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エムボマ氏がカメルーンの現状を大胆告白

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 元カメルーン代表のパトリック・エムボマ氏が、南アフリカW杯全64試合をハイビジョン生中継するスカパー!のメディアアドバイザーに就任し、12日、都内で記者会見を行った。
以下、倉敷保雄氏との対談及び囲み取材でのコメント

<倉敷氏との対談>
―W杯の対戦国が決まったときの感想は?
「日本と同じグループになって、本当にうれしかった。私が応援する2チームが同じグループに入り、しかも初戦で対戦するということで、この上ない喜び。私自身、カメルーン人なのでカメルーンを応援したい気持ちはあるが、できることなら日本とカメルーンの2チームがグループリーグを突破してほしいと思っている」

―日本代表はどんな存在?
「今までも何度か対戦している。日本は4度目のW杯ということで、経験を積んできたチーム。監督も経験豊富な人なので、W杯でもいい試合を見せられると思う。日本でプレーしていたときからだいぶ時間がたったので、現状は分からないが、素晴らしいチームだと思う。カメルーンにはエトー(インテル)がいますが(笑)」

―カメルーンのキャプテンはリゴベール・ソング(トラブゾンシュポル)ですね?
「いや、ル・グエン監督になってソングからエトーにキャプテンは変わっている」

―そのエトーとは8年前の日韓W杯で一緒にプレーしました。
「確かに彼とは8年前に一緒にプレーした。日本でのW杯で彼とのコンビネーションで点を取れたのはいい思い出だ。その後彼はとても成長して、バルセロナでもすばらしい活躍を見せていた。お金もいっぱい稼いでいると思う(笑)。世界を代表するストライカーで、アフリカの誇りでもある」

―エトーの他に注目しているアタッカーは?
「アロオ・エフル(ナンシー)、ウェボ(マジョルカ)も得点力があって、素晴らしい。イドリソ(フライブルク)もドイツでプレーしている選手。ただ、エトーと絡んだとき、エトーを一番生かせる選手がだれか悩んでいるところ」

―4-3-3のシステムはエトーにとってプラスなのか?
「本来エトーはセンターフォワードがいいと思うが、ル・グエン監督になって左サイドで起用されることが多い。本来持っているものをすべて出せているかどうかは微妙だと思う」

―中盤ではアーセナルのアレクサンドル・ソングが中心になるのか?
「まだ若手(22歳)だが、この2年、代表を牽引しているすばらしい選手だ。中盤でボールを奪う能力の高い選手で、アーセナルでプレーしていることが彼の能力を証明していると思う。強いて課題を挙げれば、ボールを奪ってからの展開、どう攻撃につなげるかというところ。ただ、まだ若い選手なのでこれからもっと伸びていくと思う」

―他に中盤で注目している選手は?
「代表でもしばしばプレーしているリヨンのマクンは面白い選手。アチール・エマナ(ベティス)も運動量が多く、いい選手だと思う」

―マクンは2月16日の欧州CL、レアル・マドリー戦でゴールも決めた。
「得点力もあるが、残念ながら代表では得点が少ない。ただ、ヘディングも強いので、ヘディングでゴールを決めることもあるのではないかと思っている」

―リゴベール・ソングは17歳からW杯を経験している。
「ソングはずっと代表を引っ張ってきた。彼の力は大きい。まだW杯に出られるか分からないが、是非4回目のW杯に出場して、いいパフォーマンスを見せてほしい。おそらく140試合以上の代表キャップを持っているはず。ずっとキャプテンとして引っ張ってきた。アフリカの歴史に名を残す選手だ。キャプテンとしてアフリカ選手権も2回優勝している。周りからは“もう年だ”と批判されることもあるが、すばらしい選手なので、是非W杯に出てほしいと思っている。まだカズ(三浦知良)よりは若いしね(笑)」

―モナコにもすばらしいDFがいますね。
ニコラ・エンクルだ。U-20代表のときから気になって見ていた。モナコでは中盤でプレーしているが、MFもDFもこなせるすばらしい選手だ。(19歳と)若くて、経験は浅いが、今の代表チームのキープレイヤー。センターバックとして不動の地位を持っていると思う。彼を中心にして、周りをどう置くかがこれからの課題」

―GKのカメニはこないだまで中村俊輔とエスパニョールでチームメイトだった。
「00年のシドニー五輪のチャンピオンであり、04年にA代表のGKになってからずっとチームを引っ張ってきた。スペインでプレーして、経験も積んでいる。アフリカ選手権では準々決勝でミスがあって、彼自身悔やんでいた。その思いもW杯で晴らしたいと彼も話していた」

―カメニは、ブッフォンもあこがれていた元カメルーン代表GKのトーマス・ヌコノ氏の指導を受けている。
「欧州では有名な話で、ブッフォンが子供のころ、ヌコノのプレーを見て、他の選手と違うと思い、彼のようになりたいと思ったらしい。代表でもエスパニョールでもヌコノがカメニを育ててくれた。ヌコノの指導が彼にとっても大きかったと思う。ヌコノはカメルーンの歴史上、アフリカの歴史上、素晴らしい選手として称えられていて、現在の代表チームへの貢献も大きい」

