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[全日本ユース(U-15)選手権]0-2でも“ブレなかった”大宮JYが大逆転で決勝進出!

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[12.27 全日本ユース(U-15)選手権 大宮ジュニアユース4-2新潟ジュニアユース J-GREEN堺]

 高円宮杯第24回全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会は27日、J-GREEN堺メインフィールド(大阪)で準決勝を行い、第1試合では大宮アルディージャジュニアユース(関東1、埼玉)が延長戦の末、アルビレックス新潟ジュニアユース(北信越1、新潟)に4-2で逆転勝ち。大宮は29日、クラブのアカデミー史上初となる日本一を懸けてガンバ大阪ジュニアユース(関西1、大阪)と決勝(J-GREEN堺)を戦う。

 大宮が2点を先取されながらも残り6分から連続ゴールで同点に追いつき、延長戦の2発で大逆転勝利を飾った。主将のCB古谷優気は「0-2になった時は正直焦ったんですけど、ここで自分たちが焦ってゲームを崩すと、点も、決められるチャンスをつくることもできないと思った。今まで通りポゼッションをしてやれば、追いつけると思ったので、自分たちのプレーができて良かったです」。先行されても“ブレなかった”大宮が、自分たちらしいポゼッションスタイルのサッカーを貫いて初Vに王手を懸けた。

 試合は前半からU-16日本代表候補の10番・黒川淳史松崎快の両MFを中心としたパスワークでリズムをつくり、セカンドボールも支配した大宮が主導権を握る。だが、16分に松崎がPAへ潜り込んで放った左足シュートをはじめ、18分に黒川が放った左足のドリブルシュート、そして26分にMF小柏剛がDFを振りきって撃った左足シュートがいずれもゴールマウスに阻まれてしまう。

 大半の時間帯でボールを支配して相手を崩す場面もつくりながら決定機を活かせない大宮に対し、新潟はカウンターからエースFW鎌田啓義の鋭いドリブルなどで少ないチャンスをものにしようとする。前半24分には鎌田のインターセプトからFW堀航輝が右足を振りぬき、後半19分にはMF加藤潤のFKのこぼれ球に反応した鎌田が決定的な左足シュート。完全にボールを支配されながらも中に入ってくる選手・ボールへ厳しい対応を見せる新潟は、好守からスピードのある攻撃で大宮守備陣を脅かしていった。

 先にスコアを動かしたのはその新潟だった。後半25分、敵陣でインターセプトすると、10番FW高橋怜大が相手の逆を突いてPAの鎌田をラストパス。鎌田の左足シュートはポストを叩いたが、跳ね返りをMF五嶋悠哉が冷静に右足で流し込み、リードを奪った。反撃を試みる大宮の攻撃を跳ね返した新潟は31分にもカウンターから鎌田がポスト直撃の右足シュート。そして32分には高橋からのパスをPAで受けた鎌田が強引に中央突破し、GKとの1対1から左足シュートをゴールへ流し込む。

 残り8分で0-2。追い詰められた大宮だったが、ここから大逆転劇を演じる。34分、右サイドを縦にえぐったFW立石爽志の折り返しを黒川が右足で流し込んで1点差。さらに36分には古谷が自陣FKからPA方向へライナー性のボールを入れると、対応したGKが処理を誤り、ミスを狙って距離を詰めていた立石の前に転がる。これを立石が右足でゴールへ押し込んで同点に追いついた。

 わずか3分間での同点劇。持ち味のショートパスでの崩しに立石や古谷の個の突破を加えて追いつき、完全に息を吹き返した大宮は2-2で突入した延長前半7分に鮮やかなパスワークから決勝点を奪う。左サイドの立石が逆サイドの右SB高橋秀斗へ展開すると、右中間でパスを受けた黒川がPAの松崎へパスを通す。さらに松崎が右後方から走りこんできたMF鈴木大貴へスルーパスを送ると、背番号4は角度のない位置から右足シュートをゴールへ流し込んだ。大宮らしい、精度の高いパスと連動した人の動きから奪った決勝ゴール。鈴木は「チームがやりたいことができた得点だと思うし、崩しから落ち着いてゴールを決められたのは良かった」と胸を張った。

 この試合初めて追う展開となった新潟は延長後半7分、右オープンスペースを突いた五嶋のラストパスにフリーでエース鎌田が走りこんだがヒットせずにボールはゴール左外へ。さらに8分には高橋が決定的な左足シュートを放ったが、大宮GK加藤有輝の好反応に阻まれて追いつくことができない。逆に9分、立石のループシュートでダメ押した大宮が4-2で決勝進出を決めた。

 今大会、U-16日本代表FW川田拳登とMF藤沼拓夢の主力2人がケガのため不在の大宮は、フィールドプレーヤー全員を投入する総力戦の末勝利。この試合でも2年生の小柏らが好プレーを見せるなど全員で穴を補って白星を重ねてきている。大宮の伊藤彰監督は「タイトルを目指してやってきて、ラストひとつというところまで来た。夏(クラブユース選手権関東予選敗退)は悔しい思いをして一回り大きくなって冬にこういう戦いができている。(けが人が不在だが)1年間育成というか、成長できている証として人がいない中でも戦えているのは良かったと思う」と逞しく成長したチームに目を細めていた。

 今春のJFA プレミアカップ2012 supported by NIKE(5月)ではクラブのアカデミー史上初の決勝進出(準優勝)。歴史を塗り変えたイレブンは再び全国決勝の舞台に勝ち上がり、春の決勝で苦杯を喫したG大阪と再戦する。鈴木は「借りを返せるようにしたい」と意気込み、古谷は「自分たちらしくすべてを出していきたい」と誓った。この日、0-2になっても慌てずに自分たちのサッカーで勝ち切った大宮が、3冠を目指す王者・G大阪に雪辱して今度こそ頂点へ上り詰める。

(取材・文 吉田太郎)

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