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F東京勝利の立役者は20年前のJ開幕戦をスタンド観戦した石川

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[5.15 ナビスコ杯第6節 F東京2-1新潟 国立]

 さまざまな思いが胸の中を去来した。0-0で迎えた後半6分、FC東京に先制ゴールをもたらしたのはMF石川直宏。32歳のベテランは「最高のゴールだった」と感無量の表情を浮かべた。

 鮮やかという言葉がぴったりのゴールだった。左サイドからのスローインをMF東慶悟が受けて持ち上がり、中央へマイナスのパス。ペナルティーエリアぎりぎりの位置でフリーになっていたのが石川だ。右足を思い切りよく振り抜くと、ボールは勢いよくゴールネットを揺らした。

「ゴールのときは自分のところに来いと思っていた。特別なゴール。もう一度打てと言われても打てない」

 20年前の5月15日。神奈川県横須賀市に住んでいた当時12歳(小6)の石川は、ヴェルディ川崎対横浜マリノスのプラチナチケットを握りしめ、東京の国立競技場に向かった。

「20年前の今日は、夢が目標に変わった日。人生ががらっと変わった瞬間だった。プレーの一つひとつをハッキリ覚えてはいないけど、ゴールシーンも、(開幕セレモニーの)演出も幼い頃の自分にとって特別なものだった」

 あれから20年。今シーズンはリーグ戦の先発出場はなく(7試合に途中出場)、スタメンとして出場するこの日は自身のアピールの場としても重要な試合となった。

「子供の頃に衝撃を受けた場所で、今日、見に来てくれた子供たちに、今度は自分が衝撃を与えたかった。何か記憶に残るチャレンジをしたいと思ってプレーした」。その思いが先制ゴールにつながった。

 チームはグループリーグ2勝目。鹿島とC大阪が勝って決勝トーナメント進出を決めたため、敗退が決まったが、勝利にはやはり意味がある。

「自分らしいゴールだった。自分にとっても必要なゴールだったし、チームにとっても勝ったのは良かった。30歳になると、意地でもここ(ピッチ)から離れたくないと思いますね」

 情熱をプレーに投影できるのはベテランの味。「Jリーグの日」である5月15日に石川が見せたプレーは、スタンドに集まった多くの子供たちの胸に響いたはずだ。

(取材・文 矢内由美子)

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