beacon

「夢じゃない」逆転残留!(千葉vsF東京)

このエントリーをはてなブックマークに追加
[12月6日 Jリーグ第34節 フクダ電子アリーナ]
後半29分まで0-2だった劣勢を跳ね返し、4-2の大逆転で千葉が逆転残留(15位)を決めた。ACL圏内の3位を狙ったFC東京は自分たちのゲームをものにできず、6位でシーズンを終えた。

フクダ電子アリーナにこの日一番の黄色い花が咲いたのは、試合終了後数分してからだ。両チームの選手が挨拶を終える。うなだれるFC東京イレブンが進む先には彼らのホームスタジアムでもある味の素スタジアムの映像が映ったオーロラビジョンがあった。川崎対東京V。後半、東京V最後のCKが防がれ試合終了のホイッスルが吹かれた瞬間、フクアリの黄色がいっせいに花開いた。シーズン最後の挨拶では、千葉代表の三木博計氏が「ほっぺたをつねってください。夢じゃありません」と絶叫した。

試合自体は完全にFC東京のものだった。この試合を勝ち残留に望みをつなげたい千葉の選手の気持ちは痛いほど伝わってきた。ボールに倒れこむような守備。全力疾走。しかし、肝心の攻撃がなかなか組み立てられない。気負っているからか、ショートパスのつなぎがほとんどない。近くにいる選手に預けず、手数を少なくゴール前まで迫ろうとする。すると徐々に選手間の距離が開き、カバーが遅れる。千葉の選手はミドルレンジのパスか、1対1で打開するしかない。動きは鋭いが、相手にとっては非常に読みやすい動きになっていた。
逆にFC東京は局面でショートパスをダイレクトに丹念につなぐ。この対照が、リズムはFC東京のほうがつかんでいると見ている者に思わせた。

そのとおりの展開で試合は進んだし、ゴールも生まれ2-0とリードしたし、「いつでも3点目を取れるという雰囲気があった」(FC東京・城福監督)。4-2千葉勝利、という結果が出た今となってもその印象は変わらない。それでも、千葉が勝ってしまうのがサッカーだ。巻は試合後「技術うんぬんを超越した試合になりましたね」と語った。

試合の流れがはっきり変わったのは後半18分だ。千葉に所属し、千葉に育てられ、そして今季FC東京に移籍して、この試合ではキャプテンマークをつけていた羽生が下がった。同じタイミングで千葉は今季柏から移籍し、数々のインパクトあるゴールを決めてきた谷澤が深井に変わって入る。城福FC東京監督は「前半からハイペースで運動量が多かった。交代直前までいいデキだったが足をつっていた」と交代理由を語れば、ミラー千葉監督は「2失点後、正しい動きができる選手を入れた」と理由を説明した。
千葉のちぐはぐな展開は変わらなかったが、何かが劇的に動いた。これまで読まれ、カットされていたパスが通るように。29分、これも交代出場の新居が意地の1点を返す。そして32分、谷澤が巻のポストプレーにあわせ同点ゴール。このゴールの直前、DFで倒された谷澤は謝りにきたFC東京・赤嶺をつっぱねた。一触即発の雰囲気だったが、谷澤本人のプレーは冷静だった。気持ちは熱くともプレーは冷静に。上記のミラー監督の狙いを完全に理解していた。

同点に追いつかれたFC東京は完全に後手に回り、続く35分にPKを献上、完全にバランスを崩した後半40分にはまたも谷澤に一人でカウンターを決められてしまう。わずか11分で4ゴール。フクアリに奇跡が起きた。

結局、磐田も敗戦し、最後の最後でJ1残留が決定。FC東京は01年にも東京Vに敗れ、相手の残留をアシストした。過去C大阪の優勝をロスタイムのゴールで消したりと大物食いの印象が強いが、順位が下のクラブには取りこぼしやすい顔が最後にまた出たかっこうになった。

歓喜の黄色がはねるなか、最後までゴール裏に残っていたFC東京サポーターたちは何を見て、何を感じていたのだろう。

(取材・文/伊藤亮)

TOP