位につけている。フィジカルと技術のバランスが取れたチームで、守備からカウンターでゴールを狙うサッカーをする印象がある。(欧州予選で)12得点、4失点とバランスのいい結果を残している。『インテンシティ』をこの試合で出せるかは、コンディションにもよる。コンディションを合わせていけるかが『インテンシティ』にかかわってくる」

―ケガで離脱している本田を招集したのは?
「招集を決断した理由は、ケガをしてからの時間、リハビリの時間を考慮したうえでオーストラリア戦には間に合うと判断したから。3、4日前までにチームに合流し、練習できると思う。コンディションも含めてメンバーを考えないといけない。そういうことも考えて、東の名前が26人に入っているのも事実」

―長友が手術を受けるかどうかが注目されていたが、個人的に連絡を取ったことは?
「個人的には一度も話していない。それぞれの役割を尊重し、大切にしている。メディカルチームがアドバイスしたり、アプローチするのが正しいやり方。そして、メディカルチームの意見を聞いたうえで、最終判断するのは選手。彼の気持ちも尊重しないといけない」

―香川がプレミアリーグで優勝したが、この1年の成長をどう見ているか?
「優勝して日本に帰ってくることにもすっかり慣れたと思う。ここ数年で獲ったタイトルの数は素晴らしい。これに満足せず、もっともっと貪欲にそういうものを狙ってほしい。香川に期待することとしては、我々の目標を達成するために力を貸してほしいし、チームの勝利に貢献してほしい。今季は新しい環境で、新しいチームメイトとともに、新しい監督の下に身を置いて1シーズンを戦い、選手としてまた一段と成長したと思う。ドルトムントでもマンチェスター・ユナイテッドでも、欧州の中でも素晴らしい監督のいるクラブで素晴らしい経験をしたと思う」

―これまで『勇気とバランス』という言葉をよく使っていたが、今回『インテンシティ』という言葉を使ったのは、最近の世界のサッカーを見て感じるものがあったからか?
「今までの戦いを振り返ったとき、継続的にピッチで『インテンシティ』が出ているときにチームとしてのパフォーマンスが付いてきているという事実があるし、それを追求したいと思っている」

―今日、藤田俊哉の送別試合があるが、現代表メンバーが代表OBから感じてほしいものはあるか?
「代表チームで活躍してきたメンバーというのは、常に向上心があって、自分の中に限界をつくらず、日々努力してサッカーに取り組んできていたと思う。それは今の代表選手にも伝えてほしい。年齢にかかわらず、そういうものを持つことがサッカーでは大事で、サッカーができる幸せというのをそういうメンバーから伝えてほしい」

(取材・文 西山紘平)

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