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“内部分裂”から「やっと普通のチーム」に…総体敗退の桐蔭学園、情熱的指揮官とのリスタート

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2次トーナメント3回戦敗退となった桐蔭学園高

[6.9 総体神奈川県予選3回戦 桐光学園高2-0桐蔭学園高 日大藤沢NFグラウンド]

「やっと普通のチームになってきました」。今季から桐蔭学園高の指揮官に就任した八城修監督は総体県予選3回戦の敗北後、チームの成長に関してポジティブな言葉を口にした。“内部分裂”が世間の注目を集めた昨年度からの再スタート。「まあ、ここからが長いんですけどね」と語る眼差しからは、情熱がみなぎっていた。

 2011年に全国総体を制した桐蔭学園は昨年度、極めて異例の“分裂騒動”に瀕していた。李国秀監督が率いるAチームは1、2年生が中心となり、蓮見理志監督が指揮していたBチームは3年生全員と2年生3人の23人で構成。奇跡の全国行きを成し遂げた高校選手権にはBチームが参加した一方、Aチームは神奈川県1部リーグで全敗の最下位だった。

 3年生が卒業したため、現メンバーの大半は昨季Aチームに所属していた選手たち。「これまで練習試合とかも含めて勝っていないし、勝たなくても良いという感じだった」(八城監督)ことから、「勝ちに対する執着心が身についていなかった」のは無理もない。今季は「みんな自分の好きなプレーしかしない」状態からスタートを切ったという。

 八城新監督は桐蔭学園OBで、04年から系列校の桐蔭横浜大で監督を務めていた“大学畑”の指導者。当時は県1部リーグ所属だったチームを関東1部にまで引き上げ、16年にはアミノバイタル杯優勝、初出場の総理大臣杯で3位に導いた実績を持つ。さらにJ1首位広島の最終ラインを担うDF野上結貴、湘南で着実な成長を遂げるDF山根視来ら、Jリーグにも多くの選手を送り込んできた。

 そんな指揮官に“桐蔭復活”の大役が委ねられた。「これまで大学選抜チームの監督もやらせてもらって、色んな選手を見てきた。大学に必要とされる選手、プロに必要とされる選手というのは全部分かっているつもり」。ゼロからのチームマネジメントを進めるかたわら、大前提となる選手育成に取り組んでいく構えだ。

 4月末に行われた関東大会予選では5回戦で敗れ、総体予選でも強豪の桐光学園高に0-2で敗戦。2次トーナメント3回戦で姿を消すこととなった。「大事な試合だからって、セーフティーにプレーしすぎている。一生懸命やっているけど、努力が足りない」。そんな厳しい言葉も飛び出したが、「3月から比べると意外と成長している」と一定の評価を下しているようだ。

 選手が成長していくためには情熱を惜しまない。「強いチームになるためには、努力をしないといけない。頭をフル回転させて、自分に何ができるかを考えないといけない。それは一つの声かもしれないし、一つの何気ないパスかもしれない。そこに決まったゴールはない。だからこそ大変な道のりだけど、それをやっていく気概、やっていく情熱があるか」。

「ここまで数か月見てみると、高校サッカーは大学に比べてつまらなく見える。みんながサッカーをやらされている。サッカーは本来もっと自由なもの。大学生はJリーグに勝ちたいと思ってやっている。だから、大学生に負けないような強いチームにしたい。どういうアプローチをして、どういう手助けをしていくか、もっと考えていかなければならない」。

 総体予選での挑戦が終わり、これから秋の選手権予選まで長いようで短い準備期間が始まる。「楽しみですよ。K2リーグも続いていくし、これからどうなっていくか。望まないと叶わないですから」。指揮官も認めるように、ポテンシャルの高い選手が集まっている桐蔭学園。「他に例を見ないようなチーム」(八城監督)へのチャレンジはまだまだ始まったばかりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校総体2018

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