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“冨安指令”で走った久保建英「プレスをかけるほうが僕は好き」負傷明けでもGL3戦奮闘

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日本代表MF久保建英(ソシエダ)

[1.24 アジア杯グループD第3節 日本 3-1 インドネシア アルトゥママ]

 左太ももの負傷明けでアジアカップに合流した日本代表MF久保建英(ソシエダ)だったが、結果的にはグループリーグ全3試合でピッチに立ち、そのうち2試合は先発で奮闘した。最終戦ではDF冨安健洋(アーセナル)が主導するハイプレス戦術を牽引し、コンディションも上がってきている様子。決勝トーナメントに向けて順調な仕上がりぶりをうかがわせた。

 3-1の勝利で決勝トーナメント進出が決まったインドネシア戦後、久保はまず「勝てて良かった」とホッとした表情を浮かべつつ、この日の日本代表が見せたハイプレス戦術を苦笑い気味に振り返った。

「本当は前から行かずに後ろから引くプランもあったけど、行けちゃったので全部前から行って、前の選手は疲れたけどそのぶん後ろは楽をしたと思う」。この日も基本布陣は4-2-3-1だったが、3バックの相手に対して4-1-4-1のインサイドハーフに近い役割を担った久保。ハイプレスは冨安の指令でスイッチが入れられていたのだという。

「今日は冨安選手に『行け』って言われたら行かないといけないので、前の選手は疲れましたけど……」。それでも守備のプレスバックに追われて疲弊したカタールW杯とは対照的に、その表情には充実感がにじんでいる。

「たぶん1、2試合目にプレスがハマんなくて嫌だというのを冨安選手も見てきたので、行ける時には行かなきゃいけないよということだと思う。今日は何回も『行け』って声を聞いたので、じゃあ行くしかないなと。たぶん彼の守り方的にどんどん行ける時は行くで、後ろとしては1枚余っていたいと思うので、そういう意味で前はしっかり同数で追っていくことが大事だと思う」(久保)

 なにより昨季からプレーしているソシエダでも高い位置からのプレッシングは慣れたもの。「プレスかけるの好きですよ。変に後ろで守っているよりプレスをかけるほうが僕は好きなので、僕からしたらやりやすいです」と手応えを口にする。

 そんなハイプレス戦術を主導している冨安も、久保と同じく負傷明けで今大会に合流。グループリーグに間に合わせ、チームを苦境から救った。

 東京五輪でも共に戦った25歳のDFリーダーに対し、久保は「やっぱり落ち着いていますよね。僕だったらああいうところで胸トラップして運んでいくとか絶対にできないので。あと守備のところで大丈夫だろうなと安心して見ていられるなという感覚がある」と太鼓判。「逆に前目の選手としてはゆるくならないように気をつけたいけど」と付け加えつつも、頼もしさを感じているようだ。

 苦しみながらもグループリーグ突破を果たした日本代表だが、ここからは対戦相手のレベルも上がり、さらに厳しい戦いが続くことが予想される。コンディションを踏まえながら調整してきた久保、冨安、そして現在も慎重なリハビリが続くMF三笘薫(ブライトン)も含め、欧州トップレベルでプレーする選手たちのさらなる活躍が不可欠となる。

 グループリーグ3試合で奮闘した久保にとってもここからが本番。さらにパフォーマンスを高めていく構えだ。

「徐々にみんなのコンディションも上がりつつ、本番のノックアウトステージに向けて負けられない戦いになってくるので、良い準備ができているかなと思う。僕とトミくんは思ったよりも早く、無理してでもコンディションを上げて2試合出たし、三笘選手はたぶんもうできる状態にはあるけど、まずは無理せずに中6日の次の試合に照準を合わせていると思う。チームとして選手層も厚いし、(登録枠が)今回26人に変わったメリットの一つでもあるのかなと思う」

 そう三笘の復帰も示唆した久保は「ここからどこが相手か分からないけど、楽な試合は一つもない」と決勝トーナメントを展望。「どちらかというとまたボールを保持する展開が増えると思うので、1試合目とか2試合目みたいにセカンドボールを拾われたり、相手のロングボールには気をつけていきたい。そこは痛い目を見たのでしっかり反省しつつ、中6日なので今度はコンディション面で言い訳も利かないのでしっかり良い準備をしたい」。大きな注目を集めて出場するアジア杯。本領発揮はこれからだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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