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[高校選手権]終了間際から始まった“2つのドラマ”、青森山田が青森県勢初の決勝へ

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[1.9 全国高校選手権準決勝 関大一 2-2(PK2-3)青森山田 国立]

 第88回全国高校サッカー選手権は9日、東京・国立競技場で準決勝が行われ、第2試合では関大一(大阪)と青森山田(青森)が激突。2-2からのPK戦を3-2で制した青森山田が、青森県勢初となる決勝進出を果たした。青森山田は11日の決勝(国立)で初出場初優勝を目指す山梨学院大付(山梨)と対戦する。

 試合終了間際から始まった“2つのドラマ”。決勝進出の権利を勝ち取ったのは青森山田だった。試合はFW野間涼太(3年)の先制PKとMF椎名伸志主将(3年)の鮮やかな左足ループによる追加点により、後半43分の時点で青森山田が2点をリード。ロスタイム(3分)を含めた残り時間は5分を切っており、誰もが青森山田の勝利を確信しかけていた。だが、明らかな時間稼ぎをしない青森山田に対し、関大一はあきらめずに前へ前へとボールを運んでいく。

 今大会3試合でわずか1失点の青森山田に対して2点のビハインド。ほとんど勝機がなかったのは間違いない。それでもここから関大一による劇的な同点劇が始まった。まずは44分、FW久保綾祐(3年)とのワンツーで左サイドを破ったSB横川玄(3年)がラストパス。中央でクリアされたものの、混戦からのこぼれ球を拾った久保が縦に切れ込んでから左足を振りぬくと、シュートはゴール右隅へと突き刺さった。

 前半から決定機をつくりながら相手GK櫛引政敏(2年)の前にゴールを奪うことができなかった関大一がついに決めた89分の得点。これで勇気を得た関大一はロスタイム、自陣で得たセットプレーでGKとDF1人を残し、大歓声の中、残り全員がゴール前へとなだれ込む。一度は相手にクリアされたものの、ボールを拾ったMF浅井哲平(2年)がシュート。これもDFに阻まれたが、こぼれ球に反応したFW井村一貴(2年)の左足によって打ち抜かれた「魂」の一撃はゴール左隅へと吸い込まれた。
 ロスタイムの奇跡的な同点劇に会場が大きく「揺れた」。スタッフも含め興奮を隠さずに喜ぶ関大一に対し、がっくりと肩を落とす青森山田イレブン。2点のリードは、わずか2分の間にかき消された。

 試合終了間際に喫したまさかの連続失点で崩壊してもおかしくない状況。それでも青森山田は負けなかった。この試合、もうひとつのドラマを演じた主役は青森山田のGK櫛引政敏(2年)だ。2-2で突入したPK戦。後攻・関大一の1人目、DF小島悠司(3年)のシュートを右へ跳んでセーブすると、2人目も左へ跳んでストップ。さらに青森山田も2人が失敗して3-2で迎えた5人目、「気づいたら跳んでいた」という櫛引は相手MF梅鉢貴秀(2年)のシュートを右へ跳んで三度はじき出した。3本のPKを止めるという「大当たり」。関大一の勢いを止めた主役は、前宙で勝利を喜び、直後にはチームメイトにもみくちゃにされていた。

 終了間際の連続失点に「サッカーの怖さを改めて勉強させてもらった」と振り返った青森山田の黒田剛監督だったが、「試合は試合、PK戦はPK戦」と選手たちにしっかりと気持ちを切り替えさせて、PK戦へと送り出した。
 PK戦には自信もあった。練習試合で特別に行ってきたPK戦は全勝。U-17W杯日本代表MF柴崎岳(2年)が「PK戦には自信があったので、(同点の)ショックはなかった」と振り返ったように、PK戦直前の円陣でも選手たちは前向きな言葉を繰り返した。わずか数分前の悲劇から精神面を立て直すたくましさが青森山田にはあった。
 追い込まれた状況でもチームを支えたPK戦の自信と守護神のビッグセーブ。突禰・譴慎臙呂鮹Δ靴神朕校嚇弔・・5年の全国総体に続く日本一に王手を懸けた。

(取材・文 吉田太郎)

特設:高校サッカー選手権2009

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