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後半勝負の長崎総科大附が1-0で勝利。国見との決勝は「小嶺先生の気持ちも背負って」戦い、全国へ

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後半27分、長崎総合科学大附高FW福島文輝が決勝ゴール

[6.9 インターハイ長崎県予選準決勝 創成館高 0-1 長崎総合科学大附高 長崎市営ラグビーサッカー場]

“小嶺先生と一緒に”全国へ――。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技長崎県予選準決勝が9日に行われ、長崎総合科学大附高創成館高に1-0で競り勝った。長崎総科大附は10日の決勝で、2連覇を懸けて国見高と戦う。

 名将・小嶺忠敏前監督が亡くなってから初めての夏。“小嶺先生と一緒に戦う”長崎総科大附が接戦を勝ち切り、決勝へ駒を進めた。定方敏和監督は「生徒には小嶺先生、明日来られるからと」常に厳しい目を持って見守られていることを伝えているのだという。この日は後半勝負で前へ出て1点をもぎ取り、1-0で勝利。決勝では小嶺前監督が数々のタイトルをもたらした国見と全国切符を懸けて戦う。

 定方監督は「お互い小嶺先生が率いられたチームなので、小嶺先生も喜ばれているんじゃないかと思いますし、でもウチはそれに負けたらダメ」と引き締め、主将のMF竹田天馬(3年)は「小嶺先生は見るだけじゃなくて、一緒に戦ってくれると思うので、小嶺先生の気持ちも背負って戦いたい」と力を込めた。

 長崎総科大附は昨年の予選で5試合連続ゴールを記録したFW西岡紫音(3年)が長期離脱中。その一方、先発として昨年度の選手権を経験している竹田やGK亀井一起(3年)、左SB平山零音(2年)が中心選手としてのプレーを見せている。この日は4-2-3-1システムでGKが亀井、右SB横山恒星(3年)、CB京谷來夢(2年)、CB瀬戸俊樹(3年)、左SB平山、ダブルボランチが竹田と山下竣介(3年)、右SH筒口優春(3年)、左SH梅野佑汰(3年)、トップ下が尾島栞蓮(2年)で1トップを福島文輝(2年)が務めた。

 一方、創成館は選手権予選決勝のリベンジマッチ。右ウイングが下がり目で3-6-1のような陣形。GKが濱村達也(3年)で、池田隼人(2年)、中尾龍之介(3年)、松井奏斗(3年)の3バック、右WB福田虹斗(3年)、左WB今福海理(2年)、ダブルボランチが藤田卓也(3年)と篠原太希(2年)、シャドーの位置に田川蓮翔主将(3年)と関優翔(2年)、そして1年時に選手権を経験している波多野太一(3年)が1トップを担った。
 
 前半は創成館が後方でボールを握る展開。久留貴昭監督は「わざと後ろに重くして、勢いを止めた。(生徒たちが)意図を持ってやってくれました」と説明する。長崎総科大附のハイプレスを出させないように、相手と距離を取りながら3バックと篠原、藤田中心のビルドアップ。相手のショートカウンターを警戒しながら配球し、高い位置で起点を作ってからの仕掛けや中尾のロングスローなどから先制点を目指した。

 一方の長崎総科大附も30度近い気温の中、前半は走る距離を制限。前から追い続けるのではなく、守備網に入ってきたところに狙いを定めてボールを奪いに行った。そして幾度か速攻へ持ち込み、竹田や平山が崩しに係る。だが、前半は創成館がシュート1本、長崎総科大附も同2本と静かな展開で終えた。

 後半、互いにギアを上げ、徐々にオープンな戦いに。後半、幅を活用した攻撃を増やした創成館はオープンスペースを突く波多野や田川を起点にクロスへ持ち込み、15分には福田のクロスから波多野がヘディングシュートを放つ。また、26分には右クロスのこぼれを田川が右足シュート。だが、GK亀井の正面を突くなど得点には至らない。

 一方の長崎総科大附はショートカウンターやセットプレーからゴール前のシーンを作り出す。そして、梅野の左足シュートや左クロスに横山が飛び込むなどゴールを脅かす。だが、創成館はGK濱村が安定感高い動き。守護神を中心に、落ち着いて相手の攻撃に対応していた。

 長崎総科大附は25分、亀井のパントキックを起点に左の平山がアーリークロス。これを福島が頭で狙うもスコアは動かない。創成館は27分、関とFW西咲人(2年)を入れ替える。拮抗した展開を打破したのは、「自分たちはしっかりと準備してきたので、絶対に取れると信じて最後まで走っていました」(竹田)という長崎総科大附の方だった。

 27分、長崎総科大附は敵陣右サイドで筒口が激しいチェック。デュエルの強さでボールを奪い返すと、竹田のスルーパスから横山がクロスを上げる。これをファーサイドの福島が180cmの長身を活かしたヘッド。叩きつけたボールは1バウンドし、DFの頭上を越えて逆サイドのゴールネットに吸い込まれた。

 殊勲の福島が、「自分はヘディングが得意なので、冷静に決めることができました。いつも練習していた通り、決めることが出来たと思います。(興奮で)頭が真っ白になりました」という先制弾。長崎総科大附の強さ、スピードが表現されたゴールだった。直後にFW佐藤海斗(3年)を投入して活力を加えた長崎総科大附に対し、創成館は31分、藤田、田川が連続シュートを打ち込む。

 35分、創成館は福田をFW田中歩武(2年)へ。長崎総科大附も直後に福島とDF下田龍久翔(3年)を入れ替える。長崎総科大附はこれまで終盤の失点が続いていたというが、亀井が「最後までベンチもスタンドも集中して全員で守ることができました」と振り返ったように、集中力を切らさずに1-0を維持。創成館もGK濱村が相手MF梅野の決定的なシュートを阻むなど諦めずに戦ったが、長崎総科大附が決勝進出を決めた。

 長崎総科大附は新体制で決勝進出。ただし、定方監督は「(自分は)大したことやっていないですし、生徒がしっかりしているので。(まだまだだが、各スタッフで)これまで小嶺先生に頼っていた面を分散しながらですね」。気の緩みも見られるというが、それが大きな歪にならないようにコーチ陣、選手が私生活から気を配りながら、意識高くチームを作って来ている。
 
 全国まであと1勝。福島は「チーム全体でハードワークして、身体を張って絶対に勝ちたいです」と力を込め、竹田も「まずは明日絶対に勝ちたい」と宣言した。恩師とともに決勝を戦い、全員で優勝を喜ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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