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湘南が11年ぶりJ1復帰へ前進、劇弾の坂本「狙っていた」

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[11.21 J2第49節 甲府2-3湘南 小瀬]

 互いに死力を振り絞った激闘は、最後の最後で湘南ベルマーレに勝利の女神がほほ笑んだ。2-2で迎えた後半ロスタイム、DFジャーンのヘディングがクロスバーに当たった跳ね返りをMF坂本紘司が拾い、冷静に左足で押し込んだ。

 1万6844人の観衆で埋まったスタジアムは静まり返り、湘南サポーターが占拠したゴール裏の一部だけが熱狂に包まれた。まさに天国と地獄。歓喜に沸くゴール裏に向かって坂本ら湘南の選手は猛ダッシュし、サポーターとともに喜びを分かち合った。

 「なんとなく自分のところに転がってくるような気がしていた。向こうはイケイケで、2列目から抜け出したとき、付いてきてなかった。おいしいところを狙っていた」。冷静さを失っていなかった30歳のベテランが死闘に終止符を打った。GK野澤洋輔は「J1に上がりたいという気持ちが一番強い男に最後にこぼれてきた」と声を弾ませた。

 勝ち点91で並ぶ3位・4位直接対決。勝てば昇格に大きく前進し、負ければ昇格が絶望となる天王山だった。「どちらに転んでいてもおかしくない試合だったのは間違いない。ここで敗者の弁を述べていてもおかしくなかった」。試合後の記者会見に臨んだ反町康治監督は興奮冷めやらぬ様子で話した。「最後の笛が鳴るまで湘南のサッカーをしようと話していた。それが奏功したと思う」と胸を張った。

 11年ぶりのJ1復帰が、いよいよ近づいてきた。次節29日の草津戦に勝ち、甲府が28日の岡山戦で引き分け以下に終わるか、草津に引き分けでも甲府が岡山に敗れれば、最終節を残して3位以内が確定する。

 しかし、まだ何も決まったわけではない。試合直後は歓喜の渦に包まれた湘南の選手たちも、ミックスゾーンに姿を見せたときにはすでに気持ちを切り替えていた。MF田村雄三は「ダウンしているときには“あと2つ勝たないと意味ないぞ”という声が出ていた。うちは劇的な勝ち方をしたあとに弱い。そういう教訓があるから、みんなから声が出ていたと思う」と引き締めた。

 「いよいよJ1という気持ちは出てきたか?」と問われた反町監督は「ノーコメント。ここまでやってきて、次の試合が特別になるわけではない。いい試合をして、勝ち点3を取ることだけを考えてやりたい」と慎重に語った。

 「一番怖いのはメディアに昇格が決まったかのように報道されて、選手の気が抜けること。“湘南はまだまだ力不足で弱小チームだ”と書いておいてください」と冗談交じりに話していた。

<写真>決勝点を決めて喜ぶ湘南MF坂本(8番)
(取材・文 西山紘平)

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