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[戦評]引かなかったカタールの戦術がプラスに。そして香川の“落ち着き”がゴール生んだ

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[1.21 アジア杯準々決勝 日本3-2カタール アルガラファ]
田村修一の「視点」

 完全アウェーで、それも一人少ない中でも逆転勝ちできたことはとても評価できる。メンタル面の成長が感じられた試合だった。カタールはモチベーションがすごく高くて、プレッシャーもかけてきて、日本にボールを自由に出させないようにしてきた。日本のパスを封じてセバスチャンら速いストライカーに合わせるサッカーをしてきて、前半なんかは日本は非常に苦しめられたけど、何とか競り勝つことができた。

 戦術的なことでいえば、ひとつ大きかったのは、カタールがリードしても守りに入らなかったこと。メツ監督は「引いて守ると、日本にボールを回される。回されてゴール前まで来られると危ない。それは避けたかった」と言っていたが、アジア特有のゴール前を固めるというサッカーをしてこなかった。こういう戦術を選択したことは間違いではないと思うが、結果的に日本もカウンターを仕掛けることができて、得点のチャンスにつながった。

 そして何より、一番はMF香川真司が良かったことだ。彼はゴール前で落ち着いているし、ドリブルで仕掛けてシュートのアクションまで行ける。パスも出せる。狭いエリアであれだけ落ち着いてプレーできる選手は、日本では香川だけ。そんな本来の良さが発揮された。

 1点目はロングランして飛び出してのものだったが、2点目は彼のPA内での落ち着き、そしてシュートのうまさが出たし、3点目も上手くドリブルで仕掛け、シュートのアクションを見せたことが有効となり、DF伊野波雅彦の決勝ゴールにつながった。まだ100パーセントではないだろうが、彼の良さの半分くらいは発揮された。

 準決勝に向けて不安材料といえば守備面だろう。この日、CB吉田麻也が退場してしまったため、再びDFラインの整備が必要になってくる。正直、彼のデキに関しては今日も1点目、セバスチャンにあっさりフェイントで交わされたり、やってはいけないところでファールを犯して退場するなど、まだまだ経験不足な面を見せてしまった。

 吉田の潜在能力の高さは認めるが、代役になるとみられるDF岩政大樹や伊野波はJリーグでの経験も豊富で、代表戦でも遜色なくやれるはず。人材面ではそんなに心配することはないが、とはいえ守備はもう一度、修正しなくてはいけない。

 特に1失点目のセバスチャンの飛び出しからの得点は、オフサイドトラップの連携ミスもあったし、FKで決められた2点目はGK川島永嗣のミスだったといえる。次はDF内田篤人も帰ってくるだろうから、壁の作り方とかCBのラインコントロールとか、とにかく細部まで確認して準決勝を戦ってほしい。

[写真]この日2得点の香川

(取材 フットボールアナリスト田村修一)

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