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前橋育英が序盤の劣勢をばん回、PK戦を制して09年以来の優勝に王手

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前橋育英高が決勝進出を決めた

[7.29 インターハイ準決勝 前橋育英高 0-0(PK4-3)米子北高 徳島市球1]

 令和4年度全国高校総体(インターハイ) 「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技は29日に準決勝を行い、前橋育英(群馬)は、PK戦の末に前回準優勝の米子北高(鳥取)を下して決勝進出を決めた。

 試合の立ち上がりは、完全に米子北のペースだった。ハイプレッシャーで相手のビルドアップを破壊。前半7分にMF仲田堅信(2年)のラストパスにFW福田秀人(3年)が飛び出した場面はオフサイドになったが、攻撃の鋭さがうかがえた。

 前半11分には仲田がミドルシュート。クロスバー付近で前橋育英のGK雨野颯真(2年)が防いだが、際どかった。さらに前半12分に左DF野田徹生(3年)がミドルシュート。前橋育英は、たまらず前半15分に右MF山田皓生(3年)を交代して流れを変えようとしたが、前半16分にも米子北がロングスローのこぼれ球から右DF梶磨佐志(2年)がミドルシュート。前橋育英のMF徳永涼(3年)にゴールカバーをされたが、好機だった。

 しかし、前橋育英の山田耕介監督が「(序盤に)上手いこといかないって、選手がカッカカッカしていた。冷静になれ、深呼吸しろ、これからだぞって言いました」と振り返った前半17分のクーリングブレイクを挟んでからは、前橋育英がペースをばん回。前半24分、MF青柳龍次郎(3年)が右に展開し、中央にこぼれた球にFW小池直矢(3年)が反応して初めてのチャンスを作った。

 後半は、立ち上がりから前橋育英がパスワークで完全に敵陣に押し込んだ状態をキープ。米子北はボールを奪う位置が低くなり、反撃に出られなくなった。米子北の中村真吾監督は「プレッシングとブロックを意図的に使い分けているうちは良かったけど、ブロックしかできなくなった」と主導権を奪われた流れを悔しがった。

 前橋育英は、後半5分にサイドチェンジから左のクロスにつなげて右MFに投入された堀川直人(3年)が飛び込んだが合わせきれない。後半7分には、右からのクロスに小池が飛び込んだが、これも合わず。後半15分、青柳のドリブルシュートは相手GKがセーブ。後半17分になると、負傷していた右ひざを大会直前に痛めたことで控えに回っているMF根津元輝(3年)を投入して攻撃のギアを上げにいった。

 しかし、小池が「組織的な守備だと分かっていたけど、ボールを受ける工夫がもっと必要だった」と話したように、米子北の守備は堅く、崩れなかった。後半29分に根津が放ったミドルシュートはうまくミートできずにクロスバーの上。終盤はオープンな展開となり、米子北のDF野田がミドルシュートを放つ場面もあった。結局、前後半で得点が生まれず、勝負はPK戦へ。前橋育英は、直前に控えGK大澤脩人(3年)を投入した。

 大澤は徳島に来てからのPK練習で存在感を発揮していた、ベンチの盛り上げ役。主将の徳永は「PK戦は、大澤が一番緊張していた。(彼の)キャラクターも含めて、これは勝つという確信があった」と笑ったが、1本ずつチーム全員が大澤の名前を叫んで盛り上がった。

 相手の3人目、5人目のキックをクロスバーが弾いてPK戦4-3で前橋育英に軍配が上がった。セーブをできなかった大澤は「4本目で止めたと思ってガッツポーズをしたら、ボールが前になくてゴールに入っていて、頭を抱えたらベンチのメンバーに笑われた」と話したが、反応自体はシュート方向に鋭く、キッカーは楽な気持ちで蹴れたようだ。

 PK戦で辛くも勝ち上がった前橋育英は、翌30日の決勝戦で帝京高(東京1)と対戦する。山田監督は「日本一を取る、取らない。こんな機会を与えられて感謝。幸せなこと。だからこそ、明日の決勝戦ではすべてを出して日本一を取りに行かなきゃ男じゃないと選手に言いたい。チャンスをつかみ取るのは、お前たちなんだと。明日は全力で行きたい」とハッパをかけた。09年以来13年ぶり2度目の優勝なるか。最終決戦に挑む。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2022

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