beacon

今大会初スタメンの右SBが先制弾!静岡学園DF小泉龍之介は巡ってきたチャンスをしっかり掴む

このエントリーをはてなブックマークに追加

静岡学園高の先制点を挙げたDF小泉龍之介(6番)(写真協力=『高校サッカー年鑑』)

[8.18 インターハイ3回戦 静岡学園高 2-0 大阪桐蔭高 テクノポート福井総合公園スタジアム]

 チームが勝ち上がっていく中で、もちろん嬉しい気持ちはありながら、出場機会を得られない現状が悔しくなかったはずがない。そして、その想いをぶつけることができるのは、いつでもピッチの中だけだ。「スタメンは昨日の練習が終わった後に聞きました。今まで出られていなくて悔しい想いがあったので、しっかり良いプレーをたくさん出せたらいいなと思っていました」。静岡学園高(静岡)のボランチ兼右サイドバック。DF小泉龍之介(3年=ESPORTE CLUBE JOGADOR出身)は巡ってきた今大会初スタメンのチャンスを、ゴールという形でモノにしてみせた。

 タレントの揃う静岡学園で、まずは限られた17人の大会メンバーに入るだけでも簡単なことではないが、その上で試合に出るための競争がある。小泉は初戦の仙台育英高(宮城)戦こそ、後半のアディショナルタイムに出場機会を得たものの、2回戦の高川学園高(山口)戦はベンチとアップエリアで70分間を過ごす。

 まさに昨日。3回戦の前日練習が終わり、自分がスタメンで出場することを知る。もちろん準備はできていたが、思っていたポジションと、実際に言い渡されたそれは違っていた。「ビックリしました。1年の時はボランチをやっていて、2年からボランチをやりながらサイドバックをやり始めて、ずっと最近はボランチで、本当に久しぶりのサイドバックだったので」。右サイドバック。これが小泉に託されたポジションだった。

 久々の右サイドバック。自分の中で役割を整理して、大阪桐蔭高(大阪)と対峙するピッチへ歩みを進めていく。すると、開始わずか3分で絶好の得点機が到来。右から左SB野村海翔(3年)が蹴ったCKは、「ボールが来た時に中に入れなかったので、こぼれを狙おうかなと思って」エリア内の密集の外で待っていた小泉の足元に転がってくる。

「飛び出したキーパーが触れなくて自分のところに転がってきたので、『キーパーが出ているなら上は行けるかな』と思って蹴りました。だいたい狙った通りだったと思います」。“上”を狙ったループシュートは高く上がりながら、ゆっくりと、綺麗な軌道を描いて、ゴールの中へ吸い込まれる。

「『入れ!』って願いました(笑)。『ゴールは狙っていきたいな』と思っていたので獲れて良かったですし。みんなが集まってきてくれたので嬉しかったです」。フィールドプレーヤーの全員が、先制弾を沈めたヒーローの元へ駆け寄って祝福する。彼の悔しさも、葛藤も分かっていた。だからこそ、みんなが小泉のゴールを心から喜んだのだ。

 結果的にこの試合はフル出場。守備面でも大阪桐蔭の鋭いアタックに晒されながら、チームメイトと協力して完封勝利を達成。右サイドバックでの起用という、新たなオプションの幅を広げる形で、大きなアピールに成功した。

 2年前。高校選手権で日本一に輝いたチームで、1年生ながら登録メンバー入りを果たしていた小泉は、当時のグループを思い浮かべながら、今の仲間たちにも手応えを持っている。「優勝した先輩方は練習からしっかりみんなでまとまってやっていて、バラバラな感じはなかったので、自分たちもしっかり一体感を持ってやっていきたいと思っています」。

 右サイドバックでも、ボランチでも、大事なことは変わらない。自分にできることを、100パーセントでやり切ること。そのことも十分過ぎるほどに理解している小泉は、次のチャンスも虎視眈々と狙っているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク

●【特設】高校総体2021

TOP