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「FCV可児」と業務提携して本格強化。技術力とゴールへの意識発揮の美濃加茂が初の岐阜決勝進出

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美濃加茂高が初の決勝進出

[5.27 インターハイ岐阜県予選準決勝 土岐商高 1-3 美濃加茂高 長良川球技メドウ]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技岐阜県予選準決勝が27日に行われ、土岐商高と美濃加茂高が対戦。FW久保田瑛太(3年)の先制点を皮切りにゴールを重ねた美濃加茂が3-1で勝利した。6月3日の決勝では帝京大可児高と対戦する。

 長きに渡って県大会での早期敗退が続いてきた美濃加茂だが、4年前から同じ岐阜県の中濃地区にある3種チーム「FCV可児」と業務提携。本格強化がスタートし、FCV可児から派遣された元モンテディオ山形の松田英樹ヘッドコーチが技術指導に当たってきた。強化3年目の昨年は、選手権予選で過去最高記録を塗り替える準決勝進出。今年は主力の多くが入れ替わったが、FCV可児の新1年生が16人も入学するなど中高一貫体制での強化は着実に進んでいる。

 初のファイナル行きをかけて挑んだこの日もスタメンのうち8人がFCV可児出身。中学時代から個の力を徹底して磨いてきたため、ボールを持てる選手が多いのが特徴だ。ただ、DF前田創源(3年)が「松田コーチから手前だけにならないようにしよう、常にゴールを目指そうと言われている。足元はゴールを目指す上での手段でしかない」と話す通り、パス回し一辺倒にならずゴールへの意識も強い。

 先制点が生まれた13分のシーンも、自陣でのボール回しで相手を食い付かせて、空いた背後のスペースを狙った形だった。DF細田侑孝(1年)の左足キックが相手守備陣の処理ミスを誘うと、こぼれ球を拾った久保田が無人のゴールに流し込み、均衡を崩した。

 1点を奪ってからも前線でターゲット役となる久保田を使いながら、MF郡司侑真(2年)と横井吏玖(3年)の両翼や、シャドーの技巧派MF大矢幸輝(1年)の持ち味を引き出し、相手陣内での時間を作り出していく。

 守備でも「チャレンジ&カバーを常に意識し、誰か競った時に自分がカバーをするように気を付けていた」と話すDF前田創源(3年)が要所を抑え、綻びを見せない。すると、30分には中央のMF梅本譲(1年)の配球から横井がクロスを入れ、最後は久保田がゴールネットを揺らして、2点リードで前半を終えた。

 後半も勢いは止まらず、7分には左CKのこぼれ球を細田がダイレクトボレーで叩き込んで、勝負の行方を決定づけた。ただ、ここからは暑さもあって運動量が低下。土岐商MF加知昂大(3年)がボランチの位置で奮闘を続けたこともあって、相手の流れに飲まれていく。

 20分には中央を運んだ後藤耕太朗(3年)にシュートを打たれるなど試合終盤に入るとヒヤリとする場面も増えていく。土岐商は35+4分、後藤が入れた右CKのこぼれ球をDF塚本恭大(3年)が決めて、意地の1ゴール。美濃加茂の濱口敏之監督は「こんなに足を攣るとは思わなかった」と苦笑いしつつも、初の決勝進出、東海大会への出場権獲得を喜んだ。

 美濃加茂がFCV可児と提携したのは、地元中濃地区のサッカーを盛り上げたいと考えたから。「僕らがいる中濃地区はかなりレベルが高い子たちがいるのですが、今までは県外や他の地区に出ていた。FCVの野村次郎監督とは昔から流出を無くしたいと言っていた」(濱口監督)。主将のDF間宮愛翔(3年)は高校でサッカーを続けるか悩んでいたが、「美濃加茂に行って、岐阜県に新しい風を起こそう」と野村監督に声をかけられ、入学を決意。大矢のように中学時代、FCV可児で主力だった選手も美濃加茂の門を叩くなど着実に選手の質は上がり、追い風は吹いている。

 決勝で当たるのは同じ中濃地区にある帝京大可児。昨年の選手権予選の準決勝で敗れた相手でもあるため、選手たちは燃えている。全国大会の常連であるチームであるため、分は悪いかもしれないが、勝負は蓋を開けるまで分からない。「もっと美濃加茂高校の名前が広がって欲しい」と話す前田を中心に白星を掴んで、その名を全国に轟かせる。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2023

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