―3月3日にモナコで行われたイタリアとの親善試合も観戦したそうだが?
「イタリア戦はいろんな選手を試していた。先ほども話したが、ヌクルはいいプレーをしていた。ヨエル・マティプ、中盤の選手だが、彼もよかった」

―予選途中から就任したル・グエン監督については?
「先ほども言ったが、来てすぐにシステムを4-3-3に変えた。新しいシステムに新しい選手を入れて、残りの予選では4勝を挙げ、出場権を獲得した。大きな影響はソングからエトーにキャプテンを変えたこと。これはチームにとって大きかったと思う」

―アフリカ選手権はベスト8だったが?
「目標は優勝だったが、残念ながらエジプトに負けた。だが、エジプトは決して弱いチームではない。結果は残念だったが、プレー、内容が悪かったとは思っていない。準々決勝で敗れたが、W杯に向けてどこを修正すればいいかも分かった。W杯の準備としてはよかったと思う。それを踏まえてイタリア戦ではどんどん若手を試した。これからチームがよくなって、W杯に結び付けばいいと思っている」

―カメルーンはよくスロースターターと言われるが?
「言われる通り、試合開始早々に得点を挙げることは少なく、失点することが多い。出足は思わしくない。そういうスタイルは今になって始まったことではなく、昔からそうだし、最終的にいい結果が出ればいいと思う。アフリカのサポーターがスタジアムに集まるのが遅いから、選手のパフォーマンスが上がるのも遅いのかもしれないね(笑)」

―アフリカ大陸で初めてのW杯となるが?
「アフリカでW杯を開催できることをアフリカ人として誇りに思っている。アフリカの中でも南アフリカは裕福な国なので、ビッグイベントをやるのにふさわしいと思う。しっかり運営して、いいW杯になることを切に願っている」

―エムボマさんにとって「世界標準」とは?
「いい選手でなければならないが、とにかく自信を持つことが大事。何百万、何千万人という国を背負う責任感は重い。資質も問われるし、自信を持って強い気持ちで臨まなければならない。国を代表するというのはクラブでプレーするのとはまったく違う重みを感じると思う」

―日本のサポーターへメッセージをお願いします。
「私自身、日本代表のサポーターのひとり。サポーターには最後の最後まで応援する強い気持ちを持って応援してほしい。私も応援します」

<囲み取材>
―日本代表の印象は?
「岡田監督は人間としてもすばらしいし、監督の経験も豊富。W杯もいい試合になると思っている。選手もすばらしいから、本大会に出場できるのだと思う」

―エムボマさんがJリーグでプレーしていたときと違いは?
「私がJリーグでプレーしていたのはプロになって4、5年しかたっていないころだったと思う。あれから年月もたち、比べ物にならないぐらい成長していると思う。中田ヒデや遠藤、中村俊輔といい選手がどんどん出てきている」

―カメルーンのメディアや国民は日本をどう評価しているのか?
「カメルーンは過去に何度も対戦しているが、日本に勝てていない(日本の2勝1分)。体が大きいわけではないが、俊敏性、運動量があって、やりづらい相手だとカメルーンの人はみんな思っている。日本のサッカーを見て、すばらしいとだれもが思っている」

―日本はW杯でどこまで勝ち上がれると思うか?
「こればかりは同じグループなので、なんとも難しいが、日本もカメルーンもともに勝ち上がってほしい。日本はまだベスト8にいってないので、ベスト8にいってほしいが、こればかりは大会が始まらないと分からない」

―岡田監督はベスト4を目指すと言っているが?
「目標としてはいいことだけど、あまり急ぎ過ぎてもよくない。日本はまだベスト8にもいってない。まずベスト8を現実的な目標にするべきだと思う」

―カメルーン戦に向けてアドバイスはありますか?
「カメルーンに対してどう戦えばいいかということを話すのは難しい。お互いが研究していくと思うし、研究の成果が試合で出ると思う。力は拮抗しているし、どちらが勝つかは分からない」

―同組のデンマーク、オランダについては?
「デンマークはカメルーン、日本と差のないチームだと思う。オランダは突出しているかもしれないが、そうは言っても、オランダが勝ち上がれるかというと、それは分からない。どのチームが勝ち上がってもおかしくないと思っている」

―日本で注目している選手は?
「遠藤はアジアを代表する日本の中心選手だと思う。プラスして中村俊輔、松井…。中盤には本当にいい選手がいる。センターバックにも経験のある中澤がいて、闘莉王や楢崎と守りも堅い印象がある」

―日本に比べてカメルーンの選手が数多く欧州のリーグで活躍できているのはなぜ?
「比較は難しいが、日本の選手は日本でプレーしていても、それだけ稼ぐことができる。ところがカメルーンの選手は自分の国では生活が成り立たないので、みんな稼ぎたいと思って海外に出ていく。中田ヒデにしても俊輔にしても、海外で成功している。日本人が成功していないわけではない。ただ、アフリカ人は一般的にフィジカルが強いので、それが欧州でも認知されている部分はあると思う。だからどんどん引き抜かれる。アフリカからの方が欧州に移籍しやすい現状もあると思う。個人的にはカメルーンの選手の方が上なのかなという気もするが、それはW杯で分かると思う(笑)」

<写真>スカパー!のメディアドバイザーに就任したパトリック・エムボマ氏

(取材・文 西山紘平)

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