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[総体]再延長含む120分間の死闘制す!「課題山積み」も静岡学園が3連覇:静岡

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[6.3 全国高校総体静岡予選決勝 静岡学園2-2(PK4-3)清水商 エコパ]

 平成24年度全国高校総合体育大会「2012北信越かがやき総体」サッカー競技(長野)静岡県予選は3日、静岡スタジアムエコパで決勝を行い、昨年の全国準優勝校である静岡学園と全国総体優勝4回の清水商が激突した。名門校同士の戦いは80分間、前後半計20分間の延長戦、同20分間の再延長戦でも決着がつかず、PK戦へ突入。PK戦を4-3で制した静岡学園が3年連続3回目の全国総体出場を決めた。

「静岡の代表チームとして恥ずかしいサッカー。課題は山積みです」。劇的な勝利にも静岡学園の川口修監督は首を振り、コーチングスタッフの誰もが「静学らしくないサッカーだった」と納得していなかった。テクニックを徹底的に磨く静岡学園は、この日強烈なプレスとカウンターで勝ち上がってきた清水商を大黒柱のMF渡辺隼主将(3年)を中心とした丁寧なパス回しでかわしていた。

 ただ、前線の動きも、サポートもなく、またミスも重なってなかなかボールを前へ進めることができない。FW木部未嵐(3年)が鋭い切り返しから放った左足シュートやFW米田隼也(2年)が狭いスペースで足技を見せる場面もあったが、局面でのトリッキーなドリブルやアイディア溢れる崩しがほとんど見られないチームはボールこそキープしていたものの、目標の「観客を沸かせる」サッカーには程遠い内容だった。

 それでも試合の流れは静岡学園に傾いていた。前半30分、左サイドタッチライン際でボールを持った渡辺がファーサイドを狙って、ストレートのクロスボールを放り込む。これがGKの頭上を抜けてそのままゴールへ吸い込まれる先制ゴール。約40mの強烈な“ラッキーパンチ”が試合を動かした。さらに静岡学園は後半8分、渡辺の右FKが相手DFのオウンゴールを誘い、2-0へリードを広げる。

 局面での攻防戦、そして前線からのハードワークでも上回っていた清水商は、前線へのロングボールに圧倒的な強さを誇るエースFW佐野翼主将とFW大城太希(ともに3年)の2トップらが飛び込んでいく。豊富な運動量でフィフティフィフティのボールを自らへ手繰り寄せ、素早い切り替えから一気に前線へ人数をかけるダイナミックな攻撃で対抗する。ただ、静岡学園の望月大知(3年)と吉田健(2年)の両CBの厳しい守備の前に佐野も決定的な仕事ができない。そして後半8分に2点目を失うとチームは意気消沈したか、やや失速。さらに後半35分に佐野が足を攣らせて交代すると勝利の望みは消えかけたように映った。それでも清水商は、試合終了間際の後半40分からの2分間で奇跡を起こす。

 後半40分、前線でこぼれたボールをスライディングでクリアしようとした静岡学園GKがまさかの空振り。詰めていたMF吉田雄介(3年)が追撃ゴールを流し込むと、ロスタイム突入後の41分には前線へのフィードをFW水野広夢(2年)が頭で落とし、最後は相手DFを振り切った吉田が劇的な同点ゴールを流し込んだ。来年4月に学校再編して清水桜が丘となる予定の清水商にとっては現校名で最後となる全国総体出場のチャンス。エース番号8番を背負う吉田の2発で清水商は延長戦へ持ち込み、全国への望みをつないだ。

 土壇場での連続ゴールで一気に試合の流れを引き寄せた清水商。だが、試合を決めることができなかった。延長前半6分にはMF青木太雅(3年)が決定的なシュートを放つが、至近距離からの一撃は「(ミスをして)失うものは何もなかった。集中していました」という静岡学園GK大野敬介(3年)がビッグセーブでストップ。後半5分には右サイドから切れ込んだ1年生MF金山晃典の左足シュートがゴールマウスをかすめ、同8分にも右サイドでDFをかわした金山の強烈な一撃がゴールを襲ったが決勝点を挙げることはできなかった。

 白熱した試合は延長戦でも決着がつかず、再延長戦へと突入する。清水商は前半7分に敵陣でインターセプトしたMF小山祥生(3年)が抜け出してから右足を振りぬくがまたもGK大野がビッグセーブ。静岡学園も木部がビッグチャンスを迎えたが活かせずに試合は2-2のまま終了し、全国切符の行方はPK戦に委ねられた。PK戦では「PK戦は精神力ではなく、技術」と言い切る正確なキックで望月からMF名和太陽(3年)まで4人全員で成功した静岡学園に対し、清水商は2人目のDF松永将磨(3年)と5人目の水野のシュートがクロスバーを直撃。試合終了間際の連続失点で手中にあった全国切符を失いかけながらも、相手に飲み込まれなかった静岡学園が3連覇を達成した。

 まだまだ技術不足、運動量不足が目立つ静岡学園だが、それでも現在3年生の世代の静岡学園には目に見えない強さがある。この日は静岡学園中出身の選手7人が先発していたが、彼らが中学3年時にはJFAプレミアカップと全国中学校大会で全国2冠。昨年の全国総体では渡辺や望月、MF柴田則幸(3年)ら1、2年生が中心になて全国準Vを果たすなど勝負強さを発揮している。

 昨年同様に守備が安定しており、個々は武器を備えているだけに今年の全国でも勝ち進む可能性は十分。目標は昨年あと1勝まで迫った日本一だ。大野は「技術の面では昨年の方が上だけれど、負けたくないという気持ちでは劣っていないし、運がある。今年は必ず優勝できると信じている」。渡辺は「静学らしさはなかったですけど、勝ててよかったです。全国らしさにこだわってやりたい」。全国では勝負強さに静学らしい技を加えて「静学らしく」日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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