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平常心で「本当に素晴らしい戦い」。広島国際学院が夏冬通じて初の全国切符獲得!

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広島国際学院高が初優勝。初の全国大会へ

[6.11 インターハイ広島県予選決勝 広島国際学院高 1-1(PK3-0)瀬戸内高 広島広域公園第一球技場]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技広島県予選決勝が11日に行われ、広島国際学院高瀬戸内高を1-1からのPK戦の末に下し、高校選手権も含めて初めてとなる全国大会出場を決めた。

 旧校名の広島電機高時代から長年にわたって監督を務め、35年目の今年からは総監督として指導している広島国際学院の瀬越徹氏は、全国行きを決めてしばらくするとベンチから離れた。天を仰ぎ、涙を抑えることができない。感無量の男泣きに、悲願達成の喜びがあふれていた。

 試合は前半5分(40分ハーフ)に早くも動いた。瀬戸内FW美藤慶音(3年)のシュートのこぼれ球を、MF大田巧(3年)がゴール正面約22メートルの距離からダイレクトでミドルシュート。前日の準決勝では同じような位置から左下スミに決めていたが、今度は右上スミに鮮やかに突き刺し、早くもリードを奪った。
 
 狙いとするボール支配から両サイドを広く使って追加点を狙う瀬戸内に対し、広島国際学院は押し込まれる時間が長かったものの、少しずつ敵陣に進む回数を増やし、DF藤井海地(3年)のロングスローや、セットプレーでゴールに迫る。だが決定機を作るには至らず、前半は瀬戸内が1-0とリードして折り返した。
 
 後半は両チームにチャンスがある、ややオープンな展開となっていたが、14分に広島国際学院が同点に追い付く。藤井のロングスローを相手守備陣がはね返したボールに反応したDF岡田康誠(3年)が、ゴール正面約18メートルから右足を振り抜くと、ゴール前の密集を抜けたボールがネットを揺らして1-1となった。
 
 その後は前線の選手を入れ替えて勝ち越しを狙う瀬戸内に対し、広島国際学院は粘り強く守り、奪ったボールを両サイドに展開して一気に逆転を狙う。後半アディショナルタイムにはゴール正面左寄りのエリア外すぐでFKを獲得し、MF渡邊雄太(3年)が左足で直接シュートを放つも、わずかに上に外れて決まらず。結局1-1のまま10分ハーフの延長に突入した。
 
 後半から強い日差しが照りつけるようになり、蒸し暑さが増して消耗戦の様相を呈していく中で、両チームは懸命にゴールを目指す。延長前半7分、瀬戸内は右からのセンタリングを美藤がヘッドで狙ったが、広島国際学院GK片渕竣介(3年)の正面。広島国際学院も9分に右からのFKをMF長谷川蒼矢(3年)がヘッドで折り返し、MF福島拓哉(3年)が詰めようとするも、瀬戸内の大田がその前にクリアしてシュートを打たせない。
 
 延長後半8分には広島国際学院が左サイドから攻め込み、センタリングに飛び出した瀬戸内GK尼児琉仁(3年)の前で、FW野見明輝(3年)がヘッドで合わせたが、クロスバーの上へ。計100分間の戦いでは決着がつかず、インターハイ出場の行方はPK戦に委ねられた。
 
 瀬戸内の先攻で始まったPK戦は、広島国際学院GK片渕がいきなり1人目を止めてリードを奪うと、2人目も止める大活躍。3人目はクロスバーの上に外して1人も決められなかった瀬戸内に対し、広島国際学院は3人全員が決め、歓喜の瞬間を迎えた。

 3大会連続9回目の出場に王手をかけていた瀬戸内は、先制点も実らず悔しい敗戦。田中健二郎監督は「攻め手が見いだせなかった。攻撃を組み立てるところで重心が後ろに下がり過ぎて、セカンドボールも、ほとんど国際学院が回収していたのではないか」と振り返った。今年度はプリンスリーグ中国で首位を走るなど、力があるところを見せているだけに、田中監督も選手権予選に向けて「夏に選手を鍛えて見極めながら、出てきた選手でチーム力を伸ばしたい」と捲土重来を誓っていた。

 広島国際学院は昨年度の高校選手権予選で、インターハイ予選も含めて初めて決勝に進出し、広島皆実高と対戦。前半に先制したものの後半に追い付かれ、延長を経て迎えたPK戦では5人中4人が失敗し、初の全国切符を逃していた。

 そのときの延長では2年生、現3年生も多く出場しており、瀬越総監督は「今年の代は良い選手がそろっていたので、やってくれるだろうと思っていた」と語る一方で、「瀬戸内さんと比べると、こういう舞台に立つ回数が少なくて慣れていないので、どうなるかと思っていた」との不安材料もあった。それでも「いつもどおり、平常心で戦うことができたのが大きかったと思う。PK戦になり、脳裏をよぎるのは昨年の選手権予選ですが、全く関係なく、平常心でやってくれた」と喜び、「本当に素晴らしい戦いでした」と選手たちを称えた。

 コーチを経て今年からチームを率いる谷崎元樹監督も「よく頑張ったと思います。去年の悔しさの中で、いろいろなものを先輩たちが見せてくれて、勝ちたい思いもあった。そういう思いが集まった試合になったと思う」と評価。最後は表情を引き締めて「自分たちの持っている力を最大限に発揮できるように、計画を立てて取り組んでいきたい」と夏の大舞台を見据えていた。

(取材・文 石倉利英)
●【特設】高校総体2023

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