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地元で雄姿を見せられなかった悔しさ晴らす! ブラインドサッカー日本代表・寺西の”ハジメの一歩”

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力強いドリブルを見せる寺西一(右)

ブラインドサッカー日本代表が17日、千葉県内で合宿を開始した。4日のアルゼンチン代表戦で1-3で敗れた後、はじめてとなる同合宿で、FP寺西一(はじめ)は一時、主力組に入り、実戦練習ではゴールも決めた。アルゼンチン戦が行われた町田市立総合体育館は寺西にとっては大学時代から過ごす地元で友人も見に来たが、出場できず。悔しい思いを晴らすための再スタートを切った。

「出られるだけの力がなかったのかなと思います。ユニフォームを着ているところは見せられたので、今度は活躍しているところを見せたい。試合の流れを把握し、その中で周りが何をしているかを考えて動けるようになりたいです」

 おもに最後尾で守備をする「最後の砦」を任され、ひと際大きな声で指示を出す。174cm、85㎏とラグビー選手のFWにいそうなコミカル?な体形で、サッカー選手としてはちょっと太めだ。そのため、現在、ダイエットに挑戦中。5月に傷口からばい菌が入る蜂窩織炎にかかり、10日間ほど入院。92㎏まで増えた体重を7㎏絞ったが、さらにスリムにするため、高田敏志監督に紹介された栄養士からアドバイスを受けている。

高田監督(左)からのアドバイスを真剣に聞く

 網膜の病気により5歳ごろから視力が低下し、中2で全盲になった。寺西は当時を振り返る。

「どうしよう、という混乱はあったんですが、病院の先生からは『いずれ悪くなる』といったことは言われていたので、深刻に悩み続けるようなことはなかったですね」

 立ち直りの早い、寺西の持ち前の明るさは、仕事で生きている。日本ブラインドサッカー協会の職員でもある寺西は、ブラサカを利用したチームワークやコミュニケーションを磨く企業研修で力を発揮する。寺西が担当すると、企業側からのウケが抜群にいいという。

「僕は最初、子供に教える現場からやらせてもらったんですが、子供の場合、面白いこと言わないと話、聞いてくれないじゃないですか。だから大人相手でも『この人、何か面白いこと言うかも』って思ってもらえるようなこと、いつも考えています」

 ブラサカでは選手交代は自由だが、アルゼンチン戦の日本代表は寺西のほか、日向賢、丹羽海斗も出場しなかった。対するアルゼンチンの不出場選手は1人だけ。高田監督が安心して送り出せる力がつけば、他の選手が休める時間を生み出し、さらにチーム力は上がる。チーム屈指のムードメーカー、寺西の成長曲線はきっと、日本代表の成長曲線にも比例するはずだ。

(取材・文 林健太郎)

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