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世代別W杯で2度の世界一も「それは過去のこと」…なでしこJ長野風花、リバプールでの成長糧に夢の世界舞台へ

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MF長野風花(リバプール)

 かつてアンダー世代の女子ワールドカップで2度の世界一を経験した24歳が、ついに初めてフル代表の世界舞台に挑む。なでしこジャパン(日本女子代表)のMF長野風花(リバプール)は28日、国内合宿2日目の練習後に報道陣の取材に応じ、「個人的にはずっと目指してきた舞台で、夢の舞台。そこで自分がプレーできるのが夢みたい」と感慨を述べた。

 育成年代から国内トップの実績を誇ってきた長野は2014年のU-17女子W杯、18年のU-20女子W杯優勝メンバー。16年のU-17女子W杯でもチーム成績は準優勝だったものの、大会公式のゴールデンボール(最優秀選手賞)を受賞するなど、世界でも屈指の国際舞台経験を持つMFだ。

 なでしこジャパンでは18年11月に初招集されるも、以降は長らく選外が続いていたものの、韓国でのプレー経験も重ねながら下積みを続けた結果、19年から所属したちふれASエルフェン埼玉で復活。21年夏からWEリーグ初年度のマイナビ仙台レディースに加わると、代表でも共にU-20女子W杯を制した池田太監督の就任を機に頭角を表し、今ではチーム欠かせない存在となっている。

 7月20日開幕の女子W杯は池田監督と共に挑む久しぶりの世界舞台。だが、長野は「全く違うものとして捉えている」と冷静に語る。

「アンダー世代では優勝したけど全く別物だと個人的に思っている。それは正直、過去のことで、フル代表のW杯は経験したことがないし、未知だし、みんな国を背負ってくるので、甘い気持ちではそういう舞台に立てない。初めての経験なので自分の全てを出したい」と述べ、新たな気持ちで大会に臨もうとしているようだ。

 いまの長野を支えているのは過去の栄光ではなく、急速な成長で世界最高峰のリーグに上り詰めようとしているイングランド・女子スーパーリーグでの成長だ。

 22年夏にマイナビ仙台からアメリカのノースカロライナ・カレッジに移籍し、海外での再挑戦を果たした長野は今年1月からイングランドのリバプールに所属。来季から男子チームが使用していた「メルウッド」の施設使用も予定されるなど、急速に女子チームの強化が進んでいる名門クラブで11試合にフル出場し、世界トップレベルの舞台で貴重なプレー経験を積んでいる。

 長野によると、リバプールで成長を実感しているのはフィジカル面だという。移籍当初は大型選手に腕一本で止められ、基準の違いを感じたと振り返るが、いまではディフェンス専門の選手に引けを取らないようながっしりとした体躯が際立っている。

 報道陣からもフィジカル面の変化に驚きの声が上がり、「イングランドで監督から『風花は弱いから筋トレしろ!』って言われて、筋トレいっぱいしていたらこうなってました(笑)」と長野。チームのフィジカルメニューよりもウエイト重量や回数を多く取り組んでいたそうで「しっかり頑張った証拠です」と胸を張った。

 また強みとしてきた攻撃面がイングランドで通用したことも自身となった。「ディフェンスと前の選手の繋ぎ役という評価はしてもらっている。1対1の強さはもっと行けたよと言われるけど、そういうところも成長していこうという形だったので、攻撃のところは評価してもらえていたのかなと思う」。世界基準の強度面でも「常に速いプレッシャーであったり、一歩寄せてくるところも違うので、そういう環境でやらせてもらっている中で慣れた部分だと思う」と着実に手応えを重ねているようだ。

 そうした新たな姿で挑む夢舞台。長野は約3週間後の開幕に向けて、まずはなでしこジャパンの役割に自身のプレーを適応させていくことをテーマに掲げる。「リバプールではアンカーのポジションだったので、あまり前に出て行くなと言われていた。代表とプレースタイルが結構違っていて、上下動がないポジションだったので、とにかく強さやつなぎ役を求められていた。正直そこはこれからという感じ」。一日一日のトレーニングでトライを続け、万全の準備で世界に挑む構えだ。

(取材・文 竹内達也)
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