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『準ホーム』で決勝点の清水・高木「嬉しさがこみあげた」

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[4.28 J1第8節 F東京0-1清水 味スタ]

「初めてプロとしてプレーしたピッチ。そこで決められたのは嬉しい」。決勝点を挙げた清水エスパルスのFW高木俊幸は、試合終了のホイッスルが鳴ると同時に、大粒の涙を流し、喜びを爆発させた。

 2シーズン前、東京ヴェルディから清水スパルス}}に移籍した高木にとって、待ちわびていた一戦だった。かつてのホームスタジアムでプレーできるからだ。しかし、FC東京との一戦、先発メンバーに自分の名前はなく、悔しさを募らせていた。

 ベンチで出番を待つ高木に声がかかったのは、後半22分。同11分にはFWジミー・フランサが退場となり、数的不利の状況に陥っていた。ピッチに立つと、その6分後には、MFアレックスも2度目の警告を受けて退場となる。2人少ない状況でも、清水の2トップは勝ち点3をあきらめていなかった。

「1チャンスを狙って戦うしかない」と切り替えたFW高原直泰が、後半32分、DF太田宏介のバックパスをカットする。同時に、自陣にいた高木が前線に向かって走り出した。「少ないチャンスで決めてやろうと思っていたので。そのチャンスを狙っていました」と話す高木は、ボールを前線に運んで行く高原の動きを確認した。「最初はファーサイドでボールを受けようと思ったんです。でも、タカ(高原直泰)さんの体勢を見て、これはクロスを上げることはできないなと思って、中に入るように切り替えたんです。そうしたら、タカさんからイメージ通りのボールが入ってきたので、あとはトラップだけだなと。トラップもうまくいったので、最後は思い切り振り抜きました」と振り返る。最初にファーサイドに動いたことで、若干、マークに付くはずのDFチャン・ヒョンスとの距離ができたことも奏功した。PA内で右足を振り抜くと、ボールは右上隅に決まった。

「点が入った瞬間は何も覚えていないですね。うれしさが体中から出ていました」と20歳のストライカーは、喜びを語る。「今日、スタメンではなかったことも、アウェーで点が取れないと言われたことも、そして自分にとって慣れ親しんだピッチで点を取れたことも、全部がうれしかった」と振り返り、「でも、ここは僕にとって個人的にアウェーではないから、アウェーで点を取れたことにはならないかな」と笑顔を見せた。

 高木は今季8試合に出場し、チーム最多の4得点を挙げている。それでも「一番大事なのはゴールではなくてチームが勝つこと」と言う高木は、ここから再び勝利を重ねたいと話す。「勝ち方も劇的でしたし、大きな勝利だったと思います。自分も良い感じでゴールを取れているし、このままの流れでいきたい。次はホームゲーム(対鹿島)なので、勝つだけです」と語った。久しぶりの『準ホーム』でのプレーで、自信を膨らませたストライカーが、チームをけん引していく。
(取材・文 河合拓)

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