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先制点を奪われても立て直せる力を発揮。成立学園が6発快勝で準決勝へ!:東京

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成立学園高はDF田中佑典(3番)がチーム4点目をゲット。

[5.30 インターハイ東京都予選二次トーナメント2回戦 日大三高 1-6 成立学園高]

 嫌な形で先制される展開は、強豪校が敗退していくパターンそのもの。だが、そこに飲み込まれないだけの力強さが、今年のチームにはあるのかもしれない。「先制点を取られて、危ない感じになったんですけど、自分たちの力で立て直せたので良かったと思います。まだ前半の早い時間で、みんなにも立て直せるという感じがありましたね」(山崎夏樹)。30日、インターハイ東京都予選二次トーナメント2回戦、日大三高と成立学園高が対峙したゲームは、先制された成立学園が落ち着いたゲーム運びで逆転し、6-1で快勝。準々決勝へと勝ち上がった。

 ファーストシュートは日大三。前半2分に相手のミスを突いたカウンターから、FW西岡大夢(3年)がトーキックでフィニッシュ。ボールはわずかに枠の左へ外れたものの、いきなりチャンスを作ると、9分にも成立学園ディフェンスの連携が乱れた所を、再び西岡が見逃さず、左足で綺麗にゴールネットを揺らす。歓喜に湧く桃色のユニフォーム。日大三が1点をリードした。

「セカンドに絡むラインコントロールはしっかりやろうよと言っていたんですけど、2人で一緒に競ったり、コミュニケーション不足は否めなかったかなと思います」と五十嵐和也監督も振り返った成立学園は、1点を追い掛ける展開に。ただ、ここでキャプテンの左SB山崎夏樹(3年)を中心に、ピッチの中でポジティブな声が飛び交う。

 すると13分、左CKのスポットに立ったMF斎木大和(3年)は完璧なキックをファーに届け、待っていたMF大崎日向(3年)のヘディングはゴール右スミへ吸い込まれる。失点から4分での同点弾。すぐさまスコアを振り出しに引き戻すと、25分には「ドリブルのルートがイメージ的に見えた」という斎木が左サイドを1人で切り裂き、圧巻のドリブルシュートで2点目。一気に逆転してみせる。

 だが、日大三のメンタルは折れない。MF田口幸樹(3年)がGKの位置を見極め、40メートル近いロングシュートを、数十センチの誤差で枠の左へ打ち込めば、完全に大外を狙った田口の左CKから、フリーで走り込んだキャプテンのDF星大翔(3年)が合わせたダイレクトボレーも、やはり数十センチだけゴールポストの左へ。さらに、FW宮田耀太(3年)が迎えた決定機は、成立学園のGK西大輔(3年)が何とか飛び出してセーブ。十分にやれる雰囲気を日大三が残したまま、前半の40分間は終了する。

 そんな難しい展開を打破したのは、交代カードの質。後半開始早々に成立学園はMF柏田凌佑(2年)を1.5列目に送り込み、13分にも左サイドにMF坂尾一汰(3年)を投入。この2人の推進力が、少しずつ日大三のディフェンスラインにボディーブローを打ち込んでいく。

 右SBの仲田尊(3年)、CB久保田剛生(3年)に星と、3年生を中心に日大三の守備もよく耐えていたが、1点差を追い掛ける展開の中で、攻めた裏側をカウンターで突かれるシーンが増加。じわじわと体力を奪われていくと、成立学園は28分にFW吉長由翔(3年)の巧みなラストパスから柏田がきっちり沈めて、スコアは3-1に。とうとう点差が2点に開く。

「3点目を獲った時からは、相手が前から来るので逆に背後を狙えてカウンターということで、上手く点が獲れたかなと思います」(五十嵐監督)。30分には坂尾が左サイドをえぐり、右SB田中佑典(3年)が4点目。31分には柏田の左クロスから、吉長がきっちりゴールに流し込んで5点目。39分にも柏田が右サイドから丁寧に折り返し、途中出場のFW菅野芳帆(2年)が6点目。終盤にようやくゴールラッシュを見せた成立学園が、粘り強く食い下がった日大三を6-1で退け、準々決勝進出を決めた。

 今年の成立学園のディフェンスラインは、よく声が出ている。特に「いかなる状況でも自分が慌てたらチームのリズムが崩れると思っているので、自分は『冷静に熱く』というイメージは常に持ってやっています」と言い切る山崎、ディフェンスラインを統率するCB丸山寿潤(3年)、アグレッシブなスタイルの西は常にピッチの中で改善点を探し、仲間と共有している印象がある。

 最初の10分間はミス絡みの失点も含め、最悪の立ち上がり。その状況にも山崎を中心に何とか立て直し、逆転してからの相手のリズムも懸命に凌ぎ切る。五十嵐監督も「チャンス的には向こうの方が多かった前半に、2点目を獲らせなかった所、そこで我慢できた所が大きかったですね」と言及。今までも成立学園が陥りがちだった“負けパターン”に嵌らなかった部分は、次戦以降に向けても小さくない収穫となった。

 準々決勝で対峙するのは、20年度の高校選手権で全国8強を経験している堀越。もちろん相手にとって不足はない。「もうウチはチャレンジャーですから。去年はT1で優勝させてもらいましたけど、堀越には勢いで負けていた(1-4で敗戦)ので、もうチャレンジ精神で向かおうと思っています」と五十嵐監督。全国を狙える実力は間違いなくある。謙虚に、実直に。6大会ぶりの晴れ舞台までは、あと2勝だ。

(取材・文 土屋雅史)
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