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全国制覇への強い意志と“アンリ効果”で進化。尚志が会心の内容、結果で福島制覇

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“怪物”CBチェイス・アンリ擁する尚志高が日本一へ一歩前進

[6.6 インターハイ福島県予選決勝 尚志 5-0 帝京安積高 Jヴィレッジスタジアム]

 会心のゲームで目標へ向けて前進――。令和3年度全国高校総体(インターハイ)「輝け君の汗と涙 北信越総体2021」サッカー競技(福井)福島県予選決勝が6日にJヴィレッジスタジアムで開催され、19年の前回大会で全国3位に入っている尚志高帝京安積高に5-0で快勝。11大会連続13回目のインターハイ出場を決めた。

「ウチのパスサッカーが、流動的なサッカーが今日はできたんじゃないかと。見ている人にちょっと楽しんでもらえたんじゃないかと思います。今日の攻撃は言うこと無しですね。ウチ、追い抜け、追い抜けってずっと言っているんですけれども、後ろからどんどん出ていくようなサッカーができたんじゃないかと思います」。

 尚志は準決勝までは全3試合で失点し、うち2試合で延長戦。決定力を欠き、油断が失点に繋がるなど思うような戦いが出来ていなかったが、決勝は仲村浩二監督も認める内容、結果で目標の全国制覇へ一歩前進した。

 プリンスリーグ東北勢対決となった決勝。序盤は「打倒・尚志」、初のインターハイ出場へ燃える帝京安積がパワーを持って押し込む時間を増やす。球際の攻防でも健闘。攻め返されるシーンもあったが、王者に真っ向勝負を挑んでいた。

 尚志はボールを奪う位置がやや低くなっていたものの、U-20日本代表候補に選出された“怪物”CBチェイス・アンリ(3年)とCB安江海ラウル(3年)の両DFを中心とした守りは強固。決定打を打たせない。

 また、この日は中盤の要であるMF新谷一真(3年)を前日(準決勝)の負傷で欠いて不安視されていた。だが、代わってボランチへ下りたMF松本勇斗主将(3年)と10番MF松尾春希(3年)が中心となって、徐々に“尚志らしい”パスワークの回数を増やしていく。

 そして24分、尚志はMF鈴木彪馬(3年)からのパスを受けた松尾がドリブルでPAへ侵入。PKを獲得する。これを松尾が自ら右足で決めて先制点。この後、尚志は個々の技術とポジショニングの精度、追い越す動きを組み合わせて次々とポケットへ侵入して行った。

 帝京安積はGK菅野恵太(2年)の奮闘で何とか食い下がっていたが35分、尚志は左SB高橋翔大(3年)の縦パスを左ハイサイドへ抜けたMF黒瀬舜(3年)が絶妙なコントロール。この日圧倒的なスピードで違いを示していた黒瀬が縦に仕掛けて折り返すと、FW村上力己(3年)が左足のファインショットで決めて2-0とした。

 尚志は後半8分、9分にも連動した崩しからMF齋藤幹太(3年)が連続ゴール。この後、U-20日本代表候補合宿(7~10日)に参加するアンリらが交代した尚志に対し、帝京安積は特長のサイド攻撃によって反撃する。FW富永凱喜(3年)とFW丸山翔(3年)の両翼が仕掛け、推進力のあるFW渡辺結心(2年)がシュート。決定機も作ったが、尚志は得点を許さない。

 逆に尚志は試合終了間際、敵陣で相手のミスパスをインターセプトし、最後はFW小池悠斗(3年)がゴール。全国制覇への強い意志と、“アンリ効果”も力にするチームが強さを見せつけた。

 仲村監督は「全国大会で日本一になることが目標なので、その目標をどうクリアしていくか、こんな練習じゃダメだよな、と常に言い続けてきました」という。コロナ禍でプリンスリーグ東北の試合が相次いで中止になるなど、インターハイ予選へ向けて思うような調整ができた訳ではない。

 それでも、厚い選手層を誇る尚志は紅白戦でチームのエラーを抽出。立ち上がりや得点を奪った直後の緩みなどを改善してきた。選手たちはトレーニングで全国制覇するための質やスピード、強度を求められ、それに意識高く挑戦。松本は「かなり練習もハードなトレーニングをやっているので、そこ(日本一)へ向けた意識を持って全員がやっていると思っています」。まだまだ課題はあるものの、前回大会の3位や2度の選手権3位を越えて全国制覇に挑戦するに相応しいチームになってきている。

 今年の尚志は、逸材・アンリの存在も大きい。彼のプレーをチェックするために度々スカウトや協会関係者が尚志の試合に訪れた。選手たちは“見られている”中で成長。アンリの実力を認める一方で、「自分たちも負けていない」という思いが選手たちを進化させている。松本は「(アンリに)負けない、という思いを全員が持ってやれているので、良いチームになれているかなと思います」。そのアンリも掲げる「全国優勝」へ挑戦。激しいチーム内競争を経て迎えるインターハイでこの日以上のサッカーを表現し、尚志の歴史を変える。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

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