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[総体]技巧派軍団をハードワーク、前への姿勢で撃沈!大阪学院大高が初の全国へ大きな1勝:大阪決勝L

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[6.4 総体大阪府予選決勝リーグ第2節 興國高 0-2 大阪学院大高 J-GREEN堺]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)への出場チケット2枚を懸けた大阪府予選は4日、決勝リーグ第2節を行った。ともに初戦を0-1で落としている興國高大阪学院大高戦はMF中道佑真(3年)と左SB中尾真のゴールによって2-0で大阪学院が勝利。1勝1敗で2位の大阪学院は5日の最終節で首位・履正社高と、まだ全国への可能性を有する興國は東海大仰星高とそれぞれ対戦する。

 この日、大阪学院が対戦した興國はすでにJクラブの練習参加を経験しているCB長井一真主将(3年)や10番MF大垣勇樹(2年)をはじめ、左SB今掛航貴(3年)、MF加田淳哉(3年)らタレント揃う強敵。ポゼッションで相手を圧倒して勝利する相手との一戦は厳しい展開となることが予想された。だが勇気を持って前からディフェンスし、身体能力で勝る相手に球際で戦った大阪学院。C大阪U-18、関西学院大出身の若き指揮官であり、昨夏からヘッドコーチ、今春から監督を務める小野原明男監督が「興國相手に引いたらメンタル的にも弱気になってしまう。気持ちのところで引くな、と。相手に向かっていくしかない」というように、前に出た挑戦者が70分間戦い抜いて快勝を収めた。

 加田やMF掃部勇哉(3年)を中心にボールを動かす興國が序盤からボールを支配する展開。対して大阪学院は守備意識高くゲームを進める。特に「平均身長は162cmくらい」(中道)というFW新町幸聖(3年)、MF西宇大輔(3年)、MF江郷下慶(3年)、そして中尾の小柄なアタッカーカルテットがプレスと裏への抜け出しを献身的に繰り返す。すると前半15分、大阪学院はDFラインでボールを動かすと、中尾の縦パスで抜け出した中道がコントロールした右足シュートで決めて先制点を奪った。

 対する興國は20分に今掛の左クロスからMF村岡正梧(2年)が決定的なヘディングシュート。だが大阪学院GK住山雄一郎(3年)の好守に阻まれると、その後もエース大垣らがハイサイドを取ってPAまでボールを運ぶものの、最後の局面でチャレンジする姿勢が少ない。この日は前節退席処分となった内野智章監督が不在。スタンドから観戦した内野監督は「(選手交代含めて)もっと早く攻撃的な布陣へシフトしなければいけなかった」。相手のハイプレスもあってか、大事に攻め過ぎたことで個々の判断が遅れ、バックパスが増えてしまうなど、怖さを欠いたまま前半を終えてしまう。

 逆に主将のCB藤本憲(3年)が「鼓舞して、みんなの気持ち高めて、最後まで気持ち切らさずに行こうと思っていました。全員がひとつになってハードワークすることが良さ。一人ひとり、全員が引っ張っていく力持っているんで、それがいいところだと思います」という大阪学院は勝利への執念が伝わってくるようなハードワークの連続。そして後半7分、江郷下の右CKを中尾がDF頭上から強烈ヘッドを突き刺して2-0とした。守備的な戦いを強いられた大阪学院だが、中道が「練習でもコンビネーションを意識している」と説明したように、本来は連動したパスワークを持ち味とするチーム。高いキープ力を示した西宇らアタッカー4選手の連動した攻撃の前に、興國DF陣が捕まえきれないようなシーンも少なくなかった。

 いい形でボールを奪えなかったこともあってなかなかギアが上がらなかった興國も、MF北龍磨(3年)やFW沖本卓大(3年)の投入でようやく攻撃のテンポが上がり、鮮やかなパスワークから相手の脇を刺すようなシーンもつくった。だがFW西村恭史(2年)の右足ボレーがGKの正面を突くなど無得点の時間が続く中、追い込まれていったチームは流れを好転させることができないまま完封負け。大阪学院は「もう前からのプレスが良かったし、そこで決まったみたいな感じ」と藤本が賞賛し、「シンドいと思うけれどやってくれる選手」と小野原監督が信頼を置く前線の選手たちが70分間走りきり、また味方がパスコースを限定してくれた中で藤本やCB秋本健作}}(3年)が最後の局面で確実に跳ね返し、中尾、吉江絃馬(3年)の両SBも対人守備で奮闘。MF村上樹(3年)やMF山崎翼(3年)がセカンドボールを拾ってカウンターの脅威を示し続けるなど、会心のゲーム運びで勝ち点3を獲得した。

 大阪学院は決勝リーグ初戦の東海大仰星戦を0-1で敗戦。過緊張だったチームは自分たちの、引かずに前に出るサッカーを表現することができなかった。だが「変な意味で吹っ切れた」(小野原監督)というチームはこの一週間、修正し、本来の戦う集団に変わって、見る者の心打つような戦いぶりで走り勝った。全国切符を懸けた最終節の対戦相手は昨夏全国8強の履正社。再び強敵との対戦となるが、小野原監督は「明日も強気なサッカーができれば結果はついてくる」と語り、藤本は「(興國からの白星は)正直めっちゃ嬉しいけれど、明日が本当の戦い。明日勝って、ボクたちが目標としていた全国を決めたい。みんなでひとつになって、ボクはずっと声出し続けてチームのために最後まで戦えたらいい」。決勝リーグを戦う4チームの中では最もチャレンジャーの立ち位置にいる大阪学院。そのチームがハードワークと勝負どころで見せる“本来の”武器も発揮して、初の全国大会出場を決める。

[写真]前半15分、大阪学院は中道(8番)のゴールで先制

(取材・文 吉田太郎)
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