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台風21号で家が水浸しになった選手も…“全体で戦った”大体大が延長戦で駒大下してベスト4

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大阪体育大がベスト4に勝ち上がった

[9.5 第42回総理大臣杯準々決勝 大阪体育大 3-2 駒澤大 キンチョウスタジアム]

 夏の大学日本一を決める第42回総理大臣杯は5日に準々決勝を実施。キンチョウスタジアムで行われた大阪体育大(関西2)と駒澤大(関東3)の一戦は延長戦の末、大体大が3-2で勝利した。

「内容としては最低。相手にやりたいことをやられた試合で、自分たちがやりたかったことはまったくできていない」と松尾元太監督が口にしたように大体大としては満足の行く試合ではなかったかもしれないが、それでも確実に白星をもぎ取る強さは本物だ。頂点への期待を抱かせるゲームだった。

 試合開始と共に自陣からロングボールを徹底して入れてきた駒澤大に主導権を握られた。しかし初戦となった2回戦の福岡大(九州1)戦で同じタイプの攻撃は経験済み。DF田中駿汰(3年=履正社高)が「福大戦で、(菊池)流帆さんが競って、僕がカバーという役割分担が上手く行ったので、今日も同じように行こうと思っていた」と明かしたように最終ラインできっちり対応し、決定機まで持ち込ませない。

 縦横無尽な動きからサイドを仕掛けたMF中原輝(4年=ルーテル学院高)に手を焼く場面も見られたが、前半11分には中央をドリブルで抜け出したFW林大地(3年=履正社高)が右サイドにパスを展開。ボールを受けたMF西田恵(3年=関西大北陽高)が対面のマーカーをかわしてゴール前に折り返すと、最後はFWアフラギ・マハディ(3年=清明学院高)が合わせて、大体大が先制した。同31分には、中原のFKからFW高橋潤哉(4年=山形ユース)にヘディングシュートを決められ、同点に追いつかれるが、同39分、右CKの流れから西田がゴールを奪い、1点リードで前半を終えた。

 だが試合の折り返しを迎えてからは、「前半は良かったけど、後半は守備の時間が長くなってしまった」と田中が悔んだように、我慢の時間が続いた。駒澤大が前半以上に徹底してきたロングボールと左右から繰り出すDF真下瑞都(1年=矢板中央高)のロングスローを跳ね返すので精一杯となり、押し返すことができなかったためだ。それでも、終了間際にFW古城優(4年=堺西高)がクロスバーをかすめる一撃を放ったが、後半アディショナルタイム3分に途中出場のFW矢崎一輝(2年=駒澤大高)が入れたクロスがシュートブロックに当たって同点に追いつかれると、そのまま延長戦に突入した。

 延長戦に入ってからはCKから押し込まれる時間帯が続く。盛り返したい大体大は、「閃きの起用。星稜コンビで2対1を作って、右サイドからチャンスを作って欲しかった」(松尾監督)と延長後半途中にDF木出雄斗(2年)とFW大田賢生(4年)を投入。PK戦を覚悟しながら、攻撃の活性化を狙った策が見事に的中し、カウンターから相手エリアに切り込むと、延長後半8分には相手DFが競ったこぼれ球が左サイドのFW浅野雄也(4年=四日市四郷高)の下に入った。浅野が素早く放ったシュートはGKの足に阻まれたが、こぼれ球をMF堀内颯人(4年=奈良育英高)が押し込み、勝負あり。采配が見事に当たった松尾監督は、「途中から出た選手がわずかな時間で結果を残すプレーをしてくれた」と笑顔を見せた。

 猛威を振るった台風21号の影響を考慮し、前日は練習を午前中に切り上げたが、停電のため気が休まらなかった選手や、家の窓ガラスが割れ、水浸しになった選手も少なくなかった。この日も電車が動かなかったため、応援に来るかどうかは選手の判断に委ねられた。決して人数は多くなかったが、最後までスタンドから送り続けた声援はピッチに立つ選手の力になり、松尾監督はこう口にする。「後半は苦しかったと思うマハディたちにハッパをかけてくれた。そうした(奮い立たせる)声は僕らでは届かない。全体で戦った結果だと思う」。

 苦しみながらも勝ち抜く力やチームとしての一体感は例年以上で、頂点に立つ自信もある。松尾監督が「ここで終わるのではなく決勝まで勝ち上がって、しっかり日本一という結果を残したい」と意気込んだように、平成最後の王者として総理大臣杯に名を刻むつもりだ。

(取材・文 森田将義)
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