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「侍魂」でカタールを攻守に圧倒、先制弾の田中達「自分たちのサッカーができた」

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[11.19 W杯アジア最終予選 カタール0-3日本 ドーハ]

 完膚なきまでに叩きのめした。勝ち点4同士で並んでいたカタールをアウェーで一蹴。過去3分2敗と未勝利だった相手に因縁の地・ドーハで完勝し、W杯出場に大きく前進する勝ち点3を手にした。

 口火を切ったのはFW田中達也(浦和)だ。前半19分、DF内田篤人のフィードに反応。ニアに動いた味方をおとりに使い、DFの死角からゴール前に飛び出した。胸トラップでボールを前に押し出し、右足一閃。GKの股間を抜く技ありの先制点が、チームを勢いづけた。

 「とりあえず枠に入れようと思って蹴った。ウッチー(内田)がいいボールをくれて、DFも油断していた。ひとりがニアに流れて、僕のところまでボールが来た。入って良かった」

 立ち上がりからホームのカタールは積極的なサッカーを見せた。高い位置からプレッシャーを仕掛け、日本のボール回しを封じようとする。それでも落ち着いてパスをつないでカタールのプレスをいなすと、日本も田中達、FW玉田圭司ら前線の選手が守備に奔走。プレッシャーのかけ合い、我慢比べとなった展開を田中達のひと振りが打ち破った。その後はカタールのプレッシャーも徐々に弱まり、日本らしいパスサッカーがピッチ上で展開された。カタールの攻撃は強引な個人突破が目立ち始め、日本は2人、3人と連動した守備で、これを封じ込めた。ボールを奪えば、積極的に前へ前へボールを動かし、サイドバックのオーバーラップも絡みながら数的優位をつくってカタールを押し込んだ。

 「自分たちのサッカーができた。高い位置で奪って、自分たちでボールを回せたのがよかった。ボールだけでなく、人も動いていた。みんながしっかりとした守備をするから、攻撃でボールも回せる。みんなで勝ち取った勝利だと思う」。満足げな表情を浮かべた田中達は、いつになく饒舌だった。

 10月15日のウズベキスタン戦に1-1で引き分け、この試合に負ければ岡田武史監督の解任も現実味を帯びてくる剣が峰の一戦だった。MF松井大輔は「あれ(ウズベキスタン戦)がなければ、ここまでプレッシャーを感じてカタールに来ることもなかった。日本人もプレッシャーに強いことが分かったね」と冗談交じりに語ったが、追い込まれた背水の一戦で選手たちは底力を発揮した。

 試合前、岡田監督は「侍魂を見せろ」とゲキを飛ばし、選手をピッチへ送り出した。DF長友佑都は「戦えということだと思う。1対1で負けるなと言われていたし、“恐れるな、腰の引いたサッカーだけはするな”と言われた」と明かした。ファウルも辞さないカタールの激しい当たりにも臆することなく戦った。気持ちで負けなかったことも、大きな勝因のひとつだろう。「監督は気合いが入ってましたね。僕らも気合い入ってました」。長友はそう言って笑った。

 A組首位のオーストラリアはこの日、バーレーンに1-0で勝って3連勝を飾り、勝ち点を9に伸ばした。日本も2勝1分の勝ち点7とし、オーストラリアをぴったりと追走している。「アウェーで3点差で勝てたのは収穫。何より勝ち点3が取れてうれしい」と田中達は言った。2位の座を争っていたカタールにアウェーで快勝したことで、A組は事実上、オーストラリアと日本の2強態勢になった。各組2位以内に与えられるW杯出場権獲得へ、この勝利が持つ意味は果てしなく大きい。ドーハの悲劇から15年。あの悪夢を吹き飛ばす圧勝劇で、南アフリカへの道に明るい光が差し込んできた。

<写真>FW田中達也
(取材・文 西山紘平)

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