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「自分にも意地がある」、高原が古巣・浦和から魂のダイビングヘッド

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[6.18 J1第16節 浦和1-3清水 埼玉]

 男としての意地だった。埼玉スタジアムでゴールを決め、勝利を挙げることだけを考えていた。清水エスパルスのFW高原直泰が豪快なダイビングヘッドで古巣の息の根を止めた。

「今日の試合に限っては、絶対に点を取らなきゃいけないと思っていた。勝利をここで、埼スタで成し遂げないといけないという気持ちが強かった。埼玉スタジアムで点を取って、なおかつ勝たないと。そうしないと自分が前に進めない。そういう気持ちだった」

 1-0の後半19分、FW大前元気が右サイドから上げたアーリークロスに体を投げ出した。2戦連発の今季5得点目。結果的にチームを勝利に導く決勝点には、ただの1点以上の意味があった。

 08年1月、フランクフルト(ドイツ)から浦和に移籍し、約6年ぶりのJリーグ復帰を果たした高原だが、浦和時代は思うような結果を残せず、苦しい時期を過ごした。08年は27試合6得点、09年は32試合4得点。昨季は完全にフィンケ前監督の構想外となり、南アフリカW杯によるリーグ戦の中断期間にチームが行った海外キャンプにも帯同を認められなかった。結局、昨年7月に水原三星(韓国)に移籍。今季、清水へ加入し、半年ぶりにJの舞台に戻ってきた。

「1年前、ここに一人だけ取り残されて練習していた。それをちょうど思い出して、ここでやってやらないとと思っていた」。見返したい。不遇をかこった過去に“惜別”したい。そんな思いが高原のエネルギーになった。

 報道陣から「ブーイングを力に変えた?」と聞かれると、「正直、ブーイングされる覚えはないんですけどね。どちらかというと、僕は追い出された方ですから」と言った。「自分にも意地があるし、そういうのを見せられてよかった」。魂のダイビングヘッドがチームを今季初の連勝に導いた。

「まだまだチームとして完成されているわけじゃないけど、局面局面でチャンスをつくれるようになってきているし、それをゴールにつなげられるようにもなっている。若いチームだし、去年から大きく選手も入れ替わっている。その中で勝っていくのは大変なこと。今はいい結果が出ているし、これを続けていきたい」

 チームはこれで5試合負けなし(3勝2分)。順位もひとケタの9位にまで上がった。昨オフに主力が大量に流出。シーズン前は苦戦を予想され、開幕戦では昇格組の柏に0-3の完敗を喫した。厳しい船出となった新生・清水だが、一戦ごとにチーム力を高めているのは間違いない。その先陣を走る32歳のストライカー。古巣に“リベンジ”を果たした高原が、若きチームをこれからも引っ張っていく。

[写真]古巣相手に豪快なダイビングヘッドを叩き込んだFW高原直泰

(取材・文 西山紘平)

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