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田中が5戦ぶり先発で2発&10得点、「迷惑をかけたので勝利に導きたかった」

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[8.28 J1第24節 柏3-2川崎F 柏]

 復活を印象づける2ゴールだった。赤丸急上昇中の若きストライカーが、大きな仕事をやってのけた。柏レイソルは川崎Fに後半の立ち上がりに一気に2点のビハインドを許したが、3-2の逆転勝ちを成し遂げた。導いたのは8月のA代表候補キャンプに選出された期待のレフティーFW田中順也だった。

「ボールが完璧だった。トラップもしやすかったし、落ち着いて(足を)振るだけでした」。1-2の後半28分、MF茨田陽生のロングフィードに反応した。PA内左に快足を活かして走り込み、巧みなトラップから左足を一閃。2-2と同点に導くゴールを決めた。6月25日の甲府戦以来となる11試合ぶりの今季9得点目。これで自身も、そしてチームも波にのると、一気に逆転のゴールを奪った。

「左足で1点目を決めていたので、それをフェイントにして、切り替えして右足で打ちました」。5分後の後半33分、左サイドで途中出場のMF澤昌克が粘ってDF橋本和につなぎ、PA内左にスルーパス。これに田中が走り込み、切り返しから右足を一閃。二桁の大台に乗せる10得点目を決め、3-2と逆転に導いた。これが決勝弾となった。

「最近、チームに凄く迷惑をかけていたので、何としても勝利に導きたいと思っていた。ホームの雰囲気が良くて、この声援があるから決められました」

 溜まっていたうっ憤、そして懺悔の思いをぶつける2ゴールだった。今季からFW北嶋秀朗の相棒として完全にレギュラーを獲得。ゴールを量産し、6月25日の甲府戦で2得点して通算8得点と得点ランク上位に付けた。しかし、そこからピタリと止まった。8月上旬のA代表候補合宿に呼ばれたが、柏に合流後すぐに左足首を負傷。6日の横浜FM戦から3試合を欠場し、24日のG大阪に途中出場で戦列復帰。この日、ようやく5試合ぶりの先発を果たした。

 完全復活の狼煙を上げる2ゴールといえるが、本人の喜びは控えめだった。「2得点できたけど、前半の調子の悪さが課題です。うまく試合に入れなかった。プレーの質が悪かった。まだまだコンディション的に体が切れていなかった」と反省ばかりだった。確かに、前半は川崎F守備陣のプレッシャーに苦しみ、怪我で離脱している北嶋のようにボールを収めることが出来なかった。北嶋を崇拝しているだけに、ゴール以外でも質の高いプレーを目指している。北嶋は長期離脱中のため、自身が代わりの“柱”になるべく、自分に厳しくなっている。

 いまだ連敗がなく、4位をキープした柏。若きストライカーが、コンディションが万全ではない中で会心の2ゴールというのは、今後の活躍に期待が膨らむ。田中は「引き続き、ゴールを取れるようにしたい。今後は優勝を意識して取り組むことが大切なので、1戦1戦しっかりと戦いたい」と『優勝』の二文字を口にした。北嶋が不在で、守備面も最近の4試合で12失点と不安要素がある中、田中の復活は頼もしい限りだ。

(取材・文 近藤安弘)

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