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ペトロヴィッチ新監督、浦和再生へまずは「土台作り」

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 浦和レッズの再建を託されて新監督に就任したペトロヴィッチ監督が17日、埼玉スタジアム2002で就任記者会見を行った。

 昨シーズンのリーグ戦で15位に低迷し、最終節でJ1残留決定。入場者数も4年連続で減少した。橋本光夫社長が「(昨年は)浦和にとって誇りあるクラブ、強いチームという大きな歩みを停滞させてしまったと考えている。クラブの信任回復と合わせてチームの再生、再建に取り組んでいく」という2012年の浦和の指揮を執ることになったペトロヴィッチ監督。新指揮官は「浦和というチームが魅力あるサッカーをするということは我々に科せられた義務である。なぜなら浦和は最も日本で観客の多いクラブ。浦和は魅力あるサッカーをすること。それは我々がやらないといけない」と宣言した。

 ペトロヴィッチ監督にとって浦和は、日本での憧れのクラブだった。来日した2006年に浦和が初のJ1制覇。その優勝シーンをテレビで見たというペトロヴィッチ監督は「日本でこれほどのことが起きるのか。バイエルン、R・マドリーが優勝したときのような雰囲気を味わうことができた。(自分自身の)夢として『いつか浦和の監督になる』と思った」と振り返る。その憧れのクラブの指揮を自身が執り、再生元年とする2012年。ペトロヴィッチ監督が繰り返し口にしたのは「土台作り」だ。

「もし我々がいい家を建てたいならば土台となるものは大切。いい土台が出来れば1階建ての家でも、2階建ての家でも3階建ての家を建てても大丈夫。土台がしっかりしていれば上に高いものを積み上げていける。土台がしっかりしていなければ高く積み上げたときにそれは崩れてしまう。だから我々はその土台をしっかりとつくっていく。土台というチームをつくっていく。そして一つひとつ積み上げていきたい」。ただそれに時間をかけ過ぎるということはしない。浦和が勝利を求められる、また勝たなければならないチームであることも理解している。その中で選手にインテリジェンスを求め、過去の名前にとらわれない選手起用をし、攻撃的な魅力あるサッカーを展開していく。

 2006年6月から計6シーズンに渡って広島を指揮。09年にJ1で4位に入り、ACLへ導いているほか、天皇杯とナビスコ杯で決勝進出も経験してきた。MF柏木陽介、DF槙野智章、FW李忠成を育てあげてきた手腕に対しても期待が大きい。本人も自覚していたように近年浦和を指揮したフォルカー・フィンケ、ゼリコ・ペトロビッチの両監督とは違い、日本で6年間指揮を執ってきたアドバンテージがある。ペトロヴィッチ監督はまず目指すこととして「選手、クラブで働いている人間、そしてファンの皆さんは厳しい時間を過ごしてきたと思う。私がまずやらなければならないことは選手がトレーニングする中でポジティブにできる雰囲気をつくっていきたい。このクラブで働いている方にポジティブなものをもってもらいたい。そして応援してくれるファンの方々にポジティブな雰囲気をもってほしい」、そして「しっかりしたチームをつくること。チームとしていかにまとまって戦えるか、これをつくっていけるか。どの選手もまず第一にチームのためにプレーして欲しい」と二つの目標を掲げた。

 低迷してきた浦和を外から見てきた新指揮官は「浦和には個人の能力が高い選手がいる。だが私が言ったことと逆の(フォア・ザ・チームではない)選手がいたのではないか。まずはチーム。その意識を持ってやってもらいたい」と指摘。この能力の高い選手達をいかに戦術のなかに組み込むことができるかを課題に挙げた。山道守彦強化部長が「もう一度輝くためにはレッズを変えなきゃいけないと思った。実績と経験があって戦術的、戦略的に引き出しがあってクラブを安定できる方に監督を任せる、一流の監督に任せるしか変われないと思った。(ペトロヴィッチ)監督とお話してレッズに対してのリスペクト、サッカーに対する考え方、情熱を聞いたとき、そして今もポジティブにやろう、チームで戦おうという言葉を聴いてお任せできると確信しているし、いい仕事をともにできると確信している」と厚い信頼を寄せる指揮官とともに、浦和は再生への土台作りを進める。

(取材・文 吉田太郎)

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