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“吉武先生”招いた東京V、弟子・永井監督「2人が目指すサッカーの形は一緒」

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東京ヴェルディ永井秀樹監督

 東京ヴェルディは20日、2020年の新体制発表会を都内のホテルで開催し、永井秀樹監督が新シーズンに向けた決意を述べた。「自分のサッカーが今季はスタートからやれるということで楽しみだし、新しく加入してくれた選手も非常に素晴らしい選手が揃った」(永井監督)。FW大久保嘉人ら頼もしい新戦力も加わり、13年ぶりのJ1昇格へスタートを切った。

 昨年7月に就任した永井監督にとっては2年目のシーズン。大久保、DF高橋祥平といった実力者に加え、指揮官自身がユース監督時代に育て上げたアカデミー出身の5人も新たに昇格を果たした。前年13位という結果ながらサポーターの期待は高く、19日に行われた初の練習試合にはクラブ集計1500人という異例の大観衆が集まった。

「半分は大久保嘉人様のおかげかもしれませんが……(笑)」。長崎の名門・国見高の後輩をジョークまじりに立てた指揮官だったが、貫いてきたスタイルには手応えも感じている様子。「残りの半分は昨季の4か月で選手たちが積み上げたサッカーが、ファン・サポーターに期待を示してくれた賜物」と選手たちの奮闘ぶりに目を細めていた。

 昨季は就任直後からボールポゼッションに力点を置いた戦術に舵を切り、さらにMF森田晃樹やMF山本理仁らユース出身の若手を次々に登用した。「昨年から進化していくために多くのことを積み上げたい。誰がどうとかいう話ではなく、誰が出てもさらに進化したチームになるように努力したい」。今季もそうした取り組みをさらに突き詰め、クオリティを高めていく構えだ。

 指導陣にも一人のキーマンが加わった。2013年にU-17日本代表を率いてU-17W杯ベスト8入りを果たした実績を持つ吉武博文ヘッドコーチだ。2人の出会いは永井監督の中学時代。大分市立明野中で教鞭をとっていたのが吉武氏だった。昨季の東京Vが主に採用していた4-3-3のシステムは吉武氏の影響を色濃く受けている。

吉武博文ヘッドコーチ(写真上段中央)

「吉武ヘッドコーチはなかなか言い慣れないので、吉武先生で行きます。先生は中学時代の恩師というところに始まり、35年くらいの付き合いになるが、ほぼ365日毎日サッカーの研究を重ねてきた。自分がプロになってからも、Jリーグのピッチで日々感じることを必ず先生に話し、その答え合わせを2人でずっとやってきた。先生がU-17日本代表監督となり、W杯で活躍されていた頃には先生が世界で感じる課題などを自分が聞いて、それに対してどうすればいいのかというやり取りを長い年月をかけて重ねてきた」(永井監督)。

 そうした深い間柄だからこそ、今回の“師弟タッグ”には「やっと……」という思いがあるという。この日、永井監督は「本当に近い距離、隣で四六時中、サッカーの研究がスタートできることをありがたく思う。さっそく初日から2人で、どうやったらヴェルディが今やっているサッカーの質が上がるかを日々考えてサッカーしている」と絶大な信頼を語った。

 また「2人が目指すサッカーの形は一緒だし、最終目標も同じであります」という力強い言葉も聞かれた。その目標とは「どうやったら日本人だけでやれるサッカーで世界一になれるか」という命題の探求だ。

「自分自身も現役時代、本当に悔しかったけどW杯や世界には行けなかった。なぜ行けなかったかを自分自身でも考えているし、それを先生とずっと考えていく中で、まずは日本人だからこそできる、日本人しかできないサッカーというものをここヴェルディで、ヴェルディでしかできない、ヴェルディだからできるサッカーを2人で完成させたいと思っている」(永井監督)。

 そうした道のりを突き進んでいく上では、従来どおりの『監督』役にはこだわらない構えだ。東京Vには吉武ヘッドコーチをはじめ、豊富なコーチ陣がいる。指揮官は「今までは監督が全てやったり、ヘッドコーチが全てやったりするのがサッカー界の常識だったかもしれないが、より細かいところにフォーカスし、全体の質を上げる新しいチャレンジを我々ヴェルディがしていきたい」と述べ、職務を分担していく姿勢を明らかにした。

 そうした変化については選手たちも前向きに受け止めている。ユース時代にも永井監督のトレーニングを経験したMF藤田譲瑠チマは「ユースの時は永井さんがメインだったけど、今年は吉武さんからさらに細かいところを要求されている。今までより指示がさらに具体的になった」と指摘。「ポジションのつき方、どこを見てサッカーをするか、いつラインを上げるか、いつマークをするかを教えてもらった」と明かした。

 また、昨季の東京Vのスタイルに惹かれて加入を決めたという大久保も「繋いでゴール前まで素早く行くのは自分にも合っている。最後のゴールのところでどんどん貢献できたら」と手応え。「目標はJ1に早く戻り、そこのチャンピオンに早く戻り、我がクラブが目指すのは世界だと思っている。選手と一枚岩になって全身全霊努力していきたい」(永井監督)。創設51年目の名門は過去のスタイルに固執せず、まずはJ2の舞台で飛躍を目指す。

(取材・文 竹内達也)
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