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【JFA・キリン スマイルフィールド コーチインタビュー】福田正博「行くと新たな発見もあるし、自分自身の成長にも繋がる」

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 日本サッカー協会とキリンが東日本大震災からの復興応援として活動している「JFA・キリン スマイルフィールド」。子どもたちにサッカーを通じて笑顔になってもらいたいという想いから、岩手・宮城・福島の3県の小学校を対象にサッカー教室を各地で開催している。

 東日本大震災から5年経ったいま、「JFA・キリン スマイルフィールド」でコーチを勤める元日本代表の名手たちに、復興への想いを聞くシリーズ企画。3回目はJリーグ初の日本人得点王で、「JFA・キリン スマイルフィールド」に24回参加している福田正博氏の登場だ。

癒される子どもたちの笑顔
大切な子供たちへの接し方


――震災後に立ち上がった「JFA・キリン スマイルフィールド」。参加した感想を教えてください。
「実際に行ってみると、そんなに言うほど、こっちが気にするほどのことはないなと感じました。とにかく子ども達が明るい。よくこういう話をすると必ずみんな口を揃えて言うのは、僕らが笑顔にさせてあげたりとか、力を与えてあげようとかって思うんだけど、逆に自分たちが貰うみたいな。どっちが励まされてるんだかよく分からないっていうか。励ますっていう事が正しいかどうかちょっと分からないけど、仕事なのに行くのが楽しくなってくるというかね」

――具体的に何か印象に残っている出来事はありますか?
「小さな学校に行ったりするんですよ。全校生徒が2、30人っていうところに。仙台の駅から3時間くらいかけて行ったりとか。そういうところに行くと、本当に純粋だし、僕が行ったことだけで非常に喜んでくれたりするわけですよ。こんな幸せって実はないですよね。来て良かったなと思いますよ」

――今の子ども達との接し方で難しいことは無いですか。
「無いですよ。今の子はとかってよく言うじゃないですか。それ多分、自分たちの子どもたちに対しての接し方に大きな問題があると思うんですよ。まずは自分たちが子どもたちの目線に降りてあげるっていう事が重要。まずそれがないと、教えてやろうなんて瞬間にもうダメですから。やっぱり一緒になって遊んであげる。一番最初にキリン スマイルフィールドに行った時に、ちょうど午前も午後もあって、昼休みがあったんですけど、僕一緒に縄跳びやりましたからね(笑)。だからそういう一緒になって遊んであげるっていうのは非常に良いことだと思うし、そうすることで子どもって距離がぐっと縮まりますから。いかに自分がそこに降りて行ってあげられるかっていうのが重要なんじゃないですかね」

重要な継続性
まだまだ未開拓地は多い


――「JFA・キリン スマイルフィールド」を継続させていく上では、色んな選手たちはもっと参加していく事が大事になってくるのかなと思います。
「一番良いのは、現役選手が行くことですね。現役選手でも代表選手が行けるのであれば行ってほしいなと思います。間違いなく子どもたちの反応って一番良いと思いますから。それは率先して行って頂ければなと思いますね。ただ、時間の問題とかいろんな問題があって行けないということになれば、それ以外のOBの方だったり、もしくは日本でやってる現役の選手だったり、そういう人たちが積極的に参加していくっていうのは重要なことだとは思いますね。行くと新たな発見もあるし、自分自身の成長にも繋がる。選手にとって本当にプラスになることばかりだと思うので、是非とも行ってもらいたいなと思います」

――震災が起きて5年が経過しました。記憶が薄れるのは仕方がないですが、風化は怖いですね。
「正直なところ、僕はそこまで被災しているところには行っていないし、そこまで被災しているところはなかなか受け入れる準備ができていないっていうところもあるんですよ。だから子どもは本当は笑っているけど、心の中で大きな傷を負っているのは事実だと思うので。ただ、そこまでは残念なことに僕らは入ってはいけないものだと思っています。そんな入れるなんていう風なおごりも無いです。だけど何か寄り添って、同じ痛みを共有してあげたりとかそういう事っていうのはできるのかなと思うんですよね。何かを与えたいとか伝えたいとかっていうことじゃなくて、一緒になって同じ目線で、同じ事に対して喜んだり悲しんだりっていう事をしていくことが、非常に重要なことだと思います」

――客観的にこの「JFA・キリン スマイルフィールド」を見た時に、キリンに対して評価できるポイントっていうのを教えてください。
「キリンさんが凄いなと思うのは、なかなか教育の現場で企業が入っていくことって実は難しい事だと思うんですね。それは間違いないと思うんですけど、それだけにあんまりキリンさんがやってるというのを大々的にやらないことがすごい。物凄い支援をしてるじゃないですか。サポート、応援をしてるじゃないですか。もっと宣伝しても良いんじゃないかなって思うぐらいです。そのぐらいの応援やサポートをしていると思うんですけど、まったくそういう事は全面的には前には出てこない。その辺は凄いなと思いますね。だから気利かせて言うんですよ、子どもたちの前でね。それはちゃんと言いますよ。ビブスをあげるんですけど、ビブスにはキリンって入ってるんですよ。これ、ゾウって書いてないからねって――。これキリンだからねって一応言うんです(笑)。陰から応援しますよっていうようなスタンスがスクール全体からはっきり分かる感じなのが凄いなと思います」


(取材・文 児玉幸洋)
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