beacon

横浜育ち、鳥栖経由、カナリア軍団行き。帝京MF山下凜は切れ味抜群のドリブルで常に勝負

このエントリーをはてなブックマークに追加

帝京高に推進力を生み出すドリブラー、MF山下凜

[6.19 インターハイ東京都予選準決勝 帝京高 3-2(延長) 堀越高]

 横浜の地で技を磨き、鳥栖の地で逞しさを身に付けたドリブラーは、名門のカナリア軍団でも確かな存在感を、圧倒的な武器の力で放ち続けている。「三笘(薫)選手を意識してドリブルしていました。自分の中でもドリブルには自信があるので、今日もそれは出せたと思っています」。帝京高が誇る、切れ味抜群の仕掛け人。MF山下凜(2年=サガン鳥栖U-15出身)の投入が、準決勝の大きな潮目になったことは間違いないだろう。

 前半終了間際に堀越高へ先制を許し、後半開始早々にも追加点を奪われたことで、決して小さくない2点差を追い掛ける展開を強いられた帝京。チームを率いる日比威監督は、すかさず切り札の山下を、雨の降りしきるピッチへ解き放つ。

「ゲーム展開的にはかなり堀越さんに勢いが付いていたので、自分が入って流れを変えられればなと考えていましたし、プレー面で考えていたことは、堀越さんが引いて守っていたので、自分がドリブルで崩して、あわよくば点を決めたいと思っていました」。すぐさまそのドリブルの切れ味で左サイドを支配すると、14分に結果を出してしまう。

 ここも左サイドでパスを引き出すと、少し縦に運びながら、中にグングンとカットインしていく。「1回キックフェイントを入れたら相手も引っ掛かったので、もう1つ運んで、シュートを打ったらそのまま入りました」。単騎で堀越ディフェンスを切り裂いた衝撃のゴラッソ。この追撃の1点が呼び水となり、それが後半アディショナルタイムの同点弾、延長後半の決勝弾に繋がっていった。

 小学生時代は横浜F・マリノスプライマリーに在籍していたが、中学生時代はサガン鳥栖U-15でプレー。「もともと自分は関東に住んでいたんですけど、お父さんが単身赴任で福岡に行っていて、その後で自分も中学校1年生になったタイミングで、鳥栖のアカデミーに入りたくて、一緒に付いていきました」。

 当時の鳥栖U-15は、U-24日本代表にも選出された1歳上の中野伸哉や、既にルヴァンカップでトップチームデビューを飾っている福井太智、年代別代表の常連でもある楢原慶輝など、実にタレント揃い。「もうみんな凄く上手くて圧倒されていましたけど、自分の得意なプレーを少しでも出してやろうと思っていました」とドリブルを磨き、成長している実感も得ていた。

 ただ、U-18への昇格が見送られたことで、「こっちに帰ってくることは決めていて、その中で当時の監督さんから『帝京高校はどう?』という話がありました」とのこと。他にも個人技を生かすタイプの高体連のチームからオファーもあったが、最終的に帝京への進学を決意し、この1年半余りの時間でさらなる成長を遂げてきた。

 参考にしているドリブラーは、前述したように川崎フロンターレの三笘薫。さらに、世界最高峰のあの選手も、攻撃の所で真似すべき所が多いと感じている。「世界的に見たらリオネル・メッシ選手ですね。タッチが細かくて、三笘選手もたまにそういうプレーがあると思うんですけど、そういう所は参考にしています」。三笘とメッシのハイブリッド。イメージは完璧だ。

 今回のインターハイ出場チームを見てみると、中学時代のチームメイトが進んだ高校が、全国の舞台に出てくることが決まっている。「メンバーに入るかどうかはわからないですけど、瀬戸内高校には池田航陽がいるので。対戦してみたいですね」。いくつかのハードルこそ設けられているものの、かつての仲間と全国の舞台で再会できれば、こんなに嬉しいことはないだろう。

 高校入学後は初めての全国大会。かつての仲間に、活躍する姿を知ってもらいたいという想いは強い。「このご時世で春前まで全然サッカーもできていなかったので、チームもほとんど10年ぶりの出場ですし、少しでも良い結果を出せるようにしたいです。やっぱりドリブルで勝負したいですし、とても楽しみですね」。

 横浜育ちのドリブラーが、鳥栖を経由して辿り着いたカナリア軍団で、全国の“つわもの”たちをどう翻弄してくれるのか。今からその光景を目撃する日が楽しみでならない。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク

●【特設】高校総体2021

TOP