beacon

痛恨OGも埋めて余りある好守。埼玉県CB田中は決勝でチームを助けて「絶対に勝ちます」

このエントリーをはてなブックマークに追加

好守で決勝進出に貢献した埼玉県CB田中颯太(左)。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[10.3 国体少年男子準決勝 千葉県 1-3 埼玉県 三国運動公園陸上競技場]

 試合後、後輩含めてチームメートからはオウンゴールしたことについて笑顔で冷やかされていた。後半30分に待望の先制点を奪った直後、相手の右クロスを必死にクリアしようとした埼玉県CB田中颯太(大宮ユース、2年)の頭をかすめてコースが変化。フワリと浮いたボールは、そのまま逆サイドのゴールネットに吸い込まれた。

 このシーンについて田中は悔しさを滲ませる。そして、責めることなく明るく声を掛けてくるチームメートに対しては苦笑いを見せていた。「自分がオウンゴールしてしまったのは仕方ない。その後、村上(陽介)とか(レイ・)ジョーンズが『大丈夫だよ、颯太』と言ってくれた。個人としてもまだあると思いながらプレーしました。個人的には残っている(モヤモヤした)ものがあるんですけれどもチームが勝てたので嬉しいです」。

 もちろん本人は納得していないだろうが、大野恭平監督(大宮南高)をはじめとしたスタッフ、そしてチームメートたちも彼の存在の大きさを理解している。本来は右足の精度を活かしたプレーを得意とする右SB。今大会ではCBとして起用されて17年ぶりとなる決勝進出の立て役者の一人となっている。

 身長171cmで、特別な強さを持っている訳ではない。それでも「小さいCBなので頭を使いながらプレーすることを考えながらやっています」というDFは、相手の動きの変化を見逃さずにより速く動いてその前に入り、ボール奪取。大柄な相手に対してもしつこく、粘り強い対応を続けてシュートを打たせない。そして1対1の強さ、ボールへの執着心も表現。この日はGKジョーンズ・レイ(大宮ユース、1年)のファインセーブに助けられた部分もあったが、千葉県の強力2トップに得点させなかったことが埼玉県を決勝へ近づけた。

 大宮ユースの寮でも同部屋というCB村上陽介(大宮ユース、2年)とのコンビは良好。右SB山田結斗(大宮ユース、1年)、左SB佐藤優斗(浦和ユース、1年)を含めて埼玉県の4バックは1回戦からの4連戦でフル出場を続けているが、疲れを感じさせないようなプレーで後方を支え、強みである攻撃に繋げている。

「一個上なのでチームが苦しいときに助けられるように頑張っています」という田中にとって準決勝は満足の行く結果ではない。だからこそ、決勝では「絶対に勝ちます」。悔しさも込めて戦い、チームを助けるプレーを続けて、次は最高の笑顔で優勝を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
●第73回国民体育大会「福井しあわせ元気国体」特集

TOP