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[総体]2014夏、注目チーム特集:機が熟した実力者集団・初芝橋本、3年間の集大成を示す夏の舞台へ

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 元・日本代表のFW吉原宏太(G大阪、札幌などでプレー)、DF岡山一成(現・奈良クラブ)を筆頭に、多くのプロ選手を輩出してきた初芝橋本高(和歌山)。この2人が揃った95年度には全国高校選手権4強に進出し、06年度にも全国高校総体準優勝、全日本ユース選手権4強と輝かしい成績を残してきたが、近年は全国の舞台で際立った成績が残せていない。今年はプリンスリーグ関西から降格し、県リーグに参戦中だ。それでも各ポジションに実力派が揃い、全国上位レベルの好チームに仕上がっている。全国高校総体では大津高(熊本)、立正大淞南高(島根)など強豪、曲者が集う難しい山に入ったが、ノーチャンスではない。復活の予感が漂う紀伊の名門について紹介したい。

「アイツらの多くは試合にずっと出ているんですよ。それで力をつけなかったら、この3年どうしてくれるねん。あかんかったら、俺の3年間を返して欲しいくらい(笑)」。冗談を交えながら、手応えを話すのは初芝橋本の阪中義博監督だ。自らも初橋出身で選手時代に選手権に出場した事のある指揮官は、コーチから昇格して今年で5年目。手塩にかけて育てた今年の3年生は入学直後から主力を張った選手が多く、黄金世代とも言える存在だ。

 1年時からスタメンを張ったCB永見皓平、ボランチ渡辺淳揮、FW末吉塁の3人に加え、2年生からはGK立川小太郎、CB西岡伸、FW柳原慶斗も彼らの輪に加わった。「技術はあるけど、当たりの弱さが目立ち、活かせていなかった」(阪中監督)という彼らの下半身を鍛えるべく、昨年の新チーム結成から2か月間毎日、かえる跳び、うさぎ跳びなど動物の動きを基にした“アニマルトレーニング”を実施。阪中監督が「朝、バスから降りて来る選手たちが皆、小鹿みたいだった」と振り返ったように過酷なトレーニングの影響で多くの怪我人を生み、新人戦を落としたが、精神面とスタミナの成長に繋げ、選手権の出場権を掴んだ。実戦経験だけでなく、苦しみを共有した事は抜群の連係にも繋がっている。

 今年は阪中監督が「選手権から新人戦まで日が無かったのと昨年、怪我人が多かったから、やったらあかんと思った」と笑ったように、“アニマルトレーニング”を行わなかったものの、4日間連続で走り込みを行うなど“走りの初橋”は健在。「最後までスタミナが落ちないのが初橋の強み」(MF渡辺淳揮)という自信の拠り所になっている。加えて、今年からは運動量と技術力を備えたMF山本遼人川中健太の2年生MFが頭角を表し、定位置を獲得。3年生に彼らの持ち味が加わり、これまでの粘り強い守りから素早く前線へと展開する堅守速攻型のチームから、しっかりボールを保持して主導権を握ることのできるチームへと変化していった。「ボールをゆっくり回す時間や、縦に速いクサビを入れる時間など試合流れに応じて、攻め方を変えられる。ボールを回しながらも、縦を狙うぞというイメージ」と主将の渡辺が口にするように、攻撃のバリエーションは豊富だ。

 さらには、3年生でボランチの定位置を掴んだ“遅咲き”の高橋響も試合終盤まで落ちない無尽蔵のスタミナでチームを支えるほか、ベンチに一芸を持った選手がいるのも心強い。「下手だけど、アイツ以上のロングスローを投げる選手はこの近辺にはいない」と阪中監督が説明するMF梅原正成と185cmの巨体と活かしたヘディングシュートが自慢のFW市川久也のセットは、試合終盤のパワープレーで威力を発揮する。「持っているポテンシャルは見てきた中では一番ある」という阪中監督のチームへの評価は決して大げさではない。

 実際、今年の春先に行った練習試合での敗戦は数えるほど。和歌山県1部リーグでは前期を終えて9勝全勝38得点6失点と圧倒的な差をつけて首位を独走し、高校総体予選でも余裕のある勝ち上がりを見せた。気の緩みもあり、近畿総体や天皇杯予選こそ負けてしまったが、ここまでは思惑通りの結果が出ている。高校総体での指揮官の目標は「ひとつでも多く勝ち上がりたい」と控え目ではあるが、06年を超える結果が待っていても、何ら不思議ではない。

(取材・文 森田将義)
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