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欧州でも「全然、やれる」。尚志の“怪物”CBチェイス・アンリは下から吸収してより高いレベルへ

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尚志高の“怪物”CBチェイス・アンリ(写真協力=尚志高)

 アフロヘアーをなびかせながら相手に襲いかかってボールを奪い、空中戦では圧巻のボンバーヘッド。そして、スピードのあるパスを次々と通す……。7月、その逸材CBは欧州に挑戦していた。オランダの強豪、AZのU-23チームとドイツの古豪、ボルシアMGのU-19チームに練習参加。尚志高(福島)のU-20日本代表候補CBチェイス・アンリ(3年=FC湘南ジュニアユース出身)はその日々について、「楽しかったです」と振り返る。

 アンリは日本生まれだが、幼少期から中学1年時まで父の母国・アメリカで生活。外国人の中に入って行くことは全く苦にしていない。AZでは、「最初の練習で『わあ、速いな』と思ったけれど、次の練習から慣れて追いついて」いくことができたという。会話も日本語以上に得意としている英語。肉食中心の食事はキツイ部分もあったようだが、「怖さはない」の言葉通りにピッチ外含めて周囲とコミュニケーションを取ることも、プレーでアピールすることもできたようだ。

 04年早生まれのアンリは昨年2月にU-17日本代表に初招集されると、その合宿の中で“覚醒”。自信をつけて急成長したDFは今年、U-18日本代表候補を経てU-20日本代表候補に“個人昇格”を果たした。そのU-20日本代表候補合宿でJリーガー相手に堂々のプレーを見せていたアンリだが、AZのトレーニングはそれ以上のスピード感を感じたという。

「自分はやれていたんですけれども日本と全然違うなと。(代表チームのスピード感よりも)もっと速い。緩いとすぐ取られてしまう。あと、強いとかじゃなくて普通に上手いです。力任せとかじゃなくて、パスもトラップも置く場所も、ワントラップとかで余裕で前向けるし、スゴかった」と説明する。

 当初は苦戦することを予想。だが、「潰されるんじゃねえ? と思ったんですけれども1対1とか止めたり、ロングフィードとか通っていた。大して困ったことは無かったです」。AZの先輩DF菅原由勢から「緊張したりしてももったいないから自分プレーを出した方が良い」とアドバイスを受けて臨んだアンリは、その言葉通りに自分を表現し、コーチからロングフィードやミスした後にすぐ切り替えてボールを奪いに行くところを評価された。

 いずれもトップチーム相手ではなかったが、ライプツィヒとの練習試合では得意のヘッドを見せつけ、ピンポイントのロングフィードでチャンスの起点になった。またアヤックス戦では「めちゃめちゃ上手いです。でも、1対1で全然負けていなくて。オランダ代表とかいましたけれど、全然大丈夫です」というプレー。「これから日本代表とかなったら外人相手に負けたらダメだから」と考えるアンリは、“外国人”相手でも全くビビらず、海外の才能のスピードやパワーに対抗する自信を得て帰ってきた。

「自分は一番下から始めると、どんどん。そっちの方が良い」。アンリは初めて選出されたU-17日本代表合宿当初、周りとのレベル差に「自分一番下手だと分かっていますし、みんなも分かっていますし、もっと上手くなりたいです」と漏らしていた。だが、代表常連組との練習を重ねる中で著しい成長を遂げ、合宿最終日には逆にヘディングやロングフィードで目立つくらいのプレーを見せていた。

 U-20日本代表候補でも“一番下”の気持ちで入って、徐々に存在感。欧州でも同じように周囲を追い上げて、追い越す形で終えることができた。一方でトップチームの試合を見てスピードや声の違いも体感。次はトップチームでプレーし、下から追いつきたい、追い越したいという目標を持った。

 7月末に帰国したアンリは尚志のチームメートと分かれて調整。8月16日初戦のインターハイへ準備を進めている。時差や暑さに苦戦しているようだが、本番では欧州で学んだパススピードに加え、「あっちのCBはずっと喋っています。ラインの上げ下げしたり、味方を動かしています。黙っている時全然ないです」というコーチングも披露してくれそうだ。

 同じくU-20日本代表候補の青森山田高MF松木玖生(3年)と並んでインターハイの最注目選手。プライドもある。「自分があまり良いCBじゃないなと思われるのは嫌。言わせる訳にはいかないです。インハイと選手権優勝しないといけない。自分もCBだし、無失点にします」。代表での活躍の一方、尚志での活躍はまだ不十分。隙を見せて失点してしまうシーンや、タックルに頼ってしまう部分もある。それでも、攻守に魅力満載の“怪物“。欧州でまた進化したアンリが今夏、ライバルたちをねじ伏せて高校サッカー史に名を刻む。

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(取材・文 吉田太郎)
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